当たり屋

夢人

文字の大きさ
上 下
94 / 188

不意打ち11

しおりを挟む
 JR側と私鉄側の双方の入り口に幻の地下商店街の入り口ができた。社長はこの外装を思い切って変えた。3D効果を施したのだ。新聞はこの競争を面白く記事にしている。社長は今日はこの件でテレビに出ている。
 だが牙は北署に朝から呼び出された。すでに花田の小型カメラも遮断した。関係ファイルもUSBに抜き出して茂さんのところに預かってもらっている。当たり屋の頃の服で北署に入る。出てきたのはゴンさんと全くタイプの違う知能犯の刑事だ。
「君は当たり屋らしいな?」
「ええ」
「だが、元々はこの会社の創業者社長だった。上場会社の社長を乗っ取られ離婚、自己破産している」
とファイルを見ながら話す。かなり調査をしているようだ。
「その恨みで裏金を盗んだそうか?」
「いえ、あの時点ですべてを失いました。裏口座は確かにありましたがそれも経理部長がすべて管理していました」
「その彼女が告訴している」
「今どうして?」
「彼女は花田社長を訴えているが花田社長は裏口座の存在を知らないと言っている。それとそのパソコンを押収して調べたがすべて消えていた」
 間一髪だった。
「君は養女と二人暮らしだな?その金は?」
「ホームページの仕事を始めたのです。それと娘からも出してもらいました」
「君はハッカーとしても力があるようだな?」
「そんな力はないです」
 延々と昼を挟んで7時間の取り調べだ。コツコツと調書を取る。
「また来てもらうからな?」
 そう言われて北署を暗くなって出た。その足でスタジオのYOUを覗く。7時にYOUのグループが出てくる。YOUは結構踊れるようになっている。牙を見たのか視線が合う。北署に呼ばれたことは内緒にしている。8時には今日の出番が終わって一緒に変える。いつまでこうしていれるだろうか。




しおりを挟む

処理中です...