上 下
32 / 421
~第一章:冒険開始~

32ページ目…無詠唱と多重詠唱、そして最大攻撃

しおりを挟む
「〖魔法:灯火〗!」

 僕は目の前のスライムに向けて、小さな火の玉を発射した。
 その軌道は、寸分のズレもなく、一直線にスライムへと飛んで行くとスライへと当たる。

「プギューーー!」

 スライムの体の一部が、少し弾け飛んだ様に見えた。
 って言うか、このスライム、変な鳴き声なんだな…少し笑える。
 いや、それ以前に、灯火の魔法…最小力で使ったが、ちゃんと効いた…よな?

 つまり…多少、無茶をすればスライムを倒せる可能性が出てきたって事なのか?

 そして、僕は先生こと、謎の声さんから説明して貰った、多重魔法に関しても試したくなった。
 それと…最小力の灯火ですらダメージが通る事が分かったのは僥倖ぎょうこうだ。
 おそらく、このマッドスライムの弱点は火属性だと言う事が推測が出来る。

 その考えが間違ってない事を祈り、ここからは命賭けの作戦を実行する。

「最大火力、僕の魔力の全てを使い、〖魔法:灯火〗を発動!」

 声に出す必要は無いのだが…気合いを入れる為に声に出して無詠唱で魔法を発動…更に多重詠唱のコンボで一気に数を増やす。

 ボーリングの玉ほどの大きさの火の玉が全部で30発以上、僕の目の前に顕れる。
 だけど、魔法を制御して、このまま撃ち出す事をしない。
 何故なら、初めて灯火の魔法を使った時、とあるイメージが頭に浮かんだからだ。

 これにより魔法としては未完成だが、第1段階終了…これからが僕の試したい事だ。

 すべての魔法を制御し、一つの球体にする…多弾の利点は無くなるが、贅沢は言ってられない。
 そこから更に圧縮…この時点で失敗する可能性はかなり高かったが、なんとか第2段階終了。

 さぁ、ここからは命賭けだ…。
 僕はその圧縮された灯火を右手で握り締め叫んだ。

掌握しょうあくッ!!」

 もちろん、僕の持ってるスキルの中に掌握なんてスキルなんて無い…。
 この叫びは単なる気合いだ。

 そして、握り締めた灯火が爆発して燃え上がろうとするのを更に制御して、無理矢理押さえ付ける様にし、それを核にして、一つのスキルを発動させる。

「最大火力にて〖闘気剣オーラブレード!〗」

 そこには今まで見た事もない炎の剣が燃え盛る。

 ただ、正直、無茶をしすぎた…自分では制御しているつもりでも、殆ど制御出来ていない。
 右手…いや、右腕か?激しい痛みが襲ってくる。
 どうやら、作り出した炎の剣の威力が、僕を蝕んでいる様だ。
 そんな痛みに耐えながら、最後の攻撃をする。

 もっとも、ここまで来れば成功したも同然だ。

 この世界に来てから、今までずっと使ってたスキルだ。
 まず失敗はしないだろう…僕は全力で〖投擲とうてき〗を使う。
 そう、僕の使える最大攻撃…極大の〖魔法:灯火〗+〖闘気剣〗の全力攻撃を〖投擲〗のフルコンボを使いマッドスライムへと全力で投げ付けたのだ。

 正直な話、この攻撃で倒せなかったら、僕に勝ち目はない。
 そもそも、僕のHPもMPもSPすらも殆ど空の上に、無茶をした代償で右手が酷い事になっている。
 厳密に言うと、綺麗サッパリ、肘の辺りから無くなっているのだ。
 幸い、傷口が焼かれているのか出血はないので、死にはしないと思うが、コレで戦闘を続けろと言われても、碌に動く事すら出来ずに死ぬ事となるだろう。

『ドッガーーーーン!』

 スライムへと直撃し、スライムだけでなく、その後方へも被害が出ている。
 あ、あぶね…命賭けだったとは言え、流石に今回は無茶をしすぎた…。
 大爆発と共にマッドスライムの姿が何処にもない…あまりの威力に消滅したのだろう。
 だが、僕が無茶をし過ぎた…と言ったのは、アレだけの力を酷使した事では無い、別の事だ。

 そう…無茶をしたとは魔法を圧縮し〖闘気剣〗の核にした事だ。

 闘気と魔力を混合し、尚且つ投げ付けた…そんな事をした代償として、僕の右腕は肘の辺りから綺麗さっぱり無くなっているのだ。
 まぁ、そんな無茶をした甲斐あってか…マッドスライムを倒せた訳だが…。

 ん?いや、ちょっと待て…僕の脳内にはシステムメッセージで経験値が手に入ったと言うのを聞いていない…って事は、まだスライムが生きている!?

 片腕消失によるダメージ、多重詠唱と最大火力の灯火、そして闘気剣を最大で…もう、僕には戦うだけの力は残っていない。

 それでもスライムを倒しきれなかったといたら?…詰んだ。
 ここまでやって、勝てないんだ…仕方がない、死にたくないが、素直に諦めるしかない…。

 僕はスライムがいた方を見る…すると、そこにはボロボロのスライムが…。
 そして、僕は見てしまった…〖神の目〗が起動したままだった為、スライムのステータスを…。

◆◇◆◇◆◇◆

種族:マッド・スライム
Lv:35/35(Max)
HP:2/250 MP:15/120 SP:6/80

◆◇◆◇◆◇◆

 あと、ほんの少しダメージを与えれば倒す事が出来る。

 わずな希望に、体に力が湧いてくる。
 僕は、残った左手で骸の魔銃をスライムに向ける。
 魔銃の残弾はゼロだが、こうしてる間にも僅かではあるがMPの回復はしている。
 それを全て魔弾に変えれば、倒しきる可能性が…。
 だが…こんな最大のチャンスにも関わらず、愚かにも僕は動きを止めてしまった。

 な、何だ…アレはッ!?

 もぞもぞと動いたかと思ったら、スライムの周囲が金色に輝き出した。
 そして…その光は中心に向かって圧縮されて…弾けたと思ったら、中からピンク色のスライムが出てきたのだった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

アイテムボックスだけで異世界生活

shinko
ファンタジー
いきなり異世界で目覚めた主人公、起きるとなぜか記憶が無い。 あるのはアイテムボックスだけ……。 なぜ、俺はここにいるのか。そして俺は誰なのか。 説明してくれる神も、女神もできてやしない。 よくあるファンタジーの世界の中で、 生きていくため、努力していく。 そしてついに気がつく主人公。 アイテムボックスってすごいんじゃね? お気楽に読めるハッピーファンタジーです。 よろしくお願いします。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転移したら~彼女の"王位争い"を手助けすることになった件~最強スキル《精霊使い》を駆使して無双します~

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ とある大陸にあるローレスト王国 剣術や魔法、そして軍事力にも長けており隙の無い王国として知られていた。 だが王太子の座が決まっておらず、国王の子供たちが次々と勢力を広げていき王位を争っていた。 そんな中、主人公である『タツキ』は異世界に転移してしまう。 「俺は確か家に帰ってたはずなんだけど......ここどこだ?」 タツキは元々理系大学の工学部にいた普通の大学生だが、異世界では《精霊使い》という最強スキルに恵まれる。 異世界に転移してからタツキは冒険者になり、優雅に暮らしていくはずだったが...... ローレスト王国の第三王女である『ソフィア』に異世界転移してから色々助けてもらったので、彼女の"王位争い"を手助けする事にしました。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

処理中です...