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~第六章:冒険者編(後期)~

163ページ目…目指せ、聖王都【4】

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『ザンッ!ザンッ!ザンッ!バキバキバキバキバキ…。』

 あれから森に入って何本目の木を斬ったのだろうか…機械文明が発達していないこの世界には、チェンソーなんて物はない。
 よって、普通、木を切るのならば、木こりが使う様な斧で切るのが当然なのだろうが、面倒くさがり屋の僕は〖闘気剣オーラブレード〗のスキルを使い、一太刀で木を斬っていくと言う荒業を行使していた。
 考えてみたら、このスキルも、色々な場面で、かなりお世話になってるな…と思う。

 この世界に始めて来て直ぐの頃、初めて使った時なんて、一瞬発動させただけでSPが無くなってしまい『使えね~』なんて言っていたのに、今では、主力武器よろしく、当たり前の様に使っている。
 まぁ、残念な事に、この〖闘気剣〗は発動中、ずっとSPを消費し続ける為、基本的には長時間は使えない。
 その為、普段は武器を使う事になるのだが、この安定性のある攻撃力は、本当にありがたい事だと思う。

「とりあえず、これだけあれば、もう木は十分かな?
 問題は、どうやって運ぶか…だが、マジでどうしよう…。」

 そんな事を考えながらも、僕は大木の枝を落としていく。
 久しぶりに一人で行動している為か、独り言が多くなっている気がするが、この際、無視して作業に没頭していく。

「1歩、2歩、3歩…10歩…15歩っと、コレで大体15mと言う所かな?」

 正確な長さは分からないが、大体の長さの目安として15歩の長さで斬り分けていく。
 〖闘気剣〗の一振りで、大木と思える太さの木が切断される。
 まさしく、『切り分け』ではなく『斬り分け』と呼んで良い仕業だ。

 その後、半端な長さに残った部分を縦に置き直し、何度も斬り付ける。

 正確に真っ直ぐ振り下ろされない剣の軌道の為、斬り付けられた木は歪な形になってしまったが、それはそれで味がある…とも言える…はず。

 もっとも、それをどう使うかと言えば、単純に薪に使うのだけである。
 その為、形に拘る必要がないのだから、悪い意味・・での適当でも問題がないのだ。

 そんな中、ふと…ある事を思い付く。

 それは、昔見たアニメの空間魔法を使う魔法使いが使った、ど派手な技だった。

 僕みたいに空間と空間を繋ぐ魔法使いは小石を放り投げ空間を繋ぐ…その小石は遙か上空へと転移して自由落下によりどんどん加速して落下する。
 当然それだけでも十分は破壊力になるのだが、その魔法使いは更に上空へと転移させる。
 それを繰り返し、とんでもない程の運動エネルギーを持った小石を最後、敵の真上に転移させてクレーターを作るほどの威力を持った一撃とする技だ。

 まぁ、個人的には能力の無駄使いだと思わなくもないが、それは別にどうでも良い。
 では、何が言いたいのか、と言うと、今まで移動の為にしか使っていなかった〖空間転移ゲート〗の魔法だが、そのアニメの様に、対象の下に門を開いた場合、落下を利用して目的地に運ぶ事が出来るのではないか?と言う事だ。

 正直、そんな事は一度も試した事はないはずだが、何故か、僕には出来ると確信があった。
 その為、僕は一度、屋敷に戻りその木を置く場所を確保する。
 と言っても、木を転移させる際に、転移させる場所に人が来ない様にする為である。

「ってな訳だから、巻き込まれない様に、人を近づけない様に注意して置いてくれ。」
「畏まりました、御主人様。」
「それじゃ、頼んだよ、アリス。」

 それだけ言うと、僕は再び森へと転移すると、さっそく伐採した木を転移させようとする。
 だが、実際に転移させる様とした時、一つ問題が出てきた。
 それは即ち…。

「くそッ!これ制御が難し過ぎだろッ!?」

 そう、通常であれば〖空間転移〗で開くゲートの大きさは2m程の大きさである。
 その為、もっと大きな物を転移させようとすれば、その大きさに比例するかの様に制御が厳しくなる。

 なので、高速移動用ゴーレム通称:車ごと転移させるよりも、一度、車を無限庫インベントリに収納して転移した方が楽だった。
 その為、今まで、門を大きくすると言う訓練をサボっていた罰が当たった形となる。

 それでも、何とか10m位まではなんとかギリギリ制御出来たのだが、それ以上大きくしようとすると上手く制御出来なかった。

「はぁ、はぁ、はぁ…これ、無理ゲーじゃね?」
「ご主人様~!アリスさんにお茶を入れさせましたので、一度戻ってきてくださ~い!」

 この声はプリンだよな?転移先である屋敷の方からゲートを通してプリンの声が聞こえる。
 確かに、作業に夢中で忘れていたが喉が渇いている。

 故に、僕は作業を中断して屋敷に戻る事にしたのだった…。
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