式神

夢人

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地獄谷18

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 地獄谷から来たものは式神を入れて10人だが、晴明の式神はその3倍はいる。こちらはひどく人間に近いのだが晴明の式神は表情がない。手に剣や松明を持って押し寄せてくる。屋敷に火をかけたら大変だ。朱雀は駆け回るように式神の足を切りつけている。だが血を流しても前に押し寄せてくる。こちらの仲間も傷つけられている。
「火を放つのだ」
 大婆の声がする。この術は大婆から教わったが使ったことがない。心の底から声を上げて空を飛ぶと。松明が門に投げ込まれる。
「何をする!」
と叫ぶと体が浮き上がる。羽が生えたようだ。口から火が放たれる。だがこの火は松明の火を消し去り式神の体に火をつける。頭は空白になり怒りで染まる。こんな力があったのだ。だが向こうの式神が集まって雲のように大きくなる。その雲から手ができて入道になる。
 入道が手を振る度に大風が吹き荒れる。仲間の式神が飛ばされている。飛んできた小猿を羽で抱きかかえて地面に置く。再び飛び立つと入道の股を潜り抜ける。局部に晴明の目が見えた。ここに火を吹きかける。同時に壁に吹き飛ばされる。だが雲が燃えている。
 急に雲が割れて多数の式神が飛び出してくる。
「朱雀やるな」
「この屋敷に手を出すな。元々賀茂家から出たのだろうが?」
「だから消えてもらわねばな」
 その声と共に晴明の式神が逃げて行く。
「小猿、皆を連れて山に帰るのだ」
「朱雀はどうする?」
「しばらく静香と話をしていく」
「手を出すな?」
 小猿が睨んで引き揚げて行く。







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