26 / 27
2章 特訓
知らなかったです
しおりを挟む
そうして私とフラン兄様はレオナルド先生に魔法を教えてもらい、徐々に魔法についての知識を身につけていったのだが、レオナルド先生は授業が終わるとすぐに帰ってしまうのだ。彼とプライベートに関する話をまだ1度もしたことがない。
そしてある日、レオナルド先生は珍しく授業が終わってから「少し話したいことがある」と私を部屋に残した。フラン兄様は私だけを残して行くのを渋ったけれど、「何かあったらすぐに呼ぶように」と私に言いつけて退出した。
レオナルド先生は私に椅子に腰をかけるように言い、私もそれに従い腰をかける。だが彼は立ったままだ。見下ろされる形になったまま暫し静寂が部屋を支配する。その静寂を打ち破ったのは彼からだった。
「シノン君はさぁ…分かっててやってるの?」
「…何をでしょう?」
普段よりワントーンほど低い彼の声に反応が少し遅れる。
「何を…?そりゃ、その髪型だけど?」
「髪型…?」
私の髪型はフラン兄様と初めてあった日からずっと羊をモチーフにした髪型になっている。それがどうかしたのかと首を傾げていると、彼は私の座っている椅子の肘掛にそれぞれ手を置き、私の顔を覗き込む。彼によって椅子に閉じこめられている形になる。
「それ、羊をモチーフにしてるよね?この世界には獣人が存在しているのは分かってるのかな?人という種族のほとんどは、獣人やエルフなど他種族を見下しているか恐怖の対象にしている。決して友好的な態度ではない。それなのにそんな格好をしてどういうつもり?わざわざ自分から嫌われようとしているの?僕はどうやったって嫌われる対象から抜け出せないのに…!!」
彼は一筋の涙を流しつつ、私に激情をぶつけた。はっきり言って私は獣人がいることも人間が他種族と非友好的なことも知らなかった。
「…知りませんでした。人間が他種族に対してそんなに非友好的だなんて…。でも、私は違います。私は全ての種族と仲良くしたいと思っています。」
「嘘だ…!!そんなの嘘なんだろ?!」
私が素直な気持ちを伝えても彼は信じてくれない。それどころか魔力暴走を起こしかけている。私は今までの授業のおかげで身につけた魔力操作で、彼の魔力を彼の中へ押し戻していく。
「いいえ、先生。私寝ることが好きなんですけど、その時『羊が1匹、羊が2匹…』って数えるじゃないですか。だから羊にはすごくお世話になってますし、なによりもふもふしていて可愛いじゃないですか。」
「羊を数える…?可愛い…?」
すると先生は今までの激情が嘘のようにポカンと口を開けてこちらを凝視した。
もしかして、羊を数える文化なんてなかったかもしれないし、小さい子から見ると大きな羊は怖いのかもしれないと思い至り、慌てて訂正しようとしたら、彼が大声でお腹を抱えて笑い始めた。余りの声の大きさに部屋の前を通りかかったであろう使用人が何人か入ってきたが、笑いつつも手で制し退出させる。
しばらくして、息を整え終わったのかこちらへ微笑んできた。
「本当に君は面白いよ、まさか寝る時に羊を数えたり可愛いなんて思ってたりするなんて…プッ!!ククク…!!」
また笑いがこみあげてきたらしく肩を震わせている。まさかこんなに笑われると思ってなかったので甚だ不本意だが、誤解が解けたみたいでホッとする。
そして話は終わったと思い立ち上がりかけたところで、彼が片手を私の座っている椅子の肘掛に。もう片手をその背もたれにバンッと置いてきた。所謂壁ドンならぬ椅子ドンだ。そして私の顔を覗き込んできた。
「僕、君のその瞳もそうだけど、君自身も気に入っちゃったみたい。君の事もっと知りたいな。これからは覚悟してね?」
そう言って私のおでこに軽く触れるだけのキスをして離れて行った。私が再起動するまでに時間がかかったのは察して欲しい。
そしてある日、レオナルド先生は珍しく授業が終わってから「少し話したいことがある」と私を部屋に残した。フラン兄様は私だけを残して行くのを渋ったけれど、「何かあったらすぐに呼ぶように」と私に言いつけて退出した。
レオナルド先生は私に椅子に腰をかけるように言い、私もそれに従い腰をかける。だが彼は立ったままだ。見下ろされる形になったまま暫し静寂が部屋を支配する。その静寂を打ち破ったのは彼からだった。
「シノン君はさぁ…分かっててやってるの?」
「…何をでしょう?」
普段よりワントーンほど低い彼の声に反応が少し遅れる。
「何を…?そりゃ、その髪型だけど?」
「髪型…?」
私の髪型はフラン兄様と初めてあった日からずっと羊をモチーフにした髪型になっている。それがどうかしたのかと首を傾げていると、彼は私の座っている椅子の肘掛にそれぞれ手を置き、私の顔を覗き込む。彼によって椅子に閉じこめられている形になる。
「それ、羊をモチーフにしてるよね?この世界には獣人が存在しているのは分かってるのかな?人という種族のほとんどは、獣人やエルフなど他種族を見下しているか恐怖の対象にしている。決して友好的な態度ではない。それなのにそんな格好をしてどういうつもり?わざわざ自分から嫌われようとしているの?僕はどうやったって嫌われる対象から抜け出せないのに…!!」
彼は一筋の涙を流しつつ、私に激情をぶつけた。はっきり言って私は獣人がいることも人間が他種族と非友好的なことも知らなかった。
「…知りませんでした。人間が他種族に対してそんなに非友好的だなんて…。でも、私は違います。私は全ての種族と仲良くしたいと思っています。」
「嘘だ…!!そんなの嘘なんだろ?!」
私が素直な気持ちを伝えても彼は信じてくれない。それどころか魔力暴走を起こしかけている。私は今までの授業のおかげで身につけた魔力操作で、彼の魔力を彼の中へ押し戻していく。
「いいえ、先生。私寝ることが好きなんですけど、その時『羊が1匹、羊が2匹…』って数えるじゃないですか。だから羊にはすごくお世話になってますし、なによりもふもふしていて可愛いじゃないですか。」
「羊を数える…?可愛い…?」
すると先生は今までの激情が嘘のようにポカンと口を開けてこちらを凝視した。
もしかして、羊を数える文化なんてなかったかもしれないし、小さい子から見ると大きな羊は怖いのかもしれないと思い至り、慌てて訂正しようとしたら、彼が大声でお腹を抱えて笑い始めた。余りの声の大きさに部屋の前を通りかかったであろう使用人が何人か入ってきたが、笑いつつも手で制し退出させる。
しばらくして、息を整え終わったのかこちらへ微笑んできた。
「本当に君は面白いよ、まさか寝る時に羊を数えたり可愛いなんて思ってたりするなんて…プッ!!ククク…!!」
また笑いがこみあげてきたらしく肩を震わせている。まさかこんなに笑われると思ってなかったので甚だ不本意だが、誤解が解けたみたいでホッとする。
そして話は終わったと思い立ち上がりかけたところで、彼が片手を私の座っている椅子の肘掛に。もう片手をその背もたれにバンッと置いてきた。所謂壁ドンならぬ椅子ドンだ。そして私の顔を覗き込んできた。
「僕、君のその瞳もそうだけど、君自身も気に入っちゃったみたい。君の事もっと知りたいな。これからは覚悟してね?」
そう言って私のおでこに軽く触れるだけのキスをして離れて行った。私が再起動するまでに時間がかかったのは察して欲しい。
0
お気に入りに追加
2,294
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。
白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。
筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。
ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。
王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?
婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな
朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
婚約破棄されて国外追放の公爵令嬢、しかし地獄に落ちたのは彼女ではなかった。
!逆転チートな婚約破棄劇場!
!王宮、そして誰も居なくなった!
!国が滅んだ?私のせい?しらんがな!
18話で完結
サブキャラな私は、神竜王陛下を幸せにしたい。
神城葵
恋愛
気づいたら、やり込んだ乙女ゲームのサブキャラに転生していました。
体調不良を治そうとしてくれた神様の手違いだそうです。迷惑です。
でも、スチル一枚サブキャラのまま終わりたくないので、最萌えだった神竜王を攻略させていただきます。
※ヒロインは親友に溺愛されます。GLではないですが、お嫌いな方はご注意下さい。
※完結しました。ありがとうございました!
※改題しましたが、改稿はしていません。誤字は気づいたら直します。
表紙イラストはのの様に依頼しました。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる