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~第五章:ダンジョン開拓編~

134ページ目…交渉【1】

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 その日、受付嬢のポプラは朝早くからやってきたムゲンとプリンの二人を待合室に待機させると、その足でギルドマスターであるラオンの執務室へとやってきた。

ギルドマスターラオン様、ムゲンさんとプリンさんが、ギルドマスターに大事な話があると、お見えになっておりますが、いかがいたしましょう?」

 すると、部屋の中から、疲れた様な声で返事が聞こえた。

「はぁ~、また、あの二人か…今度はどんなトラブルだ?
 まぁ、いい…私の部屋に通してくれ。」
「畏まりました。」

 ポプラはラオンに言われた通り、いつもの様に、ムゲン達をギルドマスターであるラオンの部屋へと案内する。
 なお、ポプラには、この二人がラオンの部屋に行った時、いつもラオンが胃薬を飲んでいるのが気になっていた。

 なので、今日も胃薬が必要かと思い、こっそり用意しておこうと準備を開始するのであった。

☆★☆★☆


「ラオンさん、お疲れ様です!
 実は、かなりやっかいな事になりまして、事後報告に来ました。」

 僕はラオンさんにそう言うと、念話でプリンに魔王化をする様に指示する。

 ぶっちゃけ、最初から魔王化しても良いのだが、その場合、色々とヤバイ状態にあり誤魔化しが利かない可能性があったのだ。
 その為、ギルドマスターであるラオンさん専用の個室とも言える執務室に入るまで、ただの人間・・・・・でいたのだった。

 もちろん、プリンも、その辺の事はしっかり理解しているので、なんら問題はない。

 と言うよりも、記憶を共有しているのだから、本来は説明しなくても良いのだが、プリンの場合、力任せで解決しようとする傾向が強い為、ちゃんと言葉に出して注意を促した方が良かったのだ。

「またか…お前が訪ねてくる時は、いつも厄介事だ『プリン、魔王化』…なッ!?
 ちょっと待て!いきなり魔王化するな!俺にも心の準備くらいさせろッ!!」

 プリンが部屋のドアを閉め、ラオンさんが部屋の外に音を漏らさない様に防音の魔法を掛けたのと同時に、プリンが〖融合〗を使い魔王化を完了させる。
 しかも…最初に冒険者登録をした際にラオンさんに見せた魔王化と違い、『七大罪』の称号を揃え〖魔王〗の称号を手に入れた状態で魔王化した姿は、今回が初めてだ。

 その為、初見であるラオンさんには、洒落にならない程の恐怖が押し寄せているのを想像するのは容易だ。

 何せ、クズハを除き、他人にとしてはラオンさんが初めてだったのだ。
 一応、ラオンさんの名誉の為に秘密にしておくが、後処理は大変だったと思う。

「いや、流石に今回の事は魔王化していないと、マジでラオンさんに殺されるんじゃないかと心配になって…最初から最終手段を使わせて貰おうかと。」
「い、いったい…何を…何をしたんだ…?」

 う~ん、ラオンさん、ガクガクブルブルと震えているが大丈夫だろうか?

「えっと…落ち着いて聞いて貰って良いですか?」
「だ、だったら、その魔王化を解除してくれ…このままじゃマジで寿命が縮まりそうだ…。」

 命令口調であるが、強がりでしかない事は明白である。

「仕方ないか…その代わり、攻撃とかしないでくださいよ?
 今回の事は、流石に悪いと思っていても、いつもみたいに甘んじて罰を受ける事は出来ませんので…。」

 僕はプリンに魔王化を解除する様に言うと、来客用の椅子に座る。
 そして、プリンも僕と同様に椅子に座った…と言うより、ベッタリくっついていると言った方が正しいか?
 ちなみに、魔王化の影響もあるが、プリンが僕の側を離れないのには理由がある。
 それは、何かあった場合、即座に対処する様に…僕を守ると言う姿勢を取っているのである。

 そして、僕の手の上に自分の手を重ねる…これにより、いざと言うときは一瞬で魔王化する事が出来るぞ!と言う意思表示だ。
 暫し、何一つ音がない世界が続いたが、ゴクリ…と喉を鳴らしたラオンさんが、意を決して僕に聞いてきた。

「そ、それで…今度の厄介事とは?」

 恐る恐る、ラオンさんが僕に聞いてくる。
 僕はどう説明して良いか迷っていたら、プリンが先に答えてくれた。

「この前のダンジョンと言えば分かりますか?」

 プリンの質問に、すぐに気が付いてラオンが答える。

「この前の…と言うと、初心者ダンジョンと言うことだよな?スケルトンが溢れた…。」
「そう、そのダンジョンなんですが、ご主人様が完全クリアしました。」
「ん?それって、第7階層を超える事が出来たって事なのか?」
「えぇ、それで、ご主人様があのダンジョンのダンジョンマスターになりました。」

『ゴンッ!』

 プリンの爆弾発言を受けてラオンさんが頭を机に打ち付ける…。
 あの音からするに…かなりの力で頭を打ち付けた様だ。

「何か凄い音がしたけど、その…大丈夫か?」

 僕は慌てて、ラオンさんに声を掛ける…が、もちろん攻撃されない様に近付く事はしない。
 あくまで、声のみで心配してるだけだ。

「あ、あのな…お前には、この状態が大丈夫に見えるのか?
 もし、そう見えるなら、良い病院を紹介するぞ?」

 そう聞いてくるラオンさんの顔には、物凄く疲れ切った哀愁が漂っている。
 うん…かなり疲れ切っているみたいだ。

『コトリッ…。』

 僕は、無限庫インベントリから、新しく作ったダンジョンで入手出来る、初級回復薬ポーションをラオンさんに差し出す。

「ん?これは?」
「あぁ、先ほど言った通り、ダンジョンマスターになってしまった・・・・・・ので、ダンジョンを改造してたんですけど、その過程で、作り出したポーションです。
 何と言うか、その…ラオンさんがお疲れの様だったので、1本差し上げますよ。」

 僕はそう言うと、ラオンさんにすぐに飲む様に勧めるのだった…。
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