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東インド会社11

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 明け方アユタヤの海にイギリス商船の3艇が姿を現した。李課長の話では香港に向かう船をわざわざこちらに回したとのことだ。王は入り江に水軍の10隻を並べたがいかにも頼りなげだ。統括部長は朝から王宮に押し掛けてリーが交渉をしている。王宮の正門に鉄砲を背負った警備隊を50人並べている。
 遂に正午には3艇から割れるような空砲が空に向けて撃ちあげられる。これが東インド会社の定番の脅しだ。茉緒は下忍に夜のうちに酒場の地下にアヘンを運び込んでいる。地下の桟橋には和寇船が付けられている。酒場はもう閉まったままだ。空砲に合わさるように大爆発が起こる。それから激しい銃撃戦が始まって酒場は猛煙を上げる。
 待っていたように王宮から九郎を頭に近衛軍の騎馬隊が百飛び出してくる。それに遅れて統括部長が馬を調達して警備隊で追う。茉緒の合図で燃え盛る酒場から和寇の格好をした下忍の騎馬が田んぼの道を走り抜ける。ここはすでに狭いが山まで通じている。
 九郎が酒場に到着して50騎を田んぼ道を走らせた。それから消火をしながら遺体を莚に包んで運び出す。半裸の警備隊長に、全裸の女に、隊長の剣を腹に受けたタオと酒場の男だ。地下室と和寇船にアヘンが大量残されている。金貨の袋も床に飛び散っている。
「現場をそのままにするのだ」
と馬から下りた統括部長が怒鳴る。九郎の近衛軍と警備隊がにらみ合いとなる。この後からサンベット王がリーと李課長を連れて入ってくる。これはリーに指示していた。
 アヘンに絡む仲間割れだ。タオはすでに和寇のアユタヤの頭と判明している。逃げたのは和寇だ。九郎が王に説明するのを苦々しく統括部長が見ている。李課長は事務職員に記録をさせている。王がこの記録を証明することになる。
 どうも統括部長がこのアヘン持ち込みの首謀者のようだ。進んで死人に口なしで警備隊長の犯行として片づけた。まことに彼にとって都合に言い調書になっている。茉緒は草むらの中からそれを眺めている。




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