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~第五章:ダンジョン開拓編~

154ページ目…緊急報告

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「なッ!?『零《ゼロ》の使い魔』だってッ!」

 プリンの台詞を聞いて、一瞬、の動きが止まる。
 何故なら、以前、ラオンさんに質問攻めになった時に聞いた情報の中に、邪神復活と言う話があったからだ。

 かつて、この世界に降りた神が、理由は謎だがこの世界を破壊しようとしたらしい。
 そして、この世界の者と同化する事により生まれたのが魔王だと聞いた。

 そして、時間の流れが違うのか、何百年か前に、俺と同じ様にこの世界に来た人物こそ、今はもう死んでしまったが、俺のじぃちゃんが勇者となり、倒した魔王こそ、その邪神の一部だったと言われている。
 だが、それでも完全には倒しきれず、その魂の半分を…その時代のお姫様だった当時のばぁちゃんに封印した状態で元の世界に連れて戻る事によって、二度と復活する事が無い様に阻止した存在でもある。

 どう言うつもりで、そんなヤバイ存在である邪神を復活させるつもりなのか分からないが、『零の使い魔』と言うのは、あまりよろしくない邪神教徒と言う事である。
 ラオンさんの情報では、大きな街で爆破テロよろしく大きな被害を出すも、未だに捕まらない存在との事だった。
 さらに言うのであれば、何人いるのかすら分かっていない謎の軍団…と言う話だった。

「さすがに、これはラオンさんに言った方が良い…よな?」
〔そうですね、実際、この世界その物の危機になりかねない話なのですから、私達だけで問題を解決しようとはせずに協力しないとダメだと思います。〕

 俺が心配した事を、そのまま言葉にして同意してくるプリン。
 依存している訳ではないが、やはり、僕にはプリンがいないとダメだと改めて思う。
 とは言え、そうなるとアレから数日たっているので、既にに対処するのに出遅れている。

 『零の使い魔あいつら』が、今、何を企んでいるのか分からないが、出遅れている以上、一刻も早く手を打たなければいけない。
 そう思った俺は、急いでラオンさんの部屋へと〖魔法:空間転移ゲート〗を開き、転移するのであった…。

◆◇◆◇◆◇◆

「ぶほッ!?ゴホッゴホッ!!」
「うわッ!汚っね~な~!」
「ゴホッゴホッ…お前と言うヤツはッ!言うに事かいて、汚いとは何だ!
 それに前にも言ったが、いきなり現れるんじゃない!
 いや、それ以前に、その姿…誰かに見られたらどうするつもりだ!」

 言われて気が付いたが、まだプリンと〖融合〗したまま…つまり、魔王化しているのだ。

「いや、まぁ、そうなんだけど…って、そんな事より!!
 先日のオークションで気になってた事があったんだけど、思い出した事があって…急を要する事みたいなので慌てて来たんだ。」
「お前がそこまで慌てると言う事は、つまり、また厄介事…と言う事だな?」

 個人的には厄介事じゃないと言いたい所だが、流石にそうも言っていられないので、俺は『はい』と短く答える。
 すると、事の深刻さを感じ取ったのか、ラオンさんは急速に落ち付きを取り戻す。
 そして、先ほどまでのお茶目が入った態度から、ギルドマスターとしての態度へを変化する。

「分かった…それでは君の話を聞こう。
 とは言え、立ち話も何だ、そこに座ってくれたまえ。」
「はい…失礼します。」

 そう返事をすると、俺はソファーへと座る。
 そして、ラオンさんは、当然の様に、その対面へ座った。

「すまんが、君が表から来なかったから、お茶は無しだ。
 それで、急を要する話と言う事だが…どう言った話なんだ?」

 客が来たのに、お茶も出さないのか…と、ネタを振る前に、先に言われてしまった。
 だが、そんな事は些細な事なので、今は無視する。

「はい…実は、絶対とは言えない不確定な話なのですが…。
 先日、オークションでバトルアックスを購入した者について一つ…。」
「あぁ、あの、何故か、よく顔が思い出せないヤツの事だな?
 あれほどの大金を、振り込みではなく直接払ったと言うのに、受け取った私が相手の顔が思い出せずにいるので少し気になってはいたのだが…。」
「やはり、そうでしたか…。」
「やはりと言うと、君も…だな。」
「はい…プリンが言うには認識阻害にんしきそがいの魔法だろう…との事です。」
「そうなのか?いや、あの場にプリンさんはいなかったはずだが?」

 そう、プリンはお留守番していたからだ。

「それは、以前話した様に『魔王化』すると俺とプリンの記憶も一緒になりますので…そこから導き出した結論…と言う事です。」
「なるほど…それならば理解出来る。
 それで…その者が認識阻害する理由について心当たりがある…それが原因で、転移して来た…と言う事だな?」
「はい、話が早くて助かります。」

 一々、説明しなくて言い分、話は早く進む。

「ふむ…それで、心当たりとは?」
「その反応からして、ラオンさんも僕達の答えと同じ答えに辿り着いた…と言う事ですね。」

 今までの会話の中で『認識阻害』と『空間転移』をして来た事実…そこからラオンさんも答えを見付けた様だ。

「「零の使い魔」」

 お互いに相手の顔を見て頷きあい、タイミングを見計らって辿り着いた答えを言う。
 その為、見事にハモった答えに、ラオンさんは頭を抱え込む様に項垂れる。

「やはり、そうなるのか…だが、確かに強力な武器になりそうではあるが、『零の使い魔』が欲しがる様な武器とは言えないと思うのだが…。」
「えぇ…実は、俺達もそこが引っ掛かってまして…確かに強い武器なんですが、あくまでも、そこそこの武器ですからね。」
「なるほど、それで絶対ではない…と言う事か。」
「はい、あくまでも可能性が高いだけであって…正体をバラしたくない貴族とかが〖認識阻害〗の魔法を使い、戦力拡大を…と言う可能性もゼロではありませんので…。」
「そんな、3%未満程度の可能性を引き出されても安心は出来ないが…な。」
「アレ?3%もあったんですか?」
「あぁ、それは多めに見繕ったからだ。」
「そうですか…。」

 そこで暫しの沈黙が訪れる。

「とりあえず、話は分かった…こちらの方でも、出来るだけ調査をする事にしよう。」
「分かりました、では、俺達はこれで…。」

 俺はそう言って立ち上がる。
 すると、プリンが念話で話し掛けてきた。

〔ご主人様、どうせですからラオンさんに回復薬ポーションでも…。〕
「あぁ、確かにそうだね。
 ラオンさん、プリンからラオンさんに差し入れです。」

 俺はそう言うと、ラオンさんに赤い色のポーションを数本渡す。

「お?これは、君のダンジョンのだね?
 正直、最近は仕事が大変でね…本当に助かるよ。」
「そうですか…でも、大量に飲んで中毒になったりしないで下さいよ?」
「あぁ、それには気を付けるが…残念ながらお前と違い、基本、こんな高価な物を中毒になるほど飲んだり出来ないよ。」

 と、ラオンさんはいつもの態度へと移行する。
 それを確認した俺達は再び〖魔法:空間転移ゲート〗を使い、家へと戻ったのだった…。
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