けもの

夢人

文字の大きさ
上 下
125 / 199

秀吉の死1

しおりを挟む
 秀保も名護屋の陣に詰めているが渡海していない。秀保の家臣と秀長の家臣は折り合いがよくなくどんどん離れていく。それと秀吉の体調が優れなくほとんど三成が代理をやっていると伝えた。これに付いて狗は文を高虎に送っている。その中でこの家では今後生き残りが難しいとも伝えた。
 これに対して高虎からも文が来た。
「・・・朝鮮征伐も限界に来ている。もう半年も続けば主要な部隊の敗戦は目前だ。これを石田三成らに伝えているが一向に回答が来ない。これで武闘派の不満は爆発状態だ。武闘派は家康殿に相談を持ち掛けている。狗はここにある文を家康殿に届けて命令に従ってくれ」
 今は狗は高虎の側近として表で仕えている。現在は今後高虎と共にする旧秀長の家臣をまとめている。秀長の遺言で大和の財産の半分は高虎に裏で譲られている。狗はその財宝を密かに大和城から持ち出して山に運び込んだ。これには山から30人を動員してまる3か月がかかった。
「入られい」
と声がかかって侍姿の狗が家康の居間に通される。部屋には家康と宗矩が座っている。狗は文を差し出す。高虎の側近として何度も訪問をしている。家康は文を読んでそれから宗矩に渡す。
「殿下と会ってきたがもう長くないな。秀頼殿を頼むと繰り返し言われたわ」
「それ程お悪いですか?」
「ほとんど殿下は秀頼殿のこと以外は目に入っておられぬ。三成殿では荷が重い。朝鮮征伐をどう終わらせるかだな?」
 三成はただ事務的にこの戦いを処理しているだけだ。
「武闘派をまとめれているか?」
 狗がそれで動いているのを柳生がすでに掴んでいる。だが狗であることは知られていない。
「はい。戦地では高虎殿がまとめられたと」
「今後高虎殿を武闘派の結び目として考えている。それでお主に名護屋に行ってもらいたい」
「そちらの部下の中に柳生の侍を10人付ける。繋ぎは服部にさせる」
 宗矩が口を開いた。
「私は何をしたら?」
「朝鮮征伐の引き揚げを段取りしてもらいたい。家康の名代だ」
 どうも秀吉の死を予想している。











しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王を恨んだ妃 第1章~復讐~

木継 槐
歴史・時代
ある暴れ馬に蹴られ燦は双子の妹謝那を亡くしてしまう。 そしてその暴れ馬の上にいたこの国の世子煌に復讐を誓い、王宮に煌の妃として迎えられる。

ニンジャマスター・ダイヤ

竹井ゴールド
キャラ文芸
 沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。  大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。  沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。

あさきゆめみし

八神真哉
歴史・時代
山賊に襲われた、わけありの美貌の姫君。 それを助ける正体不明の若き男。 その法力に敵う者なしと謳われる、鬼の法師、酒呑童子。 三者が交わるとき、封印された過去と十種神宝が蘇る。 毎週金曜日更新

【完結】二つに一つ。 ~豊臣家最後の姫君

おーぷにんぐ☆あうと
歴史・時代
大阪夏の陣で生き延びた豊臣秀頼の遺児、天秀尼(奈阿姫)の半生を描きます。 彼女は何を想い、どう生きて、何を成したのか。 入寺からすぐに出家せずに在家で仏門に帰依したという設定で、その間、寺に駆け込んでくる人々との人間ドラマや奈阿姫の成長を描きたいと思っています。 ですので、その間は、ほぼフィクションになると思います。 どうぞ、よろしくお願いいたします。 本作品は、カクヨムさまにも掲載しています。 ※2023.9.21 編集しました。

江戸の薬喰い

歴史・時代
江戸の薬といえば……肉! 肉である! これは薬である!と言い切り、肉食をこよなく愛した変わり者達の物語。

ワルシャワ蜂起に身を投じた唯一の日本人。わずかな記録しか残らず、彼の存在はほとんど知られてはいない。

上郷 葵
歴史・時代
ワルシャワ蜂起に参加した日本人がいたことをご存知だろうか。 これは、歴史に埋もれ、わずかな記録しか残っていない一人の日本人の話である。 1944年、ドイツ占領下のフランス、パリ。 平凡な一人の日本人青年が、戦争という大きな時代の波に呑み込まれていく。 彼はただ、この曇り空の時代が静かに終わることだけを待ち望むような男だった。 しかし、愛国心あふれる者たちとの交流を深めるうちに、自身の隠れていた部分に気づき始める。 斜に構えた皮肉屋でしかなかったはずの男が、スウェーデン、ポーランド、ソ連、シベリアでの流転や苦難の中でも祖国日本を目指し、長い旅を生き抜こうとする。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

古代ローマの英雄スキピオの物語〜歴史上最高の戦術家カルタゴの名将ハンニバル対ローマ史上最強の男〜本物の歴史ロマンを実感して下さい

秀策
歴史・時代
 歴史上最高の戦術家とされるカルタゴの名将ハンニバルに挑む若者の成長物語。紀元前二一九年、ハンニバルがローマの同盟都市サグントゥムを攻撃したのをきっかけに、第二次ポエニ戦争が始まる。ハンニバル戦争とも呼ばれるこの戦争は実に十八年もの長き戦いとなった。  アルプスを越えてローマ本土を攻撃するハンニバルは、騎兵を活かした戦術で次々とローマ軍を撃破していき、南イタリアを席巻していく。  一方、ローマの名門貴族に生まれたスキピオは、戦争を通じて大きく成長を遂げていく。戦争を終わらせるために立ち上がったスキピオは、仲間と共に巧みな戦術を用いてローマ軍を勝利に導いていき、やがて稀代の名将ハンニバルと対峙することになる。  戦争のない世の中にするためにはどうすればよいのか。何のために人は戦争をするのか。スキピオは戦いながらそれらの答えを追い求めた。  古代ローマで最強と謳われた無敗の名将の苦悩に満ちた生涯。平和を願う作品であり、政治家や各国の首脳にも読んで欲しい!  異世界転生ご都合歴史改変ものではありません。いわゆる「なろう小説」ではありませんが、歴史好きはもちろんハイファンタジーが好きな方にも読み進めやすい文章や展開の早さだと思います。未知なる歴史ロマンに触れてみませんか?   二十話過ぎあたりから起承転結の承に入り、一気に物語が動きます。ぜひそのあたりまでは読んで下さい。そこまではあくまで準備段階です。

処理中です...