迷い道

夢人

文字の大きさ
上 下
86 / 171

切り込む7

しおりを挟む
 畠山の後にも尾行がついていたようだ。追うように外を出たが畠山の背中に一人男がいる。『梨花』に着いたのは約束より30分遅れた。専務のボックスにチェリーが座っている。
「チェリーが君を呼べと言っていたのだ。もう関係を持ったのか?」
「いえ、専務の席でしか会ってませんよ」
 ヒロはすっかり専務のお気に入りだ。
「だが遅い時間はあの西崎に独占されている」
 珍しく『梨花』のママの顔が見える。私を見て歩いてくる。
「昔敵味方同士が仲良しだこと。私の誘いはお気に召さないようだわね」
 畠山を付けさせていたようだ。チェリーが気を利かせてママのグラスにワインを注ぐ。
「やはり裏切った私が憎い?」
「狐に騙されたようだった。だがけじめはつける」
 チェリーが心配そうに見ている。専務は二人の関係を知っているのでチェリーを抱いて話に加わらない。専務はエリのことをどこまで知っているのか。私は妹と同居していると言っているがおそらく誰もヒロを見たことがないだろう。マンションも会社の寮となっていて名札も出していない。それに今はヒロもホテル住まいだ。
「なぜああまでして結婚まで進んでいたのに罠をかけた?」
「あの時はあれしかなかったのよ」
「ライブの会長からの指示だったのか?」
「いえ、私が決めたこと」
 珍しく厳しい顔で立ち上がる。入口に西崎の顔が見える。ママは西崎と言葉を交わしてボックスに案内する。しばらくしてボーイがチェリーを呼びに来る。
「ライブがテレビ局の株を買い増したぞ」
 専務は商いのグラフを見せる。エヌで200億の返済をしただけでなくまだ儲けていたようだ。










しおりを挟む

処理中です...