上 下
41 / 421
~第一章:冒険開始~

41ページ目…擬態、鎧化

しおりを挟む
 僕とプリンが地面に座ってから、そこそこの時間が経った。

 魔王化の後遺症と言っても過言ではない、喪失感。
 これは、思った以上に辛かったが、彼女をその腕に抱いてる事により、かなり収まっていた。
 とは言え、まだ完全じゃない。

「う~ん、どうしよう…いい加減、移動しないと、いつまで経ってもメルトの町に着けないんだけど…どうしよっか?」

 もともと急ぐ旅ではないのだが、早く町へ辿り着くか無いと日が暮れるのでは?と心配になる。
 なので、僕は膝の上に座り?大人しく腕の中に抱かれている彼女に、頭を乗せたままの状態で聞いた。

〔私は、まだこのままで居たいです。〕

 僕にかかええられてるのに、嫌な顔?もせず、まだ、このままで居たいと〖念話〗で答えてくれた。
 念の為言っておくが、今の彼女は、僕の膝の上で元の形…スライムの姿で僕に抱かれているのだ。
 簡単に言うと、クッションを抱いて座ってる状態に近い。

 え?抱き心地はどうか…だって?
 そりゃ、かなり気持ちが良いですよ?

 適度にひんやりしてるし、ヌルヌルやベトベトなんて事は一切なく、すべすべで肌触りも最高…すりすり。
 さらに…適度な弾力もあるから、飽きることなく、いつまでも抱いていられそうだ…もみもみ。

〔あ…あん…ご主人様、イタズラしちゃダメですってば…あ、あん♪〕

 やべ、ちょっと調子に乗りすぎた…ま、まぁ、周囲には誰もいないから良しとしよう。
 って事で、他の人には内緒でって事で、お願いする。
 いや、そんな事より話を戻さないと…だな。

「確かに…僕も、このままで居たいけど…ね。
 ただ、だいぶ日が傾いてきてると思うんだよ。
 そうすると…このままだと森で野宿って事になる。
 今のレベルで野宿だと危険だと思うんだよね…。」
〔あ…今の私、レベル1しか無いから、ご主人様に迷惑掛けちゃいますよね…。〕

 いやいやいや、ぶっちゃけ、プリンはレベル1でも僕より強いですから…。

「いや、プリンより僕の方が迷惑掛けると思うよ。
 だって、プリンの方が僕より断然強いもん。」
〔いえ、ご主人様の方が強いです。〕
「いや、プリンの方が強いよ。」

 あ…これ、近所のバカップルがよくやってる会話に似てる…気を付けないとエンドレス確定だな。

「そ、そんな事より、どうしよっか?
 さすがに抱いたままじゃ町に入れないし、敵に遭あっても、まともに戦えないし…。」
〔そうですよね…どうしましょう…。
 あッ!町で思い出しました。
 先ほど、町に入る時のお話覚えてますか?〕
「えっと…プリンが鎧に化けて、一緒に町に入るってヤツ…だっけ?」
〔そう、それです!それを、今、試してみたらどうでしょうか?〕

 な、なるほど…確かに試す価値はある…ダメだったらダメだったで町に入る予行練習にもなるし…よし、試してみよう。

「よし…なら、プリン、鎧になってみてくれ。」
〔はいッ!〖スキル:擬態〗!〕

 彼女の体が、緑色に輝くと、僕の体にまとわり付いてくる。
 そして、鎧の形になった…そして…僕は、鎧な彼女を見た・・

◆◇◆◇◆◇◆

体:スライムアーマー(擬態)

◆◇◆◇◆◇◆

 す、スライムアーマー…確かに、彼女は僕の物だ。
 だが、物は物でも、物の意味が違う…とは言え、先程まで感じていた喪失感は、彼女を抱き締めていた時同様、そこまで酷くない。
 どうやら、僕がプリンを抱き締めるのではく、プリンが僕を抱き締めていると言った感じなのだろう。
 つまり…この状態でいるのなら、移動する事が出来そうだ。

「プリン、大丈夫?辛くない?」
〔は、はい…全然平気です♪︎〕
「まだ本番じゃないんだから、無理しちゃダメだよ?」

 じぃちゃん曰く、無理をすれば必ずしっぺ返しが来る…だ。

〔ホ、ホントに、大丈夫です!ちょと緊張してるだけなんで…。。〕

 若干、焦ってると言うか慌ててると言うか…変な感じがするんだけど…。
 とりあえずは、このまま移動を開始だ…と、僕は気合いを入れて立ち上がるのだった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

アイテムボックスだけで異世界生活

shinko
ファンタジー
いきなり異世界で目覚めた主人公、起きるとなぜか記憶が無い。 あるのはアイテムボックスだけ……。 なぜ、俺はここにいるのか。そして俺は誰なのか。 説明してくれる神も、女神もできてやしない。 よくあるファンタジーの世界の中で、 生きていくため、努力していく。 そしてついに気がつく主人公。 アイテムボックスってすごいんじゃね? お気楽に読めるハッピーファンタジーです。 よろしくお願いします。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転移したら~彼女の"王位争い"を手助けすることになった件~最強スキル《精霊使い》を駆使して無双します~

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ とある大陸にあるローレスト王国 剣術や魔法、そして軍事力にも長けており隙の無い王国として知られていた。 だが王太子の座が決まっておらず、国王の子供たちが次々と勢力を広げていき王位を争っていた。 そんな中、主人公である『タツキ』は異世界に転移してしまう。 「俺は確か家に帰ってたはずなんだけど......ここどこだ?」 タツキは元々理系大学の工学部にいた普通の大学生だが、異世界では《精霊使い》という最強スキルに恵まれる。 異世界に転移してからタツキは冒険者になり、優雅に暮らしていくはずだったが...... ローレスト王国の第三王女である『ソフィア』に異世界転移してから色々助けてもらったので、彼女の"王位争い"を手助けする事にしました。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

処理中です...