式神

夢人

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下剋上19

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 焼けた箱を入れ替えたが鉄砲は無傷だった。人夫は1人が殺され前日の怪我人も入れて防衛は手薄になった。それで今朝は朱雀は揚羽の横に馬を並べた。京では宿泊を止めてそのまま荷隊を進めることにした。蝦蟇の繋ぎが夕刻に入って琵琶湖を見渡せる小高い丘に荷隊を避難した。
 揚羽は人夫に持たせている鉄砲を構えさせた。今の荷隊の力では本願寺の鉄砲隊との戦いは出来ない。本願寺は本気でこの鉄砲を狙っている。これが織田に回るかは大きな影響がある。それで精鋭部隊を送ってきたはずだ。安倍と本願寺は今や一条兼良と利害が一致している。それで朱雀の棟梁である賀茂光栄は朝廷では不遇の存在である。
「本願寺の鉄砲隊は50人、式神達に射程内の草むらに火薬を仕掛けさせた。どれほどの効果があるかはやってみないとな」
 蝦蟇がそれだけを伝えると草むらに消える。
「揚羽は爆発が起こるまでは撃ち方を止めること。それから連射をしながら後ろに丘を下る。撃ち合いは避けるべきだ」
「後ろには?」
「荷車が通れる抜け道がある。式神が先導する。2里降れば織田の陣がある。ここに入ればさすがに本願寺の攻撃はない。鉄砲を撃てないが人夫を5人ほど補充する準備ができている」
 この陣にも先手の式神を送っている。ここには秀吉から伝令が届いている。現在浅井が織田側にあり本願寺を取り囲んでいる状態にある。噂だがこの鉄砲が届く頃には織田は浅倉攻めを始めるようだ。
 草むらに動きがある。揚羽がゆっくりと手を上げる。鉄砲を持たない人夫が荷車に力を入れる。火薬の臭いが風で運ばれてくる。
「撃つな」
 揚羽の声と共に本願寺の第一撃がある。彼らはまだこちらの位置を正確につかめていない。ほとんど同時に蝦蟇達が仕掛けた火薬が至る所で爆発をする。揚羽の手が降ろされ鉄砲が火を噴く。同時に人夫は下がり荷台を押し始める。
 朱雀は目を瞑って丘を走り空に舞い上がる。これは果心から学んだ術だ。空に上がると火薬の煙の後ろに後退を始めている本願寺の鉄砲隊が見える。仕掛けの火薬が尽きた頃再び本願寺の鉄砲隊が向きを変えてゆっくり前進を始める。これでは追いつかれる。
 朱雀は懐の火薬玉を取り出して鉄砲隊に落としていく。初めはどこから落とされているのか分からず隊列を乱している。これなら追い付けないだろうと思った時脇腹に弾を受けた。








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