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自分のやるべき事
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「本当に大丈夫か?安全な場所まで連れていく」
「大丈夫だよ、クレイドも足元気を付けてね」
「周りに何を言われてもいいから、俺と一緒に」
「ここでやりたい事があるから、まだ行けない」
クレイドの背中を軽く押して、名残惜しそうに振り返るから手を振った。
視界に見えなくなるまで見送り、背を向けて歩き出した。
真っ暗で何処を歩いているのか分からない。
地面はまだ滑りそうだし、ここで寝転んで野宿は嫌だな。
贅沢は言えないが、せめて草のじゅうたんがあればいいなぁ…
転ばないようにゆっくりと歩いていたら、頭になにかがぶつかった。
その衝撃で泥に全身をダイブする事になった。
この服一着しか持ってないのに…
なにがぶつかってきたのか暗闇の中見つめていたら、くちばしがぬっと現れた。
『やっと見つけた!何処に行ったかと思ったよ!』
「えっ…ど、何処にいたの?なにか聞いたり見たり、してない?」
鳥は怒っているのか、大音量で脳内に響き渡る。
クレイドとの事を見られたら、鳥とはいえ恥ずかしい。
俺のとは別で、クレイドの裸も誰にも見られたくない。
俺のものだってクレイドに言ってもらえたから、クレイドのあの顔は俺だけが見れる顔だよな。
こうして考えると、俺って重いのかな。
束縛したら嫌われてしまうからほどほどがいいんだろうけど、どうしたらいいのか分からない。
鳥は首を傾げていて、俺の頭に留まった。
『何の話をしてるのか分からないけど、いきなり危ない力が発生したから避難してたんだけど、なにかあったの?』
「な、なな何でもない!それより水浴び出来るところない?」
『水浴び?』
見ていないならそれでいい、それより汚れた身体を綺麗にしたい。
クレイドとした時はクレイドが水の魔術で綺麗にしてくれたから、泥の汚れだけが気になる。
鳥なら水浴びするかなぁと思って聞いてみると『しょうがないなぁ』と言いつつ案内してくれた。
思ったより近場に湖があって、周りを見渡して安全を確認する。
実際に見たら綺麗な湖なんだろうなと、目の前の暗い湖を眺めた。
服を全て脱いで、ゆっくりと湖に身体を沈ませる。
冷たくて震えるけど我慢して、脱いだ服を手に取り洗った。
『お願い聞いたんだから、僕のお願いも聞くよね?』
「聞きたい事があるんだけど」
『僕の話聞いてる?』
「魔王って、何が出来るの?」
鳥はプンプンと可愛らしく怒っている様子だったが、俺の言葉に一瞬止まった。
定位置のように頭に乗って、楽しそうな声で『何でも』と言った。
世界征服も人間を従わせる事も滅ぼす事だって出来る。
俺が普通の人間だって事忘れてるのかな。
湖から出て、服を思いっきり絞って軽く動かしてから服を着た。
濡れているけど、全裸で外をうろうろと歩けない。
運良く風邪を引かない事を祈るよ。
「君は俺を魔王にしたいんだよな」
『当然!じゃないと君のような人間を助けるメリットは僕にはないからね』
「ただの人間なのに?」
『言ったからには僕もサポートするよ』
「そうか、なら魔王になるよ」
鳥の方に振り返ると、あっさりそう言うと思っていなかったのかまた固まっていた。
当然、世界征服も人間を従わせる事も滅ぼす事も興味がない。
俺はただ、好きな人と幸せに暮らしたい…それだけだ。
普通にしていても、俺は人の世界で魔物だと思われていて何も変わらない。
クレイドに守ってもらいながらずっと暮らすしかない。
重荷にはなりたくない、だから変えるつもりだ。
まずは争いをなくす事から始めないといけない。
でも、人間と魔物はずっと争っていて共存なんて出来るわけがない。
生まれも環境も違うんだ、魔王になってそんな事をしようと思っていない。
人間と魔物の住む場所を分ければいいんだ。
お互いの住みかを荒らされるから攻撃的になる。
干渉しなければ争いも確実に減っていく。
「俺は魔物の住みかと人間の住みかを分けたいんだ、魔王なら出来るよな」
『不可能ではないけど、人間を狩る事を生き甲斐にしている魔物がいるけどそれはどうするつもり?』
「人間を従わせる事が出来るなら、魔物も従わせる事が出来るって事だよね」
魔王なら、勝手な殺戮をする魔物を従わせる事が出来る筈だ。
鳥も協力してくれるよね、頼りにしてる。
笑みを浮かべると、鳥は呆れたような嬉しそうな声で『仕方ないなぁ』と言ってくれた。
これは俺一人で全て出来るわけではない。
人間側の協力が必要だけど、クレイドにも話し合わないとな。
完全に人の世界から切り離す存在になるけど、俺に残された未来は茨の道だけだ。
「大丈夫だよ、クレイドも足元気を付けてね」
「周りに何を言われてもいいから、俺と一緒に」
「ここでやりたい事があるから、まだ行けない」
クレイドの背中を軽く押して、名残惜しそうに振り返るから手を振った。
視界に見えなくなるまで見送り、背を向けて歩き出した。
真っ暗で何処を歩いているのか分からない。
地面はまだ滑りそうだし、ここで寝転んで野宿は嫌だな。
贅沢は言えないが、せめて草のじゅうたんがあればいいなぁ…
転ばないようにゆっくりと歩いていたら、頭になにかがぶつかった。
その衝撃で泥に全身をダイブする事になった。
この服一着しか持ってないのに…
なにがぶつかってきたのか暗闇の中見つめていたら、くちばしがぬっと現れた。
『やっと見つけた!何処に行ったかと思ったよ!』
「えっ…ど、何処にいたの?なにか聞いたり見たり、してない?」
鳥は怒っているのか、大音量で脳内に響き渡る。
クレイドとの事を見られたら、鳥とはいえ恥ずかしい。
俺のとは別で、クレイドの裸も誰にも見られたくない。
俺のものだってクレイドに言ってもらえたから、クレイドのあの顔は俺だけが見れる顔だよな。
こうして考えると、俺って重いのかな。
束縛したら嫌われてしまうからほどほどがいいんだろうけど、どうしたらいいのか分からない。
鳥は首を傾げていて、俺の頭に留まった。
『何の話をしてるのか分からないけど、いきなり危ない力が発生したから避難してたんだけど、なにかあったの?』
「な、なな何でもない!それより水浴び出来るところない?」
『水浴び?』
見ていないならそれでいい、それより汚れた身体を綺麗にしたい。
クレイドとした時はクレイドが水の魔術で綺麗にしてくれたから、泥の汚れだけが気になる。
鳥なら水浴びするかなぁと思って聞いてみると『しょうがないなぁ』と言いつつ案内してくれた。
思ったより近場に湖があって、周りを見渡して安全を確認する。
実際に見たら綺麗な湖なんだろうなと、目の前の暗い湖を眺めた。
服を全て脱いで、ゆっくりと湖に身体を沈ませる。
冷たくて震えるけど我慢して、脱いだ服を手に取り洗った。
『お願い聞いたんだから、僕のお願いも聞くよね?』
「聞きたい事があるんだけど」
『僕の話聞いてる?』
「魔王って、何が出来るの?」
鳥はプンプンと可愛らしく怒っている様子だったが、俺の言葉に一瞬止まった。
定位置のように頭に乗って、楽しそうな声で『何でも』と言った。
世界征服も人間を従わせる事も滅ぼす事だって出来る。
俺が普通の人間だって事忘れてるのかな。
湖から出て、服を思いっきり絞って軽く動かしてから服を着た。
濡れているけど、全裸で外をうろうろと歩けない。
運良く風邪を引かない事を祈るよ。
「君は俺を魔王にしたいんだよな」
『当然!じゃないと君のような人間を助けるメリットは僕にはないからね』
「ただの人間なのに?」
『言ったからには僕もサポートするよ』
「そうか、なら魔王になるよ」
鳥の方に振り返ると、あっさりそう言うと思っていなかったのかまた固まっていた。
当然、世界征服も人間を従わせる事も滅ぼす事も興味がない。
俺はただ、好きな人と幸せに暮らしたい…それだけだ。
普通にしていても、俺は人の世界で魔物だと思われていて何も変わらない。
クレイドに守ってもらいながらずっと暮らすしかない。
重荷にはなりたくない、だから変えるつもりだ。
まずは争いをなくす事から始めないといけない。
でも、人間と魔物はずっと争っていて共存なんて出来るわけがない。
生まれも環境も違うんだ、魔王になってそんな事をしようと思っていない。
人間と魔物の住む場所を分ければいいんだ。
お互いの住みかを荒らされるから攻撃的になる。
干渉しなければ争いも確実に減っていく。
「俺は魔物の住みかと人間の住みかを分けたいんだ、魔王なら出来るよな」
『不可能ではないけど、人間を狩る事を生き甲斐にしている魔物がいるけどそれはどうするつもり?』
「人間を従わせる事が出来るなら、魔物も従わせる事が出来るって事だよね」
魔王なら、勝手な殺戮をする魔物を従わせる事が出来る筈だ。
鳥も協力してくれるよね、頼りにしてる。
笑みを浮かべると、鳥は呆れたような嬉しそうな声で『仕方ないなぁ』と言ってくれた。
これは俺一人で全て出来るわけではない。
人間側の協力が必要だけど、クレイドにも話し合わないとな。
完全に人の世界から切り離す存在になるけど、俺に残された未来は茨の道だけだ。
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