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~第三章:美味い物ツアー編~

79ページ目…良い日、旅立ち

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『コケコッコー!』

 どこかでにわとりが鳴いている…ってか、この世界にも鶏いたんだな…。
 って言うか、この世界に来て暫く経つが、今日、初めて鶏の様な声聞いたぞ?
 いったい、何処にいたのだろうか?

「あるじ メシ くう じかん」
「ローラ…いつも部屋に入る時は、ノックをしろと言ってるだろ?」

 どうやら、今日はローラが僕を起こす番の様だ。
 僕が家を買ってからのルールで、何故か知らない間に僕を起こす順番と言う物が女性陣の中で決まっていたみたいだ。

「あと、ドアを音も立てずに開けて入ってくるな…心臓に悪い。」
「おと たてる えもの にげる」

 えっと…確かに言ってる事は正しいのだろうが、今言うセリフと考えると、色々と間違ってると思う。
 だから、これだけは言っておきたいと思う…。

「ローラ、僕は獲物じゃないぞ?」

 僕を獲物だと思っているなら、追い出さないといけない。

「しってる ローラ あるじ おそわない」

 一応、獲物ではないと認識している…のか?

「それに まだ はつじょうき ちがう」

 はつじょうき…って、何だろう…?
 はつじょうき…はつ、じょうき…はつじょう、き…んッ?
 ちょっと待てッ!もしかして発情期か?

「ローラ、はつじょうきって…どんな事だ?」
「あるじ ローラ と こども つくる か?」
「作りません!まったく、なんで急にそんな話になるんだよ…。」

 朝っぱらから、何でこんな事で頭を痛くしなきゃいけないんだ?
 そもそも何故、ローラと子供を作ると言う話になるんだ?
 それ以前に、人族とフェンリルの間に子供なんて作れるのだろうか?
 いや、作れるとしても、そんな事をする気は無いけどね…。

「あるじ におい でてる」
「はぁ?匂いだって?」

 だが、ここに来て、ニュータイプみたいにピキーン!と、何かを感じる事が出来た。
 まぁ、ラオンさんも、この手の匂いに敏感だったからな…。

「いや、言わなくて良い…すぐに着替えて食堂に行くから、ローラは先に行っててくれ。」

 そう言うと僕は、ローラが出てから誰もいなくなったのを確認してからベットから出た。
 おそらく、ローラの言った匂いとはコレの事だろう…獣特有の嗅覚おそるべし…。
 男性特有とでも言うのか?朝の生理現象である。

 僕は、トイレへと向かう…そして用を足してから食堂に向かったのだった…。

◆◇◆◇◆◇◆

「って事で、生木が乾くまで暫く掛かるって話だし、食料やらを買って旅に出ようと思うんだが、どうかな?」
〔私は、ご主人様と一緒なら、何処でも問題ないですね。〕

 うん、プリンらしい答えだ…やはり問題ないらしい。

「わ、私も問題ないです。」

 クズハも問題なし…か、そして…。

「ローラ にく たべたい」

 はいはい、ローラには最初から聞いてません。
 そして、もっとも気になっているのが…。

「それで、アリスは?」
「私は、その…家に憑いていますので、少しの間なら家を離れる事が出来ますが、やはり長旅となると無理かと…。」
「そっか…まぁ、長旅と言っても戻ろう思えば、何時でも〖魔法:空間転移《ゲート》〗を使えば、すぐに家に帰ってくる事が出来るんだけどね。」

 と、僕は誤魔化す様に笑ってアリスに言う。

「そうですか…でしたら、私はいつ戻られても良い様に家の事をして起きますね。
 あと、あまり遅い時間に帰られると、お食事の用意が出来ない事もありますので、ご注意下さい。」

 と、遅い時間での帰還について注意されてしまった。

 よくよく考えてみたら、家の修理やらも頼んでるのだから、魔力の補充も必要なはずだ。
 うん、最低でも3日に1度は帰って来る様にしよう、と思ったのだった…。

◆◇◆◇◆◇◆

「よし、買う物はコレで終了かな?」
〔そうですね…とは言え、ご主人様の無限庫インベントリがなければ、日持ちする携帯食料とかだけ持てば、調理道具なんて持ち歩く必要ないと思いますが…。〕
「そうは言っても、やっぱり食事は美味しい物を食べたいじゃん?」
〔確かに、ご主人様は美味しい物、大好きですからね~。〕

 まぁ、喰う寝る遊ぶは人間の三大欲求と言われてるからね…。

「やっぱり、食べる楽しみは…って、クズハは?」

 僕はそう言うと周囲を見渡す。
 すると、ショーウィンドウの前に立っているクズハを見掛けた。

「こんな所で、どうしたんだい?」

 僕は優しくクズハに声を掛ける。

「あ…ご、ご主人様!すいません…ちょっとこの服が気になってしまって…。」

 そう言って、クズハは今まで見ていた服を指さす。
 そこには、元の世界の神社で、ちょくちょく見掛ける事があった服が飾られていた。

 へ~、こっちの世界にも巫女さん服みたいな物もあるんだな…。

『カラン、カラン、カランッ!』

 気が付くと、僕はクズハを連れて服屋へと入っていた。

「いらっしゃいませ、何かお探しでしょうか?」

 と、店に入ってすぐ、店長とおぼしき人が話し掛けてくる。
 まったく…店内から、僕達の事を伺っていたのを僕は見てるんだぞ?
 よくもまぁ、白々しく言える物だと感心する。
 とは言え、目的の物を買うのが先決である。

「あそこに飾ってある服を、この子に試着させたいんだけど…。」
「かしこまりました、では、こちらの方へどうぞ。」

 と、店の奥の方へと案内された。
 良かった、こちらの世界でも試着の制度もある様だ。

◆◇◆◇◆◇◆

「ご、ご主人様、どうですか?」
「ごめん、はっきり言って僕にはお洒落に興味が無くてよく分からないんだ…。
 ただ、個人的には可愛いとは思うよ。」
〔えぇ、よくお似合いですよ、クズハさん。
 ただ…ちょっと胸の所が窮屈みたいなんで小さくしてみては?〕
「は、ははは、普通は、プリンさんみたいに自分の意志で胸とかを大きくとか小さくとか出来ないんですよ?」
〔え…だったら、サイズが合わないと我慢するのですか?〕

 第三者として聞いていたら、何とも可笑しな会話である。

「プリン、普通は体型を変えるんじゃなく、服のサイズを変えるんだよ…。」
〔そ、そうですか…勉強になりました。〕

 まぁ、体を変幻自在…は言い過ぎかもしれないが、自由に姿形を変えれるプリンにしてみれば、服に合わせて体型を変化させる方が、手っ取り早いのかもしれない。
 そんなこんなで、サイズを変更した服は、クズハにちょうど良かったらしく、その服を予備も含めて2着買って帰っる事となった。

 その日の夜…人化したプリンの姿は巫女服だったのは言うまでもない…。

◆◇◆◇◆◇◆

 次の日、その日は朝から雲一つ無い晴天だった。
 故に…旅に出るのに、これほど良い天気はないだろう。

 僕達は、朝早くからギルドに顔を出し、ラオンさんに挨拶をした。

「って事で、いってきます!」
「あぁ、気を付けて行くんだぞ?」

 短い会話だったが、すんなりと僕達を送り出してくれた。
 もっとも、〖魔法:空間転移ゲート〗を使えばすぐに帰って来れるのを知っているだから、当たり前かもしれないが…。

 そして、僕達は町の入り口まで歩いてきた。

「さて、どこに行くかな…。」

 港町『アオイ』、聖王都『シロガネ』、そして…山岳地帯の『ムスビ』。
 はたして、何処になるのか…。
 僕は、次の目的地を運任せで決める事にしていた。

 周囲を見渡す…そこには、一本の木の枝が落ちているのを発見。
 直ぐにその枝を手に取ると…。

「えいッ!」

 僕の掛け声と共に、木の棒が手から離れ…空に舞ったのだった…。
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