当たり屋

反撃9

　幻の地下商店街がオープンから２か月で商店数が１００店舗を超えた。上位店舗では今までのネット販売の５倍を売り上げる店もある。東京支社長からも手を上げている地下商店街が３件あると伝えてきている。今回は社長がシステムのスタッフを連れてプレゼンに出かけている。
　今日はYOUと夜にオカマのママの店で９時に飲み会をすることになっている。YOUが自分のブログに初テレビCMの撮影風景をアップしている。すでに今朝からCMは全国に流されている。牙は１０分前に店に入ったが団体の女性客が５人いてYOUの姿はない。カウンターにビールの小瓶を出してくれる。
「彼女たちみんな男なんですよ」
と小声で言う。牙は最近は一人で来ることもある。
「ごめん」
　３０分遅れてYOUが慌ただしく入ってきた。まだ化粧も落としていない。５日ぶりに言葉を交わす。ママがテレビの録画を入れる。YOU達の初CMだ。幻の地下商店街を彼女達が歌い踊りながら走り抜ける。この画像は社長が自ら作ったようだ。
「あの時ね、私こけちゃったのよ。パンツ丸見えでみんなに笑われた」
「まさか勝負パンツ？」
　YOUは勝負パンツは黒のTバックだ。
「表では白しか履かないよ」
　カウンターの向こうで小声で、
「あれYOUじゃない？」
と囁き合っている。ママが首を振っている。
「兄貴は今どこにいるのかしら？」
「稚内に入ったかもな？」
　幹部の白骨死体のことは伝えていない。
「会いたい？」
「会いたくないけど、さよならとは言いたい」
　牙は最近も思っていることがある。