夢追い旅

夢人

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吹き溜まり

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 今日は休日だが団長とケイ君ら役者の面々は前衛劇場に朝から詰めている。周平は用意されていた朝ごはんをカオルに作って食べさせた。ちょっとした間隙を抜いてカオルが体を求めてくる。夏蝉のように少しの時間でも惜しむようなセックスである。
「もう寝た方がいいよ」
「一緒に寝て!」
 だがいつの間にか寝息がする。体力がなくなってきているようだ。蒲団を被せて店に降りる。
 目玉さんが座っていてビールを飲んでいる。
「みんなといかなかったんですか?」
「いや、今日の芝居には出番がないわ。それよりカオルは?」
「今寝ましたよ」
「狐はこれからどうするんや?」
 カオル達には周平はいつまでも詐欺師の狐なのだ。
「もちろん生まれてくる子の」
「気張らんとええで。カオルの子はみんなが面倒見る。ここにおる男達はみんなカオルの父親や。めくらのワシでも何度も抱いてもらった。狐の子でよかったいうもんや」
 周平も隣にかけてビールを開ける。
「カオルはいつから病院に?」
「そうやな。団長が来るもう少し前やったかな。母親が未熟なカオルを連れて病院に来とった。齢は二十歳くらいの時やったかな。時々売春でお金を稼いでたみたいやな。この辺りはそういう女の子が多かったわな。それがいつの間にか母の姿を見んようになったな」
 カウンターにカオルの写真を出してみせる。全裸の写真だ。
「ここの男はみんなこれを持っている。カオルが1000円で売っとった。みんなの恋人やったわ。それが団長と一緒に生活するようになった。ホワイトドームはどぶ川の吹き溜まりのようなとこやが、俺たちには最高の安息場所や」
 ひょっとしたら伯母にとっても新世界という町がそうだったのかと周平は思う。
 いつの間にかカウンターに電線の雀のように常連たちが並んでいる。みんな思い思いに飲み物を出してきて、あてに鋏を回してあけている。であるだけのお金をせんべいの空き瓶に入れてゆく。





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