当たり屋

次の一手8

　すぐにすさみに戻ろうと思ったが、朝からゴンさんのビジネスホテルで行きがかりから花田のパソコンを調べた。それでゴンさんは今日一日花田のスケジュールに沿って尾行をすることになった。牙はスマホに入っているメールを整理して９時には会社に顔を出すことにした。
　久しぶりに自分の顧問室のドアを押す。若い女性が一輪刺しの花瓶に花を挿して机を拭いている。
「初めて見る顔だな？」
「はい。今月から採用されました。私は本社の社長秘書ということですが、社長はほとんど東京と言うことで本社の役員の身の回りの世話を兼ねています」
「花は毎日？」
「私は能勢から通ってきています。祖母が畑で花を作っているのでそれを毎朝摘んできています。私は顧問の自画撮り劇場の一員です」
「へえ、私がやっているのを知っているのか？」
「あそこは夢の実現の場なのです」
　夢の場と考えているとメール相手の開発部長がコーヒーを手に姿を見せた。
「社長はどうだ？」
「ようやく第２弾のゲームソフトを売り出して一息ついたところです。ＹＯＵさんの人気は凄いですね？」
「で相談事は？」
「実はシステムに先月から侵入されたのです。それで一度ダウンをさせてブロックを張ったのですが？」
「どこからのものか分かるか？」
「今までの大池社長のものとは違うようです。中国からかと？」
　開発部長はパソコンを見せる。分析の過程を１時間説明する。
「ブロックも一時的なものかもな？前回偽物の回路を作ったのを覚えているか？」
「はい。残してあります」
「その回路に手を入れて今のレベルにするんだ。それで最終頭脳を私が作るからそれを入れて誘い込むのだ。どれほどかかる？」
「１０日もあれば？」
「分かった」
　またもや徹夜の仕事を作ってしまった。
　帰りの特急の時刻表を見ようと思ったらＹＯＵのメールが入っていた。