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~第一章:冒険開始~

28ページ目…プランB【3】

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 木の枝で作成した銛…その数、残り2本。

 その内訳は、…地面に落ちていた形が歪な枝の先端を削っただけの銛×1
        木から直接枝を斬り落とし、形を整えた銛×1

 そう、それは…僕が作った4本の銛の内、既に半分の2本の銛を失ってしまった事を意味していた。
 コレにより、素人が作った銛で適当に魚を突くだけでは魚を捕るのが難しい事が分かる。
 いや、自分の注意不足が原因と言う説もあるが、それは一切、考慮していない。
 何より、ここまで来たら素直に諦めるなんて事は出来ない…愚かな僕にも、それなりに意地と言う物がある。

 とは言え、木から直接削り出した方の銛は地面に落ちていたヤツより、かなり堅いので、他にも杖にしたりとかの使い道があるので、地面に落ちていた枝を使った歪な方の銛をラストチャンスにする事に決めた。

 そんな訳で、今までの反省を含めて更に慎重に作業をする事にした。

『ザブザブ、ザブザブ…。』

 サブサブ…か、『山田君、座布団一枚持っていって~』と、考えつつ、国民的人気番組のBGMを脳内で流しながら、僕は魚に近付いていく。
 正直な話、このBGMで作業するのは向いてないな…と思ったのは内緒だ。

 すると、少し離れた所に20cm超えの大物魚影を発見。
 僕は銛を掲げ、勢いよく投げ付ける…これに関しては〖投擲〗スキルを使用するので命中する確率は高いはずだ。

『ヒュンッ…ブスッ!』

 流石、投げる事に関して命中補正が掛かる〖投擲とうてき〗スキルの効果である。
 銛は物の見事に命中し川の中から浮上する。

 そして、水面に出た銛の先端には、先程狙った大きな魚が刺さっていた。
 次の瞬間、僕は、お魚獲ったど~!と心の中で叫んでいた…。
 って、言葉に出しても良かったじゃん…と思ったが魔物が出たら怖いので、叫ばなくて良かったとノリツッコミをしながら、銛ごと魚を回収する…事が出来なかった。

 そう…この時、僕は凄く大事な事を忘れていたのだ。

 ここで皆さんに一つ、『川』と言う物を頭に思い浮かべて貰いたい。
 まぁ、十人十色…人それぞれ、川のイメージがあると思う。

 人によっては、緩やかだったり、激流だったり…だけど、必ずと言って良い共通点がある。
 もう気が付いた人もいるだろう…そう、川と言うのは一部、特殊な現象で逆流するのを除けば、上流から下流に、水が流れていくのだ。

 そして、僕は銛を『投げた』のだ…もちろん、僕が投げた銛は僕の手を離れ少し離れた所にある。
 そして、その距離と言うのは手を伸ばしても全然届かない距離。
 そう…魚が付いたままの銛は、最悪な事に、二度と僕の元に戻る事はなく下流へと流されてしまったのだ!

 しまったのだ…しまったのだ…しまったのだ…。

 |突いたのがした魚がデカかっただけに、ガックリと肩を落とした僕の心の中に、フェーズアウトしていく魂の叫び声が虚しく響いていた。

◆◇◆◇◆◇◆

 そんなこんなで、僕は現在、最後の1本を持って、大きな岩の上から魚を狙っている。
 先程のがラストチャンスだと言っていた事は、この際、無視する。
 もう、何が何でも、魚を手に入れてやる…僕の頭では、それしか考えられなくなっていたのである。
 ってな訳で、再度、魚を発見…コレより、本艦は魚の駆逐を開始する!

 僕は妙なテンションで魚目掛けて、銛を勢いよく突いた!
 …たぶん、妙なテンションなのは先程からグ~グ~鳴っている腹の虫の所為だ。

「ていッ!」

 僕は気合いと共に、声に出して銛を勢いよく突き出した。

『プスッ♪』

 銛の先端に小さいながらも、見事に魚の中心を突いているのが分かる。
 僕は嬉しさを堪えつつ『えいッ!』と、銛を勢いよく川から引き上げた。

『スルッ…ポチャン。』

 僕はとうとう魚を手に入れたのだ!
 僕は銛を持ち直して先端の魚を回収しようとして手を止めた。
 あれ?魚が居ない…何故だ?

 しばらくの間、魚が居ないショックに固まっていたのだが、復活した僕は先ほどの記憶を再生していた。
 見事に魚を突いて…嬉しくなって銛を勢いよく引き抜いて…その後、ポチャンと音がした。

 …勢いよく川から引き抜く?その後、ポチャン?
 そして銛の先端には魚がいない…なので、先端は尖ったまま。

 ん?何か変だ…尖ったままと言う事は、簡単に抜けない様にする仕掛け…返し・・が付いていない事になる。

 つまり、アレか?アレですか?

 釣り針みたいに返しがないから、水の中から銛を引き抜く時に水の抵抗で魚が抜け落ちた…そう言う事ですか?
 返しを付け忘れた自分が全部悪いと?今までの苦労は全て無駄だったと?

 あまりの出来事と、空腹のあまり…とうとう逆ギレを起こし、SPを全部注ぎ込んだ闘気弾オーラショットを、眼下の岩に叩き付け、岩を粉砕したのだった…。
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