式神

夢人

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下剋上5

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 朱雀は鬼女との夜のことを胸の底に隠した。鬼女は熱にうなされていたが賀茂家に戻ると元の鬼女に戻っていた。兼良もまた3日前に屋敷に戻っていた。蝦蟇がしばらくの間兼良の付き人に請われいない。久永は将軍の行方を捜すのに協力を求めてきた。それで朱雀は耳と式神を近江に送った。
「朱雀どうした?久し振りに山を走ろう」
 いつの間にか背中に果心がいる。
「久永殿は?」
「久永は兵を連れて大和に行った。走ろう?」
 もう駈けだしている。朱雀と言えどもついていくのに精一杯だ。遂に山に登ると谷に飛び込む。朱雀も腹をくくり飛び上がる。朱雀は一度落ちかけてゆっくりと上昇を始める。まだまだ自らコントロールできないのだが、果心といると自然と飛べる。
「鬼女と関係したな?」
「そんなこと。光栄殿の妻女ですよ?」
「陰陽士と式神にはそんなことはどうでもよい。お互いが一つに成れねば駄目だ。私も若い頃は久永を抱いたわ」
 果心も朱雀が女とは知らない。急に回転すると手裏剣を投げてくる。こういうことを何の気なしにする。朱雀は体を傾けて手裏剣を躱す。だがこの手裏剣はすり抜けたのに回転をして戻ってくる。
「どうだこの手裏剣を使ってみないか?」
「ひきような手裏剣ですね?」
「お前の2本打ちとよく似たものよ。2本打ちに慣れた相手にはこれは効くさ」
 確かに竜には2本打ちが効かなくなっている。地獄谷の頂に着地する。果心はそれから何種類もの手裏剣を出して曲がり方を教える。まるでおもちゃの使い方を教える親のようだ。陽が沈む頃ぽろっと言った。
「久永はいよいよ牙をむくな」
「牙をむく?」



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