26 / 44
【第26話:タイマーン当日】
しおりを挟む
ツバルとの対決当日。一日の授業が終わった後、俺は会場へと向かった。
対決の会場にできる場所は何ヶ所かあり、対決を受ける側が自由に選べることになっている。
講義棟の地下演舞場や、だだっ広い草原、森の中などなど。
色んな場所があるので、自分の得意な戦い方を活かせる場所を選ぶのが通例なのだが……
どの魔法も弱っちい俺にとっては、正直言ってどこでも同じなので、目についた会場を適当に選んだ。
それが校舎裏に広がるだだっ広い草原だ。
だけど会場に着いて後悔した。
「うわ、なにこれ」
既に多くの観客が集まっていたのだ。
この草原会場は見通しがいいし、広くゆったり見れるし、どうやら一番観客が集まりやすい会場なのだそうだ。
こんな多くの人に、俺の無様な格好を晒さないといけないのか……
やらかしちまったな俺。
俺ごときの一対一魔法対決に、こんな大勢の観客が集まるとは予想外だった。
どうやらタイマーンが行われるのは久しぶりらしく、俺が知らない間に学院内で話題になっていたようだ。
しかもツバルは領主様の息子。対する相手は平民。
大貴族対平民というわかりやすい構図も、皆の興味を掻き立てたみたいだ。
つまり、この対決はそれなりに注目を浴びているということだ。
……どうしよう。緊張してきたぞ。
会場の中心部には既にツバルが来てて、不機嫌そうな顔で待っている。俺は慌てて駆け寄った。
「フウマ、よく逃げずに来たな。褒めてやるよ」
うわ、いかにも悪役っぽいセリフ。
でも俺の方が弱いのは間違いないからなぁ。
そう言いたくなるのもわかる。
なんて考えていたら、背後からマリンの声が聞こえた。
「フー君頑張って! 応援してるわ」
「うん、ありがとう」
わざわざ応援に駆けつけてくれたんだ。嬉しい。
と思っていたら、今度は違う声が耳に届いた。
「あたしだって応援してるんだからな」
「お、おう。わかってるさ、ありがとう」
ララティも応援に来てくれたのか。
だけど女子二人に応援されて……ツバルに怖い目で睨まれた。
こうやってツバルの嫉妬を買うのが、なんだかもうお決まりのようになっててごめんなさいとしか言えない。
「くそぅっ、ムカつくヤツめ!」
「まあまあツバル様には俺たちが付いていますから」
「そうですよ。我々が目一杯応援します。フウマなんて軽く倒しちゃいましょう」
腰巾着の二人、ブゴリとノビーがそう言ったにも関わらず、ツバル「ケッ、男だけかよ」と吐き捨てて、二人には目もくれない。
この二人、俺をバカにするからムカつくヤツらなんだけど、それでもかわいそうだ。もっと仲間を大事にした方がいいぞツバル。
「対戦相手は二人とも揃ってるようですね。ではそろそろ始めましょうか」
どこから現れたのか。さっきまでいなかった、痩せた中年男性が突然姿を見せた。ブラック先生だ。
「あれっ? 立ち会い人はギュアンテ先生なのでは?」
「ああ。彼女は急な用事が入って、代わりにワタクシが立ち会い人はを務めることになりました」
「そう……なんですね」
この人陰気だし、なんか掴みどころがないし、苦手なんだよなぁ。
でもギュアンテ先生が忙しいなら仕方ないか。
そして救護班として、フラワ先生も来てくれた。いつも白衣を着ている小柄で巨乳の、色っぽい先生だ。
そしてそんな見た目からは信じられないくらい、治癒魔法のレベルが高い。
死んでさえなければ、どんな大怪我でも大体はあっという間に治してしまうらしい。(真偽のほどは不明。)
見た目も可愛いし、この先生に介抱してほしいがために、わざと怪我をする生徒までいるとのことである。
「それではこれより、ツバル・クバル君とフウマ君のタイマーンを始める。ルールは簡単。片方が『参った』と言うか、気絶したら負け。両者、準備はいいか?」
向かい合った俺とツバルの間に立って、ブラック先生は俺たちの目を交互に見た。
「はい、大丈夫です」
「僕もオーケーだよ。さあフウマ。キミはいったい、何分立っていられるかな?」
俺とツバルは30メートルほど距離を空けて、向かい合って立った。そして開始の合図を待つ。
こういうチャラチャラした男に実力で劣るのは悔しいけど、それが現実だから仕方ない。
だけどマリンやララティも応援に来てくれてる。
最近は俺も少しは魔法が上達してる気がするし、あまりに情けない姿を晒すのだけは避けたい。
「よし始めっ」
ブラック先生の開始の合図が聞こえた。
まずは先手必勝だ。ツバルよりも先に、攻撃魔法を仕掛けよう。
俺の魔法でも機先を制したら、少しくらいはダメージを与えることができる。同じ負けるにしても、最低でも10分間くらいはもたせたい。
1分で終わっちゃう、なんて情けないことだけは避けたいんだよなぁ。
しかし──結果、この勝負はたった1分で終わってしまったのである。
対決の会場にできる場所は何ヶ所かあり、対決を受ける側が自由に選べることになっている。
講義棟の地下演舞場や、だだっ広い草原、森の中などなど。
色んな場所があるので、自分の得意な戦い方を活かせる場所を選ぶのが通例なのだが……
どの魔法も弱っちい俺にとっては、正直言ってどこでも同じなので、目についた会場を適当に選んだ。
それが校舎裏に広がるだだっ広い草原だ。
だけど会場に着いて後悔した。
「うわ、なにこれ」
既に多くの観客が集まっていたのだ。
この草原会場は見通しがいいし、広くゆったり見れるし、どうやら一番観客が集まりやすい会場なのだそうだ。
こんな多くの人に、俺の無様な格好を晒さないといけないのか……
やらかしちまったな俺。
俺ごときの一対一魔法対決に、こんな大勢の観客が集まるとは予想外だった。
どうやらタイマーンが行われるのは久しぶりらしく、俺が知らない間に学院内で話題になっていたようだ。
しかもツバルは領主様の息子。対する相手は平民。
大貴族対平民というわかりやすい構図も、皆の興味を掻き立てたみたいだ。
つまり、この対決はそれなりに注目を浴びているということだ。
……どうしよう。緊張してきたぞ。
会場の中心部には既にツバルが来てて、不機嫌そうな顔で待っている。俺は慌てて駆け寄った。
「フウマ、よく逃げずに来たな。褒めてやるよ」
うわ、いかにも悪役っぽいセリフ。
でも俺の方が弱いのは間違いないからなぁ。
そう言いたくなるのもわかる。
なんて考えていたら、背後からマリンの声が聞こえた。
「フー君頑張って! 応援してるわ」
「うん、ありがとう」
わざわざ応援に駆けつけてくれたんだ。嬉しい。
と思っていたら、今度は違う声が耳に届いた。
「あたしだって応援してるんだからな」
「お、おう。わかってるさ、ありがとう」
ララティも応援に来てくれたのか。
だけど女子二人に応援されて……ツバルに怖い目で睨まれた。
こうやってツバルの嫉妬を買うのが、なんだかもうお決まりのようになっててごめんなさいとしか言えない。
「くそぅっ、ムカつくヤツめ!」
「まあまあツバル様には俺たちが付いていますから」
「そうですよ。我々が目一杯応援します。フウマなんて軽く倒しちゃいましょう」
腰巾着の二人、ブゴリとノビーがそう言ったにも関わらず、ツバル「ケッ、男だけかよ」と吐き捨てて、二人には目もくれない。
この二人、俺をバカにするからムカつくヤツらなんだけど、それでもかわいそうだ。もっと仲間を大事にした方がいいぞツバル。
「対戦相手は二人とも揃ってるようですね。ではそろそろ始めましょうか」
どこから現れたのか。さっきまでいなかった、痩せた中年男性が突然姿を見せた。ブラック先生だ。
「あれっ? 立ち会い人はギュアンテ先生なのでは?」
「ああ。彼女は急な用事が入って、代わりにワタクシが立ち会い人はを務めることになりました」
「そう……なんですね」
この人陰気だし、なんか掴みどころがないし、苦手なんだよなぁ。
でもギュアンテ先生が忙しいなら仕方ないか。
そして救護班として、フラワ先生も来てくれた。いつも白衣を着ている小柄で巨乳の、色っぽい先生だ。
そしてそんな見た目からは信じられないくらい、治癒魔法のレベルが高い。
死んでさえなければ、どんな大怪我でも大体はあっという間に治してしまうらしい。(真偽のほどは不明。)
見た目も可愛いし、この先生に介抱してほしいがために、わざと怪我をする生徒までいるとのことである。
「それではこれより、ツバル・クバル君とフウマ君のタイマーンを始める。ルールは簡単。片方が『参った』と言うか、気絶したら負け。両者、準備はいいか?」
向かい合った俺とツバルの間に立って、ブラック先生は俺たちの目を交互に見た。
「はい、大丈夫です」
「僕もオーケーだよ。さあフウマ。キミはいったい、何分立っていられるかな?」
俺とツバルは30メートルほど距離を空けて、向かい合って立った。そして開始の合図を待つ。
こういうチャラチャラした男に実力で劣るのは悔しいけど、それが現実だから仕方ない。
だけどマリンやララティも応援に来てくれてる。
最近は俺も少しは魔法が上達してる気がするし、あまりに情けない姿を晒すのだけは避けたい。
「よし始めっ」
ブラック先生の開始の合図が聞こえた。
まずは先手必勝だ。ツバルよりも先に、攻撃魔法を仕掛けよう。
俺の魔法でも機先を制したら、少しくらいはダメージを与えることができる。同じ負けるにしても、最低でも10分間くらいはもたせたい。
1分で終わっちゃう、なんて情けないことだけは避けたいんだよなぁ。
しかし──結果、この勝負はたった1分で終わってしまったのである。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい
小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。
エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。
しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。
――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。
安心してください、ハピエンです――
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?
江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】
ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる!
※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。
カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過!
※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪
※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
あなたが婚約破棄したいと言うから、聖女を代替わりしたんですよ?思い通りにならなくて残念でしたね
相馬香子
恋愛
わたくし、シャーミィは婚約者である第一王子のラクンボ様に、婚約破棄を要求されました。
新たに公爵令嬢のロデクシーナ様を婚約者に迎えたいそうです。
あなたのことは大嫌いだから構いませんが、わたくしこの国の聖女ですよ?聖女は王族に嫁ぐというこの国の慣例があるので、婚約破棄をするには聖女の代替わりが必要ですが?
は?もたもたせずにとっととやれと?
・・・もげろ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる