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~第五章:ダンジョン開拓編~

152ページ目…オークション【4】

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 僕がラオンさんを連れてダンジョンに潜ってから5日後の事。

 ラオンさんが裏から情報を回し、王族やら貴族、はてはランクの高い冒険者までもが集まって、メルトの町にある冒険者ギルドの一室で、ダンジョン産の道具アイテムオークションが開催されていた。
 本来であれば、聖王都などの大きな都市で開催されるのが定番なのだが、どう言う訳か、辺境の町メルトで開催される事となったらしい。
 なお、アイテムオークションと言っているが、純粋な道具だけではなく、武器や防具なども含まれている。

「では、ダンジョンドロップの回復薬ポーション各種1セット、金貨3枚で落札となります。」

 この商品は、僕が地味に数点持ち込んだ物で、各種と言うのはHP&MP&SPの初級ポーションだ。
 魔法薬ではある物の、今回は初級のポーションである為、それほど高値になる物ではないのだが、3種類揃ってと言うのが珍しかったのか、はたまた見栄なのかは分からないが、頭の悪そうな貴族達が競い合い落札をしていた。
 お陰で相場では金貨1枚程度の価値しか無いにも関わらず、金貨3枚での落札となる。
 まぁ、僕にとっては嬉しい誤算だが、貴族連中の無駄遣いには、ちょっと考えられないので、少しだけ引く事となったとだけ伝えておこうと思う。

「さて、お集まりの皆様、大変お待たせ致しました。
 こちらの商品が本日の最後の商品であり、また『目玉商品』となります。」
「「「「おぉぉぉぉ!」」」」

 そして出てきたのが、僕が持ち込んだオーガ・クラッシャー…両手で扱うタイプの斧で、巨大なバトルアックスだ。
 先日、ラオンさんを連れてダンジョンに潜った際、同じオーガシリーズを装備させて、能力向上を確かめて貰っている。
 その為、ラオンさんは各種方面へと情報を流し、その情報を信じた人達が、こぞって僕が出品したバトルアックスを落札しようと集まっているのだ。

「え~…まず、こちらのバトルアックスですが『オーガ・クラッシャー』と言う名が付いております。
 事実、名前の通り、オーガを壊す者の名に恥じぬ性能だと思います。
 そして、オーガ種に対して、ダメージ増加の効果のある魔法付属の武器となっております。
 ただ、それだけでは今回のオークションの目玉とは言えません。
 つまり、この武器は、それだけではないと言う事です。」

 ここで、司会者であるラオンさんは、一旦、言葉を区切り周囲を見渡す。

「とは言え、この場に集っている方々には、既に、その情報は皆様の元に届いていると思われますが…。
 ここは敢えて、言わせていただきますと、こちらの商品は『オーガシリーズの一つ・・』と言う事です!
 そして、同じオーガシリーズである防具、兜、鎧、籠手、靴のどれか…または、それら全てと一緒に装備する事により、隠された能力を発揮します。」

 ここで、再びラオンさんは言葉を止め、用意してあった水を飲むと、再び言葉を紡ぎ出さいた。

「かく言う私も、その事に関しては半信半疑だったのですが、ある伝手つてから運良く試す機会がありまして試させて貰った所、それら全部を装備した場合、各種ステータスが大幅に上がり、オーガどころかトロールすらも瞬殺する事が出来ました。
 一部の高レベルの人に関しては、通常の武具でもオーガ等を瞬殺は可能かもしれません。
 ですが、それ以外の低ランク普通の人達ですら、それを可能とする一品なのです。
 長々と説明させていただきましたが、それではオークションを始めさせていただきます。」

 さぁ、ここからが本番だ。
 果たして、どの様な結果になるか…。

「こちらの商品、本来であれば金貨20枚から始めても問題ない商品だと思われますが、依頼者の希望により金貨1枚からの落札となっております。
 それでは、落札を始めます!」

 ラオンさんはそう言うと、手元にあったハンマーを使い『カツン』と音をたてる。
 すると、予想以上にオークション会場が熱気に包まれることとなる。

「金貨5枚!」
「金貨7枚!」
「金貨10枚!」

 予定通り金貨10枚になった所で、僕は更に上乗せするつもりで声を上げる。

「金貨20枚!」

 通常、現在の値段から2~3倍の値段を付けられると、ある種の流れが出来る。
 それは、必ず手に入れるつもりな為、幾らで値段が上がっても気にしない…と言った様な意思表示にも似た行動なのだ。
 その為、運が良ければ…などの軽い気持ちの者は、ここで諦め、脱落するのが一般的である。
 そんな値段を付けた僕の声で、会場に静寂が訪れる。

 やばい、流石に2倍は金額を上げすぎたか?と、不安になった物の、直ぐに、その不安は無駄に終わった。

「ふん、こんな若造に負けるとあっては貴族の恥だ…金貨40枚!」

 その言葉を聞いて、会場に『おぉぉぉぉ!』と言う声が上がる。
 それはそうだ、倍付けに対し、倍付けで返したのだ。
 普通なら、こんな倍付け返しなど見られるものじゃない。
 そう言う意味もあって、会場の熱気が増すのは当然の事だった。

「え~…他におられませんか?おられないのでしたら、金貨40枚で…。」

 だが、そんな貴族を上回る物が居た。

「金貨50枚…。」

 ぼそりと呟く様に言う一人の魔法使い風の男がいた…。
 なお、何故、魔法使い風なのかと言うと、その男が着ているローブが、魔法使いが好んで着るローブを纏っていたからだ。
 その為、顔こそはよく見えないが、その男から感じる独特の雰囲気を引き立てるには、十分効果を発揮している。

 あれ?この男の雰囲気、どっかで…?と考えていると、デブった頭の悪そうな貴族が負けじと金額を上乗せする。
 とは言え、限界が近いのだろう、上乗せされた金額は微々たる物だった。

「ぐぬぬ…金貨51枚…。」

 小さく刻んだ貴族が哀れに思えてくるが、残念ながら魔法使い男の追撃は、僕の予想を遙かに上回る物だった。

「金貨70枚…。」

 再びぼそりと呟く魔法使い風の男、それに対して貴族は…。

「くそ、もう無理じゃ…。」

 この金額が決め手となった…とは言え、伝説の武器とかでもないのに金貨70枚は破格の値段だ。
 それもそのはずで、この世界の金貨1枚の価値は、およそ100万円相当に値する。
 そう考えれば、先ほどの初級ポーション各種詰め合わせが300万円もしたと考えると怖ろしい話なのだが、金貨70枚なので7000万円相当の価値になってしまう。
 ある意味、一攫千金…しばらくは働かなくても喰っていける事になる。

「他に居ない様なので…こちらの方の金貨70枚で落札されましたハンマープライス!」

『カツーン!』

 ラオンさんの振り下ろしたハンマーの音が響き渡る。
 その音を持って、本日のオークションは終了となる。
 しかし、あの魔法使い風の人、どっかで見た様な気が…と考えては見たが、どうにも霞が掛かった様に思い出せない。
 懐はホクホクになっていて、気分はルンルンな筈なのに、なんともモヤモヤした気分になってしまう。

 とは言え、予想以上の大金を手に入れた僕は、みんなのお土産として、露天商で串焼きやら饅頭やらを買い込んで家へと帰っていくのだった…。
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