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【第43話:魔王を倒すか倒されるか】

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 俺が渾身の力で打ち出した超巨大な炎の魔法が、凄まじい勢いで魔王に向かって飛んでいく。
 相手が放ってきた魔法は大地を大蛇のように隆起させ、こちらに向かってくるが、俺の炎の方が勢いが強い。盛り上がる地面に俺の炎がぶつかり、ボロボロに焼き尽くして破壊して行く。
 焼けた岩や土が飛び散った。

「うぐぅっ! やるなお前っ!」

 勢いで負けている魔王が驚いた顔で歯ぎしりをした。
 まさか俺の魔法が魔王よりも強いなんて、俺も信じられない。

「すごいぞフウマ!」

 ララティもびっくりしてる。

 ──よし、相手が戸惑っている今がチャンスだ。
 もう一発打ち込んでやる。

鋭い雷の魔法ブリッツシュラーク!!」

 今度は大きな雷で攻撃する魔法。
 直接魔王の身体に、何本もの雷が落ちる。

「攻撃が大振りだな。これくらい簡単に……」

 よけられる、と言いたかったんだろう。
 確かに直接魔王を狙った雷は、見事な身のこなしでよけられた。
 しかし俺が放った雷は、魔王の身体を直接狙うだけじゃなくて、同時に魔王が隆起させた地面を狙った。そこに落ちた雷が地面をえぐり、岩が飛び散る。
 そして飛び散った岩が魔王の身体に振り注いだ。

 ──よしっ、狙い通りだ。

 俺は魔力は雑魚の落ちこぼれだが、その分今まで戦法なんかは熱心に勉強してきた。
 実技が伴わないから、頭でっかちの落ちこぼれ、なんて呼ばれてたけど。
 ようやく活かせる日が来たんだ。感無量。

「うぉっ!」

 数多くの岩が魔王の身体を直撃し、ダメージを与えている。

「くそっ! お前なかなかやるな! 見直したぞ」
「まだまだだ」

 よし、この調子で……

 もう一度、鋭い雷の魔法ブリッツシュラークを地面の岩に打ち込んだ。
 しかし手元が狂って、変な角度から地面に魔法が当たる。

 砕けた岩が想定外の方向に飛び散った。

「きゃぁっっ!」

 背後からララティの叫ぶ声。
 しまった。飛び散った岩がララティの方にも飛んでいく。
 彼女は油断していたのか、態勢を崩して上手く避けられずに、倒れそうになっている。

 このままでは岩がララティを直撃する!

「くそっ! 間に合ってくれ!!」

 俺は下半身に魔力を集中させて、思い切り地面を蹴った。
 ビュンと俺の身体が飛ぶ。

 岩がぶつかる直前に、ララティの前に俺が身体を入れた。
 そこに大量の岩がガツンガツンと直撃した。
 背中と後頭部に大きな衝撃が加わる。

「うぐぅっっっ!」

 痛ぇぇぇ!
 痛ぇよ!

「だっ、大丈夫かフウマ!」
「あ……あんまり大丈夫じゃないかも……」

 あまりに痛くて気が遠くなる。目の前が真っ暗になってきた。

「しっかりしろ! 今、治癒魔法をかけてやるから!」

 あ、ダメだ。意識が遠のく──

 ***

 目が覚めたらベッドの上に寝ていた。

「大丈夫かフウマ」

 上から覗き込むララティの顔がすぐ目の前にある。
 って、近すぎ!

 びっくりして起き上がった。

「俺、どうしてここに?」
「急に意識を無くしたからびっくりしたよ。でも命には別状がなくて良かった。ここへはパパが担いで運んでくれたんだよ」

 改めて部屋を見回した。
 重厚な内装の立派な部屋だ。
 俺が寝ていたベッドも三人くらい優に寝られるくらいデカい。

「そっか。俺、めっちゃカッコ悪いな。魔法は失敗するし、勝手に打撃を受けて痛手を負うし」

 こんなことじゃ、ララティのお父様に俺との付き合いを認めてもらえるはずがない。

「ごめんララティ」
「いやフウマ。そんなこと……」
「そんなことないぞフウマ君っ!!」

 急に背後から渋い低音の声が聞こえてびっくりした。
 振り向くと黒い髪に黒いツノを生やしたイケメンが立っていた。

余はキミを気に入った!」
「え?」
「あれだけの魔力と魔法を使えるのは、人間にしてはかなりすごいぞ。しかもララティが言っておったが、キミは今まだ魔力が伸び盛りだそうじゃないか」
「いやまあ、それほどでも」
「それよりなにより、命がけで身を張ってララティを守ってくれたのに感動した!」
「うわっ」

 いきなり両手で両手をぎゅっと握られた。
 魔王様は満面の笑み。

「よし、ララティとの交際を許すっ!」
「ホントですか?」
「おう! 魔王ウソつかない!」

 なんで急に片言になるのかわからないけど、どうやら冗談ではなく本気で俺達の関係を認めてくれたみたいでよかった。

「よかったなフウマ!」
「うん」
「それと、ありがとう」
「なにが?」
「あたしを命がけで守ってくれたこと」
「あ、いや。どういたしまして」
「フウマは体調はどうだ?」
「ん、そうだな」

 ベッドから降りて、立ってみた。
 ララティの治癒魔法のおかげか、どこも痛くない。

「大丈夫だ」
「よかった。じゃあ一緒に帰ろうか」

 ──え? ここ魔王城は、つまりララティの実家だよな。

「ララティはこのまま、ここに残るんじゃないの?」
「いや。あたしは引き続きクバル魔法学院に通うことにした。だから今後もフウマの家に住まわせてくれ」
「マジ!? なんで?」
「なんでって、そうしたいからだけど」

 予想外の展開にびっくりして言葉を失った。
 でもララティはちょっと悲しそうな目で言った。

「フウマが嫌なら、魔法学院に通うのも家に住まわせてもらうのも、もちろんやめるけど」

 もちろんいやだなんてことはない!
 でもあまりに驚いて、ちょっと言葉を失っていたら──

「フウマが嫌なら……フウマがどうしても嫌って言うなら……無理には言わないけど……」

 だからそんな悲しそうな顔すんなって!
 上目づかいで泣きそうな顔で見つめないでくれ!
 申し訳なさでいっぱいになる。
 でもそんな拗ねたララティも可愛い。

「違うよララティ。嫌だなんてはずがないだろ。また一緒に住んで一緒に学校に通えるなんて思っていなかったら、嬉しすぎて言葉を失っていたんだよ」
「ホントか?」
「ホントだよ」
「そっか! よかったぞ!」

 ようやくララティはほっとしたように笑みを浮かべた。
 悲しませてごめん。

「じゃあ一緒に帰ろうか」
「そうだね」

 こうして俺とララティは魔王様に交際を認めてもらい、自宅に帰った。
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