夢追い旅

夢人

文字の大きさ
上 下
79 / 248

柳沢の素性

しおりを挟む
 M商事の現職の書記長が組合員の告発で警察の任意の呼び出しを受けた。
 周平は今日は朝から人事部の倉庫に籠っている。組合の裏帳簿については課の人間を一人張り付けた。相談役自身が組合の委員長にも面談を入れていいる。加瀬の第3弾も必要に専務を攻撃しているが、第1弾と人が変わったような文章回しである。
 調べていて初めて分かったのだが、柳沢は新卒採用ではなく、ちょうどM商事の業績が行き詰っていた頃、今の会長の彼女事件なるものが起こった。今まで接待は舅が担当していたのだが、この時はM銀行対策で舅が終始M銀行頭取を銀座のママの店に招待していた。その間に談合に使っていた柳沢の彼女と関係ができていた。
 周平は人事部の書庫係の南部さんを行きつけの居酒屋に誘った。
「田辺さん、もう定年さかい」
と彼は旧姓で呼ぶ。彼には何度も調査で力を借りている。会長が社長時代に人事係長だった彼を降格した。そのまま万年平なのである。その理由をいまだ南部さんは口にしない。
 周平は日本酒を注ぐと、封筒から分厚いコピーを出してくる。
「柳沢部長ご存知ですね?彼は中途採用でしたね?」
 目が頷いている。
「この資料を見ると、南部さんが係長の時初回調査と面接をしてますね?それで人事課長も部長も判だけついて回しています。それはままあることです。なのに社長は2次面接に立ち会っていますね。社長が立ち会う人物の面接を課長も部長もめくら判はないですね?」
 履歴書の前歴のところに附箋が貼ってあったが、はがされている。
「このT不動産とある住所はT興行という闇金が今でも営業をしています。当然南部さんも調べた」
 こくりと頷く。
「課長採用ですよ」
「問題があると言いましたが」
 やはり調べて分かっていたが、当時の社長に押し切られた。
「課長にも相談しました。そしたら数日後に降格された」
 この時は舅を動かさなかった。だから周平の耳にも入ってこなかった。
「彼女事件は?」
「人事部長が話をしていました」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

さよならまでの準備稿

ちみあくた
ミステリー
 濃い霧が漂う三月半ば、映画専門を謳う神保町の古書店・幻灯屋に四十代の主婦・杉野澄子が訪れる。  二十六年前、製作中止になった「或る映画」の脚本を探しているのだと言う。  手がかりになるのは彼女の夫・猛が学生時代に書いた脚本で、彼が監督を務める筈だった映画の原型なのだが、あくまで準備稿に過ぎない。    当時、猛と主演女優・栗原芽衣には恋の噂があった。そして芽衣の突然の失踪が製作中止の原因なのだと言う。  準備稿の中で猛は過去と未来を行交う幻想的な物語を展開、妻となるべき平凡な女性と別れ、別の未来を選ぶ結末を描いていた。  この内容と芽衣の失踪に何か関係が有るのか?  猛は現在、難病で脳死へ陥り、問い質す事ができない。だが意識を失う寸前、幻の決定稿が幻灯屋にある事を、彼は仄めかしたそうだ。  もう語り合えないからこそ、脚本の中に残された夫の真実を知りたい!  そんな澄子の思いを受け、幻灯屋の店主は決定稿を探し始めるのだが……。      エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しております。  

翡翠少年は謎を解かない

にしのムラサキ
ミステリー
その少年は謎を解かない。 真実になんか、興味がないから。 古い洋館に従姉と住む、翡翠の目をした少年。学校にも通わず、洋館で絵を描き続ける彼は、従姉の世界を守るために嘘をつく。 夏のある日、従姉と訪れたとある島、そこにある浮世絵コレクターの屋敷で死体が発見される。 "真実"に気づいた少年は、従姉を守るために嘘をつくことを決めた。 【第二回ホラー・ミステリー大賞】で特別賞をいただきました。ありがとうございました。 エブリスタ にて加筆修正したものを掲載中です。 https://estar.jp/novels/25571575

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

あの日、私は姉に殺された

和スレ 亜依
ミステリー
主人公飯田咲良(いいだ さくら)は姉に殺された。しかし、己の肉体を失ったはずの咲良はなぜか姉の体で新たな生を受けることになる。自分の死から半年が過ぎた頃、咲良の周囲で異変が起こり始める。次々と生まれ、迷宮入りの様相を呈していく数々の謎に、咲良は真実を見つけることができるのか。 PVがありますのでそちらをどうぞ。 https://www.youtube.com/watch?v=ytliDsdwzRk

恥ずかしいので観ないで下さい。

恐山にゃる
ミステリー
15秒で読める140文字以内のショートショート作品です。(夫には内緒で書いています。) 恥ずかしいので観ないで下さい。 生きる事は恥を晒す事。 作品には仕掛けを施してある物もございます。 でももし火遊び感覚で観てしまったのなら・・・感想を下さい。 それはそれで喜びます。 いや凄く嬉しい。小躍りして喜びます。 どちらかの作品が貴方の目に留まったなら幸いです。恐山にゃる。

桜の樹の下に君を埋めるといふこと

浦登みっひ
ミステリー
 桜の花弁舞う四月、主人公たちが通う青梛大学は新年度を迎え、新生活に心を躍らせる初々しい新入生が大挙してやってきた。  新入生を巡って各サークルが熾烈な争奪戦を繰り広げるその最中、サークル棟のある部室で、カーテンがズタズタに切り裂かれる事件が発生した。質の悪いイタズラに気味の悪さを覚えつつも平穏に続いてゆく日常。しかし数週間後、同じサークル棟で、桜色に彩られた首のない女の死体が発見される。 ※この作品は小説家になろうでも公開しています。 ※画像はフォロワーのうさこさんからお借りしました。

処理中です...