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柳沢の素性
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M商事の現職の書記長が組合員の告発で警察の任意の呼び出しを受けた。
周平は今日は朝から人事部の倉庫に籠っている。組合の裏帳簿については課の人間を一人張り付けた。相談役自身が組合の委員長にも面談を入れていいる。加瀬の第3弾も必要に専務を攻撃しているが、第1弾と人が変わったような文章回しである。
調べていて初めて分かったのだが、柳沢は新卒採用ではなく、ちょうどM商事の業績が行き詰っていた頃、今の会長の彼女事件なるものが起こった。今まで接待は舅が担当していたのだが、この時はM銀行対策で舅が終始M銀行頭取を銀座のママの店に招待していた。その間に談合に使っていた柳沢の彼女と関係ができていた。
周平は人事部の書庫係の南部さんを行きつけの居酒屋に誘った。
「田辺さん、もう定年さかい」
と彼は旧姓で呼ぶ。彼には何度も調査で力を借りている。会長が社長時代に人事係長だった彼を降格した。そのまま万年平なのである。その理由をいまだ南部さんは口にしない。
周平は日本酒を注ぐと、封筒から分厚いコピーを出してくる。
「柳沢部長ご存知ですね?彼は中途採用でしたね?」
目が頷いている。
「この資料を見ると、南部さんが係長の時初回調査と面接をしてますね?それで人事課長も部長も判だけついて回しています。それはままあることです。なのに社長は2次面接に立ち会っていますね。社長が立ち会う人物の面接を課長も部長もめくら判はないですね?」
履歴書の前歴のところに附箋が貼ってあったが、はがされている。
「このT不動産とある住所はT興行という闇金が今でも営業をしています。当然南部さんも調べた」
こくりと頷く。
「課長採用ですよ」
「問題があると言いましたが」
やはり調べて分かっていたが、当時の社長に押し切られた。
「課長にも相談しました。そしたら数日後に降格された」
この時は舅を動かさなかった。だから周平の耳にも入ってこなかった。
「彼女事件は?」
「人事部長が話をしていました」
周平は今日は朝から人事部の倉庫に籠っている。組合の裏帳簿については課の人間を一人張り付けた。相談役自身が組合の委員長にも面談を入れていいる。加瀬の第3弾も必要に専務を攻撃しているが、第1弾と人が変わったような文章回しである。
調べていて初めて分かったのだが、柳沢は新卒採用ではなく、ちょうどM商事の業績が行き詰っていた頃、今の会長の彼女事件なるものが起こった。今まで接待は舅が担当していたのだが、この時はM銀行対策で舅が終始M銀行頭取を銀座のママの店に招待していた。その間に談合に使っていた柳沢の彼女と関係ができていた。
周平は人事部の書庫係の南部さんを行きつけの居酒屋に誘った。
「田辺さん、もう定年さかい」
と彼は旧姓で呼ぶ。彼には何度も調査で力を借りている。会長が社長時代に人事係長だった彼を降格した。そのまま万年平なのである。その理由をいまだ南部さんは口にしない。
周平は日本酒を注ぐと、封筒から分厚いコピーを出してくる。
「柳沢部長ご存知ですね?彼は中途採用でしたね?」
目が頷いている。
「この資料を見ると、南部さんが係長の時初回調査と面接をしてますね?それで人事課長も部長も判だけついて回しています。それはままあることです。なのに社長は2次面接に立ち会っていますね。社長が立ち会う人物の面接を課長も部長もめくら判はないですね?」
履歴書の前歴のところに附箋が貼ってあったが、はがされている。
「このT不動産とある住所はT興行という闇金が今でも営業をしています。当然南部さんも調べた」
こくりと頷く。
「課長採用ですよ」
「問題があると言いましたが」
やはり調べて分かっていたが、当時の社長に押し切られた。
「課長にも相談しました。そしたら数日後に降格された」
この時は舅を動かさなかった。だから周平の耳にも入ってこなかった。
「彼女事件は?」
「人事部長が話をしていました」
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