当たり屋

夢人

文字の大きさ
上 下
30 / 188

心を掘り起こす6

しおりを挟む
 ネットの新聞では眼鏡橋の死体は3日前のもので銃で背中から撃ち抜かれて即死だ。兄貴ではなくもう一人の戎会の若者だ。殺したのは誰かもわかっていない。
「YOUしっかり黒眼鏡をかけているか?」
と言ってパソコンを見せる。
「兄貴が死ねばよかったのに」
 これから二人でアパートを出る。今日は心配なので牙が会社に着くまで一緒に出掛ける。やはりまた張り込みが始まったようだ。ゴンさんではないようだ。先にYOUを歩かせて少し離れて牙が歩く。YOUをスタジオに送ると周りを見渡して再び地下鉄に乗る。梅田に着くと眼鏡に髭を付けた。
 今日は専務が外資系の投資会社に行くとスケジュールに入っていた。元々公認会計士の彼はここにいたのだ。表でタクシーを捕まえて出てくるのを待つ。社用車で専務が出てくる。やはり降りたのは御堂筋の外資系の投資会社の大阪支社だ。だが中に入らず角のカフェに入る。手を上げている男の横に座る。
「あの話はどうだ?」
 同じような歳格好だ。
「1社あるが厳しい条件だぜ」
 牙は隣の席に背を向けて座っている。男が紙を見せている。
「社長の株を担保に時価の6割か?」
「乗っ取られるかもしれんぜ」
「そのくらいのリスクは覚悟だ。月末前日に5億は行けるか?」
「準備してくれ。手数料は2%だ。折半で良かったな?」
 専務は会社を食い物にしている。乗っ取った会社だから愛着はないのだろう。
 アパートに帰って投資会社をネットで調べた。過去に何度も乗っ取りや株価操作をしている。あの男は調査部の副部長だ。同じ公認会計士だ。








しおりを挟む

処理中です...