式神

夢人

文字の大きさ
上 下
108 / 225

和解11

しおりを挟む
 蝦蟇が姫路に着いてしばらくして繋ぎの式神から揚羽の文が来た。秀吉の話が書いてある。光秀から何度か書簡が届いていてやはり本願寺が撤退を条件から外してくれと言ってきたとある。朝廷でもそれは無理だろうと撤退を外した詔を考えていると言うのだ。これに付いて秀吉からも信長に進言してほしいと言うものだった。もちろん秀吉は恐ろしくてそんな進言はしたくない。だが光秀がその進言をしたと言う情報はない。
 揚羽は最近黒田官兵衛が地下牢にいると言う情報を得て蝦蟇らを城に潜入させたと言う。軍師を失った秀吉は最近は毛利の軍師安国寺恵瓊と通じているようだ。これは竹中半兵衛の生きていた頃の策だ。何度目かの和解交渉だがまだ先の長い話だ。
 関白の付き人になっている礫から繋ぎがあって御所に潜り込む。昼食の時間らしく各部屋で弁当を開いている。礫は庭の奥で待っている。
「先ほど一条兼良が来て関白様と話していきましたが本願寺の和解に撤退を外すと」
「関白様は?」
「返事を保留されました。明確に明智殿が信長様に進言したと」
 それは嘘だ。だが一条兼良は光秀からはそうき聞かされいるのだろう。あの慎重な光秀がこんな危険な真似をどうしてするんだろう。信長の怒りを恐れる光秀がどうしてだろう。確かに何かが動き始めている。
 礫と別れると溝を抜け堀沿いの膝までの水の中を進む。同じように溝を抜けた気配があった。これはどうも礫を見張っていたようだ。小さな森に来ると堀から上がって木の枝に飛び移る。同時に手裏剣が無数飛んでくる。甲賀だ。一条兼良が指示したのだろう。非常な殺気だ。5人がいる。
 兼良は朱雀が本願寺の和解に動いているのは用人から聞いているのだろう。朱雀は身代わりの黒装束を空に飛ばしてその後から地に飛び降り1人を背中から切る。これで動きが乱れる。続けて2人目の足を払う。そのまま森の中を走り続ける。だが追ってくる気配がない。
 だが木の上から網が投げられる。これは安倍の式神だ。転がると体中に捲きびしが刺さる。木に飛び上ろうとするが無様に届かず転がった。捲きびしに痺れ薬が塗ってあるようだ。その時安倍の式神が1人1人と木から落ちてくる。礫が小石を投げている。
「嫌な予感がして」
と投石を続けながら朱雀を抱きかかえ走り出す。安倍と一条は相当な連携を取っている。その真ん中に光秀がいる。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ヴィクトリアンメイドは夕陽に素肌を晒す

矢木羽研
歴史・時代
カメラが普及し始めたヴィクトリア朝のイギリスにて。 はじめて写真のモデルになるメイドが、主人の言葉で次第に脱がされていき…… メイドと主の織りなす官能の世界です。

仇討浪人と座頭梅一

克全
歴史・時代
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。 旗本の大道寺長十郎直賢は主君の仇を討つために、役目を辞して犯人につながる情報を集めていた。盗賊桜小僧こと梅一は、目が見えるのに盗みの技の為に盲人といして育てられたが、悪人が許せずに暗殺者との二足の草鞋を履いていた。そんな二人が出会う事で将軍家の陰謀が暴かれることになる。

アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)

三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。 佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。 幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。 ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。 又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。 海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。 一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。 事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。 果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。 シロの鼻が真実を追い詰める! 別サイトで発表した作品のR15版です。

処理中です...