式神

夢人

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没落13

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 半刻後まだ熱い体で朱雀は自分が女なのに女が好きになっているのに驚いた。揚羽も静香も好きだ。
 堀沿いを走り曲りの屋敷に戻る。鬼女からの呼び出しの声が聞こえてきたのだ。今賀茂の式神はすべて現場に出ている。手一杯と言う状況だ。明らかに賀茂家は確実に追い詰められている。もし弾正がこのまま京を支配し続ければ賀茂家は永久に消えてしまう。
「待っていたわ」
 待っていたように部屋から珍しく黒装束に鬼女が出てきた。
「どこへ?」
「父に会う」
「罠では?」
「罠かもしれないわ。でも会わないと父の思惑が分からない」
 鬼女に従って朱雀は走る。後ろから安倍の式神が3人追いかけてきている。晴明は鬼女が必ず来ると確信しているのだ。晴明はどういう提案をするのだろうか。半刻で懐かしい賀茂家の裏口に着いた。待っていたようにゆっくり木戸が開く。式神は見えないが庭には式神以外の多数の気配がある。竜達が潜んでいるのだろう。一斉に攻められたら鬼女を助け出して逃げるのは難しい。
 鬼女はそのまま廊下を歩き階段を上る。この奥の部屋は賀茂信行の部屋だったところだ。鬼女がゆっくりと襖を開ける。枕元に蝋燭が並べられていて晴明がゆっくり体を起こす。朱雀は鬼女の後ろを庇うように座る。
「久しぶりだな」
 鬼女は答えずに周りを見ている。結界が張られていて天井裏には式神が潜んでいる。朱雀は逃げ道を探しているが見当たらない。
「大婆もまだ生きておるようじゃの?どちらが先かな?」
「ところでお話とは?」
「遊びはここまでにしたいのだ。吉晶では式神を作れん。そちらの光栄もそうだ。賀茂家はもうなくなる。これからは安倍が陰陽家をすべて束ねる。安倍家は表は吉晶で裏は鬼女が束ねる。それでどうだ?」
 清明としては破格の譲歩だ。残念ながらどちらの陰陽家も正嫡では術を行えなくなっているのだ。
「なりません。私はもう賀茂のものになりました」
「生きて出さぬと言ったら?」
 朱雀は無意識に構えた。今鬼女を捕えられたら賀茂家は身動きがとられなくなる。あり得る。部屋中の代わりに殺気が溢れる。



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