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~第三章:美味い物ツアー編~

83ページ目…港町『アオイ』【1】

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「らっしゃいらっしゃい、安いよ安いよ~!」
「「「ワイワイ、ガヤガヤ、ワイワイ、ガヤガヤ。」」」

 次の日、僕達は朝早くに〖魔法:空間転移ゲート〗を使い、再び港町『アオイ』に来ていた。
 とは言っても、昨日とは違い、今日はアリスも一緒だ。

 基本的には家憑きであるブラウニーは、家から長時間離れられないのだが、多少のお出掛け…2~3時間程度ならば可能だったりする。
 そんな訳で、時間限定ではあるが、今回同行しているブラウニーのアリスだが、港町の様な活気のある場所は初めての様で、さっきからずっとキョロキョロしている。

 その小ささ故、まるで玩具おもちゃ屋に連れてこられた、小さな子供…と言う印象を強く受ける。

「アリス、あんまりキョロキョロしてると僕達から離れて迷子になるぞ!」

 と、僕は念の為、注意をするのを忘れない。
 って、よく見たらローラがいないではないか…。

「あのバカ犬ローラッ!ちょっと目を離すと直ぐにいなくなる!」
〔ご主人様、ローラさんの反応を感知しました。〕

 と、すぐにプリンが教えてくれる。
 流石、自称:僕の嫁なだけの事はある…僕が何か言う前に感知をしてくれていた。

「二人とも、ごめん…ちょっとローラを捕まえてくるから、そこの店で待っててくれる?」

 僕は目的地であるお店『スケサン』を指さして二人に待つ様に言うと、プリンの指示に従いローラを捕獲しに行くのだった。

◆◇◆◇◆◇◆

『ヒュン…ゴンッ!!』

 ローラを見付けた僕は、握り拳を作り勢いよく振り下ろす。

「キャインキャインキャインッ!!」

 いかん、予想以上に強い力で殴ったみたいだ。
 ローラのHPが10程減っている…手加減するのを忘れたからか、ダメージが通るほど強く殴ってしまったみたいだ。

「ローラ、お前は何度言ったら分かるんだ!
 今からみんなでご飯を食べようとしてるのに、勝手に動き回るんじゃない!」

 僕は強めに叱る事により、力加減を間違えた事を誤魔化した。

「あるじ ごめんなさい」

 ローラが素直に謝った所を見ると、手加減をミスったのは上手く誤魔化せた様だ。

「分かればよろしい!…って、おまッ?!犬の姿でもしゃべれるのかよッ!?」
「いぬ ちがう おおかみ」

 聞き間違いじゃない…どうやら、ローラは狼の姿でも話す事が出来る様だ。

〔私でも人化しないと、しゃべれないのに…ローラさんって、器用ですね。〕
〔あぁ…僕も本気マジでビックリしたよ。〕

 と、ローラを褒めると町史にのると思い、プリンと念話で会話するのだった。

◆◇◆◇◆◇◆

 数分後、僕達は無事にプリン達と合流し店内に入った。

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

 ここで問題なのがプリンを数に入れるか否か…なのだが…。

〔プリンの〖人化〗はまだ不完全だし、スライムとバレると不味いから、数に入れないで言うけど良いかな?〕
〔はい、もちろん大丈夫です。
 でも、ちゃんと私にも食べさせてくださいね?〕
〔あぁ、もちろんだよ。〕

 プリンに確認が取れたので、僕は店員さんの質問に答えた。

「えっと…4名です。」
「かしこまりました、では席に案内しますので、こちらへどうぞ。」

 店員さんは慣れた手付きで、僕達を席に案内してくれた。

「お席の方は、こちらをお使いください。
 メニューの方はすぐにお持ちいたしますので。」

 そして、店員さんはいなくなった。
 数分後、先程とは違う店員さんがメニューと一緒にお水を運んできてくれた。
 どうやら、水はサービスの様だ…僕は、水が無料な事にホッとする。
 と、言うのも…この異世界の建物と言うのは、上下水道と言う物が完備されてない施設がビックリするほど多いのだ。
 その為、飲み水を確保するのが大変で、そもそも、お店で水が出てくる事がないってのザラだ。
 まぁ、水を飲まなくても、お酒やジュースなどを一緒に注文する事が多いのだから問題ないのかも知れないが…。

 そんな訳で、未成年の僕がお酒を飲むのは、異世界とは言え流石に不味いと思う。
 じぃちゃん曰く、酒もたばこも二十歳から…だ。

 もっとも、お酒ならばともかく、たばこに関しては、僕は二十歳になっても吸う気はない。


「僕は、アジーとシュライプのフライの盛り合わせ…と、カッツォの刺身…それと海鮮丼を一つ。」
「にく にく くれ」
「え、えっと…私は…シュライプのフライと言う物を、お願いします。」
「御主人様、私は…このグロマのタタキと言う物をお願いしたいです。」

 今のローラは〖人狼化〗…人型になっているが、海鮮の店で肉を頼むのはどうかと思う。
 とは言え、他の二人は普通に注文をしたみたいだ。
 ちなみに、プリンは僕の注文したのをシェアして食べる予定だ。

「あ、あの…お客様、お肉の料理はちょっと…。」

 案の定、注文を受けて貰えそうにない。

「ローラ、他の物で我慢しなさい。」
「でも にく たべたい」
「そう申されましても…調理事態は可能なのですが、生憎とお店には材料のお肉が無いんです。
 お肉さえあれば、賄いで作る料理を出す事は可能なんですが…。」

 そうか、材料がないだけか…だったら…。

「えっと…つまり、お肉さえあれば、一応は、料理は出せるんですね?」

 念の為、確認をしてみる。

「は、はい!材料がないだけなんで…。」
「え~っと、流石に、ここにお肉を出す訳にはいかないので、厨房の方に案内して貰えますか?」

 僕は店員にそう言うと、みんなにそのまま待つ様に言ってから、厨房に案内して貰った。

◆◇◆◇◆◇◆

「おぉ~このお肉は、オーク肉じゃないか!
 お客さん、本当~に、これを使って良いのか?」

 と、この店の料理長が聞いてきた。

「まぁ、こちらの我が儘ですから…料理に必要な分だけ取ってください。」
「わ、分かりました…では、使わせていただきます。」

 料理長はそう言うと、丁寧に料理に使う分だけを切り取った。
 そこで、何やらこちらを見る視線に気が付き僕はそちらへ振り向く。
 すると、僕達を席に案内してくれた店員さんがこちらを見ていた。

「あの…どうかしましたか?」

 僕はその店員に尋ねた…すると、その店員が口を開いた。

「い、いえ…私も、その…オーク肉を食べてみたいな…と…。」
「若女将、これはお客様の持ち物私物です…少々、はしたないですよ?」

 と、料理長に注意を受けた…ってッ!?店員だと思ったら若女将だったのか…。
 だとすると、これは交渉の余地があるか?

「これはこれは、若女将でしたか…でしたら、ここにあるオーク肉をお店に提供する代わりに、食事代を負け値引きして貰うと言うのはどうでしょう?」
「ほ、本当ですか!?」

 この提案に、若女将が食い付いた…しかし、それだけでは済まず…。

本当マジか、兄ちゃん!?」

 僕の台詞に若女将だけでなく、料理長までもが驚いた様だ。
 ってか、料理長…兄ちゃんは、少し酷くないですか?

「えぇ、流石にダメ…ですよね?」

 自分から言いだしておいてなんだが、ちゃんとしたお店で値段を負けろと言うのは、マナーとしてはよろしくない。

「いやいやいや、兄ちゃん、逆だ逆!このオーク肉ってのは高級品なんだぞ!
 つまり…だ、こんな量を貰うとなると、逆に、こっちがお金を払わなくちゃならないって訳だ!」
「あ~そう言う事でしたら、料理代を無料にして貰って、残りの差額分は、そちらの言い値で…ってので、どうでしょうか?」

 僕からの提案に、若女将が無言で首を縦に何度も振る。
 料理長も、『う~む…。』と唸っている。

「よっしゃ!そう言う事なら腕にりを掛けて作らせて貰う。
 ついでに、スペシャルメニューも出させて貰うぜ!」

 何故か、料理長までも変なスイッチが入ったみたいに料理を始めてしまった。
 もしかして、オーク肉は僕が考えているよりも、かなりの高級品だったのか?
 そう考えると、ポプラさんにお肉をまるまる一つ渡したのは失敗したか?と思いつつ…僕は席に戻った。

◆◇◆◇◆◇◆

 結論…みんな、お腹がはち切れんほど大量にお代わりまでして大変美味しく頂いた。

 ちなみに、それだけ食ったのに、差額分として銀貨5枚を頂いて帰りました。
 って、みんなして相当な量を食べまくってたのに、更にお金まで貰って本当に大丈夫だったんだろうか?
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