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~第五章:ダンジョン開拓編~

148ページ目…レベリング【7】

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 プリンの無茶な攻撃のお陰で、まさかの大ダメージを負ったガーゴイル。
 しかし、プリンも無茶をした所為で、その両手は無くなっている。
 そもそも、プリンがした攻撃は、打ち合わせではする予定はなかった攻撃である。

 当然、両手が無くなったのではトドメを刺す事が出来ないので、ここで終了か?と思われた…が、そんな心配しなくても、まだ、みんなの攻撃は終わっていなかった。

「〖スキル:狐火〗!」

 クズハが残りの魔力を全ての力を振り絞り、大量の火の玉を作り出す。

「グルァァァァ!〖スキル:咆吼ハウリング〗!!」

 いつの間に〖人狼化〗を解いたのか…ローラが元の姿に戻り衝撃波を放つ。

「〖スキル:疾風迅雷しっぷうじんらい〗…やぁぁぁ!」

 さらに、アリスまでも攻撃に参加し、ダメージを重ねる。
 本来は高速で移動&攻撃するスキルだが、今回は弓を超高速で連射すると言う荒業である。
 あまりの早さの為、空気との摩擦で電撃を纏っている様で、パチパチと言う音が、たまに聞こえてくる。

 それら3人の攻撃が、ほぼ同じタイミングで放たれたのだ。
 そんな攻撃でも、無傷のガーゴイルだったなら破壊するには足りなかったであろう。
 だが、それまでに積み重なったダメージが大きすぎた。

 ローラの〖神狼拳〗、そして予想外のプリンの『魔神剣』…その二つの攻撃でガーゴイルには大量の罅が入っているだけではなく、凍っていた為か、物理的に壊れやすくなっていた。
 その為、まさかの正攻法で見事ガーゴイルを倒してしまったのだ。

 だが、僕の驚きはそれだけでは済まなかった。

「主 強くなった!」

 狼の姿のまま僕に飛びついてくるローラ…しかし、その姿は、今までのローラよりも2周り…いや、3周りも大きくなっていて、僕は容易に押し倒されてしまった。

 何事かと思いローラを見る・・
 Lv20だったローラのレベルがLv35までアップしている。
 つまり、一気にレベルが15アップした事になる。

「………はい?」

 我ながら、何とも情けない声を出した物だ…ローラのレベルを確認した僕は、自分の目を疑った。
 だが、何度見てもローラのレベルはLv25ではなくLv35だ。
 Lv25であれば上がったレベルは5レベルなので、まだ納得がいく。
 それがLv35なのだから、驚きを隠せない。

 つまり…僕が作り出したガーゴイルと言うのは、それほどまでに強力な魔物だったと言う事だ。
 って、これ、普通の冒険者じゃ、まともに戦う事すら出来ないのでは?と不安に駆られる。

「ロ、ローラさん!ご主人様が困ってます、離れてください!
 あ…ご、ご主人様、私も強くなりました!」

 そう言ってクズハが僕の前にやってくる。
 当然、自分も見て・・くれと言うのだろうが、クズハもローラ同様に、外見が少し変わっている。
 大人になったと言うか色っぽさ増したと言うか、何と言って良いか迷う所である。

 ただ、そんな変化の中でも、最も目に付いたのが尻尾である。
 妖狐族と言うだけあって、クズハの外見は狐の獣人族だ。
 その為、当然の様に、尻尾が生えている。
 もちろん、今までは尻尾の数が1本だった。

 だが、その尻尾も今では3本だ…強敵を倒してレベルが上がったのはクズハも同じ。
 更に種族としても、色々と成長したと言う事だろうか?
 ついでに言うと、レベルもLv19からLv33になっている。

「えへへ…御主人様、私もレベルアップです♪」

 幼女姿だったブラウニーのアリス…それが中学生くらいまでに成長した姿で僕の前にやってくる。
 どうやら、アリスも、種族としての成長を手に入れた様だ。
 元々が戦闘でレベルアップする機会が少ない為、レベルアップに必要な経験値も少ないのだろう。

 ちなみに、今回の戦闘において、メンバーの中で一番のレベル上昇だったりする。
 なお、アリスはLv17だったのがLv36になっている…つまり、レベル19も上がった事になる。

「うぅ…私はあまり上がりませんでした…。」

 そう言って、しょんぼりしているのはレオナだ。
 まぁ、レオナの場合、単純に火力不足で殆どダメージを与える事が出来なかったのが原因とも言える。
 まともな攻撃と言えば、ダメ元の攻撃を仕掛け、吹き飛ばしただけなのだから仕方がないと言えよう。
 それでも、Lv4だったレオナはLv12まで上がっているのだから、均等分けの恩恵もあり、御の字と言えるだろう。

「まぁまぁ、レオナは落ち込まないの…後で壊れた剣を修理してあげるから、ね?」

 そう、レオナがガーゴイルを吹き飛ばした時、レオナの持っていた剣は物の見事に折れてしまったのだ。
 多少は闘気を纏わせる事が出来たのかもしれないが、未熟すぎて、ガーゴイルの攻撃に耐えれなかった様だ。

 そして、最後に…プリンなのだが、何故か、プルプルと震えているだけで、僕に近づいてこない。

 本来なら、ローラよりも先…一番最初真っ先に飛んできても良い様な物なのに…。
 僕は、意を決してプリンに話し掛けた。

「プリン、ガーゴイル戦、勝利おめでとう。
 そんな所にいないで、こっちにおいで?」

 と…すると、プリンが泣きながら抱き付いて来た。

「ご主人様、ごめんなさい!ごめんなさい…ひっく、ひっく…。」

 一瞬、何が起きたのか分からず、頭の中が真っ白になる。
 僕は訳が分からないまま、プリンの頭を優しく撫でながらプリンを落ち着かせる様に努力する。

「何を謝ってるのか分からないんだが、プリンは謝るような事をしてないから…ね?
 だから、落ち着いて話してごらん?」

 いつも上から目線で話す事が多いプリンだが、今は、まるで小さな女の子の様に、か弱く感じる。
 だからだろうか?いつも以上に優しく接していると、少し落ち着きを取り戻したのかプリンが話し始めた。

「あ、あのね…戦う前にご主人様が無理や無茶はするなと言ったの…。」
「あ~…うん、確かに言ったね。」
「それなのに…ご主人様の真似して『魔神剣』まで使っちゃって…。」
「うん、そうだね…まさかプリンが『魔神剣』を使えるとは思ってなかったから、僕もビックリしたよ。」

 そう、〖闘気剣オーラブレード〗を使う事に感しては、ある程度、予測は出来ていた。
 まぁ、〖闘気剣〗を使う

「それで…私、両手を失っちゃって…私はご主人様の物なのに、私の所為で傷物に…。」

 なるほど、そう言う事か…確かに『魔神剣』の制御は、幾つもの制御を同時にしないとダメだから、そう簡単にはいかないだろう…。
 むしろ、簡単に真似されたら僕の方が凹むんじゃないだろうか?

「それは仕方がないよ…僕だって、プリンと戦った時、初めて使ったら腕が消し飛んだんだよ…って、ちょっと待て…。」
「え?」
「…ご主人様の物なのに、プリンの所為で傷物?」
「うん…だから、本当にごめんなさい!」

 そう言うと深々と頭を下げるプリン…ここで初めて勘違いに気が付いた。
 つまり、プリンは無茶をしたのを謝っているのではなく、自分が傷付いた事・・・・・・・・を謝っているのだ。
 しかも、プリンは僕の物だから…と言う事に対してである。

 僕は、今まで心配していたのが馬鹿馬鹿しくなり、そして、それは…怒りへと変わった。

「プリン!お前は何も分かってなかったのかッ!ちょっとそこへ座れ!」
「えッ!?なんで?」
「黙って座れ~~~~~ッ!」

 こうして始まった説教は1時間を経過した後、終了となる。

 今回の一番の功労者であるプリンだったが、怪我をした事と無茶をした事の違いを理解するのに1時間も掛かった為、今日のレベリングは、これにて終了となった。
 まぁ、ダンジョン内の安全地帯セーフティーゾーン以外での説教は、色々と問題があるから、仕方がないだろう。

 なお、余談ではあるが、プリンのレベルはLv34からLv41に上がっていた。
 そして…今回、苦労して手に入れた守護者からのドロップ品は、後日、王都の冒険者ギルドが主催するオークションに出される事となったのだった…。
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