当たり屋

不意打ち10

　今日は社長の事務所を４時から閉めて社長と牙が残っている。他の社員はすべて帰した。とくにあのシステム主任の行動には１人社員を付けている。牙はマンションのパソコンを鞄に入れて持ってきている。入ってきたのはメインバンクの取締役審査部長だ。社長を紹介して彼がパソコンを操作する。
「元専務が来たよ」
「１２月２６日に臨時株主総会を開きます」
「案内状を見た。私が出席する」
「もし新体制ができても会社としては心配だと思います。それでこのシステムを見てもらいたいのです」
　１時間半実際に本物のシステムでデモを行う。彼は元々ITには強い銀行員で、支店長時代は牙の入っていた経営塾のメンバーだったのだ。創業期初めて融資をしてくれたのも彼だ。それだけ目が肥えている。
「うむ～。これが君が話していた奴だな？」
「ずっと眠っていたものをやっと掘り出しました」
「面白い。だが向こうとの差別化は？」
「あれは私のもののパクリです」
「相変わらず大池社長は悪い癖が治らないと見えるな？だがどう対抗する？」
「あれはダミーのものを盗んでいるのでとんでもないトラブルが起こります」
「分かった。楽しみにしているよ」
　審査部長はその言葉を残して事務所を出て行った。
「どうだ外注のものは納品されたか？」
「結構大池社長の妨害にあって５社が納品ができないと。でも何とか茂さんの紹介で３社を入れて凌ぎました。これもあのシステム主任だろうと思います。新体制になったら解雇しますよ。帰りスタジオに寄りますか？」
「いやパソコンを持って帰るから。YOUを応援してやってくれ」