当たり屋

夢人

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転生7

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 資金繰りが目一杯になっている。今手元のYOUの資金は触られない。警察や国税が見詰めている。社長はほとんど自社株を持たないサラリーマン社長だ。それは牙が考えるしかない。
「今いいか?」
 飯屋でビールを飲んでいるときスマホから審査部長の声がした。
「前回は助かりました」
「これで貸し借りなしだ。どうだ10億の資金はいらないか?」
「どうして?」
「今一番苦しい時だろ?今度は貸を作るのさ」
「大池社長に負ければ会社は倒産もありますよ」
「いや、それはない。先ほどJRの調査部長から大池社長の会社のヒヤリングがあった。こちらもサブバンクだから資料がある。今回のシステム開発費が出ていないのを確認してきたのだよ。こちらも常に調べているのだよ」
 それで10億は明日行員が書類を届けて提出すれば20日には出るようだ。このことを社長に連絡する。
 2本目を頼んで横に座った女を見て吃驚した。凄く痩せた美貴だ。
「ずっと考えていて社長にぶつかりました」
「なぜここが分かった?」
「北署の刑事から聞きました。腹心の私が裏切って怒られているでしょうね?」
「いや、もう何とも思ていない。これも人生だな」
 美貴のコップにビールを注ぐ。
「花田に脅されて…」
 美貴は一人で30分話して暖簾を出ていった。これで美貴が証言したらここでジエンドだ。だが妙に残念な気持ちも起こらなかった。牙は蘇らなかったが会社は蘇った。
「牙あんまり飲んだら体に悪いぞ」
 横を見ると師匠が刑務所の作業を着て笑っている。
「久しぶりに刑務所に戻った感想は?」
「ダチが一杯いてええもんや」








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