当たり屋

夢人

文字の大きさ

大中小

159 / 188

流れる7

しおりを挟む

　週刊誌が宅急便で送られてくる。今回のシリーズから牙が参加している。ここには詐欺集団の写真を載せている。２年前の事件を起こしたグループが映っている写真だ。１３人が並んで映っている。これは逮捕される前に週刊誌に撮られていた写真だ。この写真を買ってきたのだ。わざとらしく周囲をぼかしてあのボスを不鮮明にしている。
　牙は食堂に持ち込んでビールを飲みながら週刊誌を捲る。この記事は２年前の事件とよく似ていると説明している。前回の詐欺シフトも関西の会社から買ったものとしている。その時大池社長の子会社が噂されてもみ消されている。この時の雑誌の記事も探して載せている。
「ちょっと見て？」
　娘がノートパソコンを抱えてくる。いつの間にか牙の席に一輪挿しの花瓶が置いてある。これは自画像劇場に出す作品だ。これは素人写真だ。
「約束してくれたら明日にでも撮影をしてあげる」
「何を約束するの？」
「YOUのことは最後まで内緒にすると」
「分かってるわ。私YOUも好きだから」
　今夜は珍しく観光客が1５人入って来る。それで慌てて娘はお盆を持って走り回る。この近くの民宿の夕食をここで出すのだそうだ。漁師をやり畑を耕して食堂をする。大変な仕事だ。そう言えば今日は仲間の漁師から魚を買っていたのだ。
「今回の号は３倍の売り上げだ。昔のようなことは無理かもしれんがほっとしたわ」
とゴンさんからだ。
「今はどこかで飲んでるのですか？」
「ああ、萩之茶屋のようなところではないけどな。またあそこで飲みたいな？」
「そうですね？」
「稲を植えたそうやな？」
　そう言えばYOUと田植えしている写真を流したのだ。ゴンさんには父親みたいなものを抱いている。牙も早く父を亡くして母に育てられた。その母も子供が生まれる前に亡くなったのだ。
「一度すさみにも来てください。私の釣った魚で刺身を作りますから」

しおりを挟む