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和解8
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朝、光栄が出かけて朱雀は鬼女を地下の祈祷所に訪ねた。式神が隠し事をするのは許されない。たが鬼女は秀吉に関わることには朱雀や揚羽に任せきりだ。
「関白との話どうだった?」
あまり気が向かないようで俯いたまま直伝書を見ている。
「一つ気になったことがあるのです」
まだ俯いたままだ。こういう時は早く報告して出て行くのだ。
「一条兼良が光栄様と同じような高熱で寝込んでいたのは報告していますね?光栄様は呪いの術を晴明に掛けられていたのですが、関白様が言われるのは兼良が急に回復して歌会を催したのです。その時の兼良が別人のような目をしていたと」
「別人のような目!?」
急に怖い顔で目を上げた。それから直伝書を繰って、
「この書に乗り移りの術が書かれている。式神の術にもこれの基本的なところは取り入れられているわ。だが完全に乗り移るのは難しいのよ。この書では賀茂宗家でもこの術を使ったとある。晴明も使えるようになっていたのか?」
「よく分かりません」
「この書でも乗り移って相手を狂わせてしまったという例が出ている。それでこの書では封印したとあるわ。お婆も付箋を付けていて昔あった果心居士という例も書いている」
果心の術もその術の進化したものだろう。朱雀の聞いた話では平安時代から何度か体を入れ替えて今があるようだ。だが本人は次は難しいかもしれないかもと言っていた。
「今小猿は使えないのか?」
「すいません。まだ和解が成るまで本願寺に。でも足は速くはないですが気配を消せる式神がいます。何度か実際に潜ませて試しています」
「よし。明日から一条邸に送り込むのだ。繋ぎは朱雀がしなさい。それと送り込む時に私も一緒に潜り込むわ。一度一条兼良のその目を見たいわ」
と言いながら直伝書を復唱している。朱雀は鬼女がこうなると静かに引き上げる。
「関白との話どうだった?」
あまり気が向かないようで俯いたまま直伝書を見ている。
「一つ気になったことがあるのです」
まだ俯いたままだ。こういう時は早く報告して出て行くのだ。
「一条兼良が光栄様と同じような高熱で寝込んでいたのは報告していますね?光栄様は呪いの術を晴明に掛けられていたのですが、関白様が言われるのは兼良が急に回復して歌会を催したのです。その時の兼良が別人のような目をしていたと」
「別人のような目!?」
急に怖い顔で目を上げた。それから直伝書を繰って、
「この書に乗り移りの術が書かれている。式神の術にもこれの基本的なところは取り入れられているわ。だが完全に乗り移るのは難しいのよ。この書では賀茂宗家でもこの術を使ったとある。晴明も使えるようになっていたのか?」
「よく分かりません」
「この書でも乗り移って相手を狂わせてしまったという例が出ている。それでこの書では封印したとあるわ。お婆も付箋を付けていて昔あった果心居士という例も書いている」
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「よし。明日から一条邸に送り込むのだ。繋ぎは朱雀がしなさい。それと送り込む時に私も一緒に潜り込むわ。一度一条兼良のその目を見たいわ」
と言いながら直伝書を復唱している。朱雀は鬼女がこうなると静かに引き上げる。
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