当たり屋

踏み出す1

　ゴンさんに専務の映像を送った。牙の気持ちは新たなステップに入った。当然その翌朝会社で専務はゴンさんに逮捕された。今更乗っ取りを争えない牙の復讐であり、新たな１歩だ。今日は社長と駅裏開発室長に会う。すでに開発は始まっていて高層ビルの窓から広い工事現場が見渡せる。
　相手は開発室長と大学の教授と本部の上司が３人掛けている。こちらは社長と牙だ。
「こちらで検討しましたがとくに大きな費用が掛からず収益が上がるのに評価は高いのですが、実際の運用モデルでの実験が必要だと言う声が多いのです」
　室長が代表して話す。
「リアルとのコラボには大いに魅力を感じていますよ」
　これは教授の答えだ。
「だが経費は出せない」
「デモを作れと言うことですね？」
　社長は尻ごみをしている。
「デモを作ります」
　牙はそう言って立ち上がり部屋を出る。
「資金が要りますよ。私の会社には余裕資金がありません」
　社長が頭を掻いている。
「恐らくこのような流れになるかと思った。創業の頃何度もそのリスクと戦ってきたさ」
「私はまだ駄目ですね？」
「この５００万を使ってくれ？」
　用意してきた専務の５００万を出した。
「いいのですか？」
「ああ、あぶく銭だ」
「ではすぐにかかります」