上 下
53 / 421
~第二章:冒険者編(初期)~

53ページ目…冒険者ギルド【1】

しおりを挟む
 さて皆さん、僕は何処にいるでしょうか?

 こっこで~す、ここ、ここッ!
 と、某テレビ番組みたいに言ってみたが、何て事はない…。
 特別な場所にいるなんて事もなく、単に冒険者ギルドの入り口にいたりする。

「さて、二人とも準備は良いかな?」

 と、すぐ後ろの…クズハに声を掛ける。
 もっとも、プリンに関しては俺の着ている鎧に擬態しているので、直接声が聞こえる事はない。

〔はい、ご主人様。〕
「だ、大丈夫です、ご主人様。」

 と、二人から返事が来る。
 その返事を聞いた後、僕達はギルドの扉を潜った。

◆◇◆◇◆◇◆

「受付番号62番のお客様、お待たせしました。
 6番窓口にお越しください。」

 と、案内係の人の声が聞こえた。
 受付番号62番…おっと、僕達の番号札だな。

「んじゃ、行くか!」

 と、気合いを入れて受付に向かう。

「冒険者の新規登録ですね?
 それでは、こちらの記入用紙に分かる範囲で良いので、ご記入お願いします。」
「分かりました!」

 と、返事をして記入台へと向かう。

『サラ、サラ…サラまわし…。』

 っと、分かる所は、こんな所かな。
 どうやら、クズハも書き終わったので二人で記入用紙を提出。
 再び呼ばれるのを待つ…。

◆◇◆◇◆◇◆

 再び、『受付番号62番のお客様~こちらの部屋へどうぞ~』っと呼ばれたので、僕達は案内係の指示に従い部屋に入る。
 すると、そのまま少し待つ様に言われたので、用意された椅子に座って待つ事になった。

『コンコンッ』

 と、軽いノックの後に部屋の扉を開けて、ライオンみたいなゴツイおっさんが入ってきた。
 すぐに〖神眼〗で確認をする…情報によると獅子族《ししぞく》の獣人らしい。

「いや~、待たせてすまない、ちょっと手が離せなくてな。
 私がこのギルドのギルドマスターのラオンだ。
 さっそくで悪いんだが…本題に入らせて貰う…幾つか質問するが構わんかな?
「は、はぁ…。」

 相手が獣人と言う事もあり、個人的に、いったい何を聞いてくるのか不安になってくるのがだ…。

「一昨日、役所の方から連絡があったムゲン君と言うのは君の事かね?」
「はて?どんな内容でしょうか?」
「森で奴隷商人が襲われてるのを助けたと言う話だったが…。」
「あ~…はい、それなら確かに僕ですね。
 ですが、僕が助けたのは、奴隷商人と言うか、護衛の人?ですよ。
 ついでに言うと、この女の子が、その時に助けたクズハです。」

 何もやましい事がないので、僕は正直に話す。
 すると、やはりか…と呟いてラオンさんの少し険しくなる…。
 何か問題があったのだろうか?

「あの…何か問題があったのでしょうか?」
「それがだね…君は知らないかもしれないが…妖狐族と言うのは魔物と認識されていてだね…。
 困った事に、このままギルドカードの発行と言う訳にはいかないんだよ…。」
「えっと…どう言う事ですか?」

 まさか、ギルドカードの発行が出来ないって事なのか?

「いや…その…だね、君がその子の持ち主・・・って話はすでに聞いているんだが、ちゃんと言う事を聞くのか…って事なんだ。
 もし、君の言う事を聞かないのであれば、討伐…と言う事にもなりかねないって事だ。」
「はぁ?何言ってるんですか!クズハは、ちゃんと僕の言う事を聞いてくれます。
 それに、彼女は魔物じゃない!普通の女の子だ!!」

 と、あまりの理不尽さに、僕が怒りを抑えきれず怒鳴る…すると、僕の身体から魔力が溢れ出してしまった。

「ま、待ちたまえ!私の話を最後まで聞いてくれ!」

 と、慌ててラオンさんが言ってきた。

「…それで、話と言うのは?」

 僕は、何とか怒りを静めて、話を再開させる。

「その件については、あくまでも表向きの話…大した話じゃない。
 私が、問題なかった…と、判を押せば済む話だ。
 ただ、他のヤツ達だと分からないかもしれないが…、そちらのクズハ君より、君の方が危険だと私の危機感知能力がずっと訴えてきているのだ。
 私は、その理由が知りたいのだ…。」

 ラオンさんは獣人だからか、そんな感覚に優れているいるのだろう。
 それに、おそらくラオンさんが感じているのは、僕ではなくプリンの事だろう。

「分かりました…ですが、条件があります。
 貴方は、先ほどクズハが魔物であっても大した問題じゃないと言いましたよね?」
「あぁ、魔物とは言え、良い魔物や悪い魔物だっている。
 現に…魔物であるゴブリンの中には、我々と商売をする友好的な者もいる。
 だから、私は、ただ魔物だからと言って、敵と決めつけたりはしない。」
「そうですか…なら、秘密を教えます。
 ですが…おそらく他の人にバレると問題があると思うのですが…ここは安全ですか?」
「ならば…誰も出入り出来ず、声とかも漏れない結界を張ろう。
 元々、この部屋はそう言う秘匿な話をする為の部屋だからな。」

 と…ラオンさんは、そう言うと呪文を唱えて結界を張る。

 〖神眼〗で見ていたのだが、残念ながら魔法ではなく魔導具による結界だった為、魔法を覚える事が出来なかった。

「さて、これで誰にも知られる事はない。
 もっとも、個人的に言えば、私自身、知りたいとは思っていないのだが…立場上、そうも言ってられないからね。」

 僕は大変ですね…と苦笑しながら、この人なら大丈夫だ…と思い、秘密を明かす事にしたのだった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

憧れの先輩に抱かれたくて尿道開発している僕の話

聖性ヤドン
BL
主人公の広夢は同じ学生寮に住む先輩・日向に恋をしている。 同性同士だとわかっていながら思い余って告白した広夢に、日向は「付き合えないが抱けはする」と返事。 しかしモテる日向は普通のセックスには飽きていて、広夢に尿道でイクことを要求する。 童貞の広夢に尿道はハードルが高かった。 そんな中、広夢と同室の五十嵐が広夢に好意を抱いていることがわかる。 日向に広夢を取られたくない五十嵐は、下心全開で広夢の尿道開発を手伝おうとするのだが……。 そんな三つ巴の恋とエロで物語は展開します。 ※基本的に全シーン濡れ場、という縛りで書いています。

魔力ゼロの出来損ない貴族、四大精霊王に溺愛される

日之影ソラ
ファンタジー
魔法使いの名門マスタローグ家の次男として生をうけたアスク。兄のように優れた才能を期待されたアスクには何もなかった。魔法使いとしての才能はおろか、誰もが持って生まれる魔力すらない。加えて感情も欠落していた彼は、両親から拒絶され別宅で一人暮らす。 そんなある日、アスクは一冊の不思議な本を見つけた。本に誘われた世界で四大精霊王と邂逅し、自らの才能と可能性を知る。そして精霊王の契約者となったアスクは感情も取り戻し、これまで自分を馬鹿にしてきた周囲を見返していく。 HOTランキング&ファンタジーランキング1位達成!!

【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜

高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。 フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。 湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。 夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。

【完結】11私は愛されていなかったの?

華蓮
恋愛
アリシアはアルキロードの家に嫁ぐ予定だったけど、ある会話を聞いて、アルキロードを支える自信がなくなった。

【R18】白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ姫君は甘い夜を過ごしたい~

瀬月 ゆな
恋愛
初恋の王子様の元に政略で嫁いで来た王女様。 けれど結婚式を挙げ、いざ初めての甘い夜……という段階になって、これは一年限りの白い結婚だなどと言われてしまう。 「白い結婚だなどといきなり仰っても、そんなの納得いきません。先っぽだけでもいいから入れて下さい!」 「あ、あなたは、ご自身が何を仰っているのか分かっておられるのですか!」 「もちろん分かっておりますとも!」 初恋の王子様とラブラブな夫婦生活を送りたくて、非常に偏った性の知識を頼りに一生懸命頑張る王女様の話。 「ムーンライトノベルズ」様でも公開しています。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

廃校カニバリズム

FUMUFUMU
ホラー
カニバリズム×廃校のホラー小説です。 読んでいただけたら幸せです。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

処理中です...