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光秀の天下17

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 大坂城退去を拒否したら当然のように双方の戦闘状態が始まった。家康はこれを待っていた。揚羽はこの1か月修験者の数を2百人に増やし金塊の運び出しを行っている。当然この動きでは目立ってしまうので服部と何度か戦闘を繰り返している。だが不思議なことに服部の数が少なすぎるのだ。
 治長は遂に浪人達の野戦案に応諾した。彼はこの戦いで勝てるとは思っていないのだ。朱雀は宗久に言われて密かに秀頼を連れ出し地下金倉を抜けて多田銀銅山に連れて行く段取りをしている。そんな時に南宗寺の式神からの繋ぎが届いた。家康の影武者達が動いたというのだ。天海はすでに秀忠の陣に籠っている。
 まず秀忠の陣に走ることにした。家康の陣は天王寺口にあり奈良寄りに秀忠の陣がある。これは薬売りの式神の報告で確認している。秀忠の陣に着いて驚いたのは天海が隣に陣を構えて兵を持っていることだ。元々天海の取り巻きは柳生の侍ばかりだったのだ。だが今は騎馬が50頭に足軽が50人もいる。だがこれは服部だ。陣に潜り込む。
「どうだ繋ぎを入れたか?」
 天海も鎧を着ている。前にいるのは兜を被った半蔵だ。
「金で養ってきた後藤又兵衛の軍が真田の軍と並行して陣を張っています。報告では真田は真っ直ぐ家康の本陣を目指すはずです。又兵衛には兵を潜めて家康だけを狙うようにと伝えています」
「これが最後のチャンスだ。分かったな」
 この返事に頷いたのは後ろに座っている兜を被った家康の影武者だ。半蔵が立ち上がり影武者が続く。朱雀は騎馬に跨ろうとしている服部を陣幕に曳きづり込み入れ替わる。半蔵が先頭で騎馬隊と足軽が動き出す。騎馬隊は時々かけてくる服部の繋ぎを受けながら進む。又兵衛と家康の双方の動きを知らせてきているようだ。朱雀も頭に覚え込んだ陣形をその報告を受けて動かす。
 すでに真田の先頭が家康の本隊にぶつかったようだ。又兵衛は真田の軍の後ろに隠れるように進んでいるようだ。半蔵が丘の上で馬を留める。ここからは家康真田両軍の戦闘の様子が手に取るようにわかる。真田の勢いは予想をはるかに上回っている。家康の後ろにいる黒田官兵衛の軍が撤退を始めている。どうしたことか?これでは家康本隊だけが戦場に取り残される。急に丘を登ってきた騎馬に蠍が乗っている。
「予定通りに家康の後軍を切り離します。約束は守ってくださいのことです」
「天海殿に伝えて置く」
 どうやら情勢を見て官兵衛は天海に乗り変えたようだ。見張っていた蠍が官兵衛に乗り換えることを提案したのだ。










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