当たり屋

夢人

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 大がかりな名古屋での捜査が始まっている。1軒のネットカフェでカメラで兄貴の写っているのが見つけられた。これはネットニュースだ。だが一人しか映っておらず幹部は別行動していると見られる。夕方ノックがあってゴンさんが上がってきた。
「手柄をありがとう。だが残念ながらまだ捕まっていない」
 牙は冷蔵庫から缶ビールを2本出した。
「これはオフレコだが、兄は昨夜組員のカメラマンに連絡を付けてきた。これでも名古屋の公衆電話と判明した。ここで重要なことを漏らした。今確認中だ。一人が殺された時の呼び出しは戎会の若頭だそうだ」
 ありそうな展開だ。急にポケットから小さなヘアーピンを出してきた。
「これを妹に付けさせてほしいんや」
「何?」
「発信器だ」
「まだ兄貴が戻ってくると?」
「ああ。幹部と別れて行動をしているように」
 牙は黙ってそれを手に取った。それからYOUを呼び出してヘアーピンを渡した。その足で梅田の会社の会議室に4時に入った。これも総務のスケジュールにあったのだ。銀行関係、証券関係、株主、取引先らが80人ほどがはいっている。もちろん牙はいつもの変装をしている。出てきたのは専務だ。手元に10ページほどのレジメが配られている。
「これまでメイン銀行の要注意先となっており再調査を依頼しておりました。でも添付のようにメイン銀行の再調査による取り下げが決まりました」
 やはり花田社長の脅しが効いたようだ。メインバンクの審査部長名で書面が出ている。
 その効果は翌日の株価にすぐに反映した。10%が反発して上がった。さらにメインバンクが新たに今回10億の融資を検討していると発表した。このままでは花田社長の思い通りだ。
 牙は花田社長のパソコンに侵入をしてこの動画のファイルにこちらから暗号を入れてシャットアウトにした。それから花田社長のメールからアドレスを調べて審査部長宛てにこの動画の数枚を送った。









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