夢追い旅

夢人

文字の大きさ
上 下
51 / 248

仁義

しおりを挟む
 留守電の主は、ケイ君だった。今晩手が空いたら、ホワイトドームに来いよという伝言だ。
 時計を見ると、9時を回っている。連絡があったのは、8時過ぎだ。家に電話を入れるが、誰も出てくる気配がない。今度の映子の浮気旅行は長いようだ。
 タクシーを走らせて、30分の距離だ。途中で轟から携帯が入る。
「社長派からのお誘いでしたね」
 轟があの場所のどこかにいたようだ。
「国崎さんは読み込み済みだったという訳?」
「まあ、そういうところ」
「この動きは、咎められるのかな?」
「いや、成り行きにってな感じかな」
「あの追突の車見つけたぜ。ラブホテルの送迎者用の車だ。あの賭博場に出入りしているチンピラが使っている。これは俺の手柄じゃない。国崎さんのルートで見つけた。それで、刑事がラブホテルに」
「逮捕した?」
「いや、国崎さん得意の脅しだよ。あまり荒立てるのもよくないようだ」
「今はどこから?」
「2件目のスナック。ここには入れないんで、寒空にベンチでウイスキーをやっている」
「包帯は?」
「無理矢理外した。目立つものなあ。もう一つ報告だ。あんたところの部下の加瀬がとんでもない男を連れて入ったぜ。この報告は例によって、まだ上には上げない。二人だけの秘密だ」
 どうも二人だけの仁義のようだ。
「相談役だ」






しおりを挟む

処理中です...