式神

光秀の天下15

　大坂城に籠った浪人達を含めた軍勢は１０万を超えた。家康が取り囲んだ兵は２０万だ。どちらも予想した戦いだ。揚羽は最後の金塊を多田銀銅山に運び込んだ。まだ太閤の金塊は半分が残ったままだ。揚羽が言うには治長はこの大坂冬の陣では和解を考えているようだ。
　朱雀は南宗寺に急いだ。天海も半月前に大坂城を出ていた。この時も柳生と服部がぶつかっている。柳生は与三が２０人を率いていて結界に服部は５０人を当てた。この指揮を半蔵が取っている。裏の戦いも激しいものだ。与三に服部は５人切られたが半蔵が与三の肩に手裏剣を刺した。
　その戦いの隙間を抜けて南宗寺に着いた。回りに結界が張られていてここにも服部が３０人ほどいる。寺の裏庭には騎馬が２０頭も並んでいて鎧を被った武者が乗っている。立派な兜を被っているのは家康の影武者だ。天海が軒先に立っている。１刻ほど軽く動き回っている。いつでも出動できるようにしている。
「動かぬか？」
　天海の呟きに騎馬でかけてきた男が鎧を取る。半蔵だ。
「真田丸での攻防に徳川軍が敗れたようです」
「いかぬな？出て来ぬなこれでは？」
　大阪城での会議では浪人達は野戦を主張していたが治長が籠城をがんと譲らなかったのだ。今の大坂方では治長の意見は絶対だ。治長は宗久を使って十分な米に火薬を蓄えている。倍の人数でも城は落ちない。
「家康は今回は和解に持ち込むだろうな？織田有楽斎を動かしてくれ。和解に一役買おう」
と言うと部屋の中に入る。半蔵は再び騎馬を走らせる。庭の騎馬も引き上げていき兜を取った家康の影武者が部屋に入ってくる。朱雀は屋根の上から天井裏に潜る。
「出番はなかったな？」
　影武者は頷くとどっかり腰を下ろす。
「次は何か策を弄さぬといかんな。このままでは崇伝に居場所を奪われるかもしれぬ」
　独り言だ。