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冷たい牢獄

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「痛い目にあいたくなければ拠点を教えろ」

「そう言われましても、分からないんです」

「そんなに拷問を受けたいんだな」

何を言っても同じ事の繰り返しで全然進まない。

騎士団長は俺に剣をちらつかせて脅して、怯えても言える事は何もない。
冷たい水を頭から被っても、鞭で背中を打たれても俺にはどうする事も出来ない。

いっその事情報を渡した方が良いのかもしれないが、その情報を持って居なかったら意味がない。

背中が痛くて、身体が震えても口を割る事が出来ない。
騎士団長は冷めた瞳で俺の事を見つめていた。

ローブを掴まれて脱がそうと引っ張るが、俺だって無理なのに脱げるわけがない。

顔を掴まれて、頬を引っ張られて目に触れようとしたから顔を逸らした。

ギュッと目蓋を閉じると、突き飛ばされて壁に激突する。

「よく出来た人間の皮だな」

「…俺は人間で」

「まだそのような事を言えるなら、もっと我慢出来るよな」

騎士団長はそう言うと、俺の頬を思いっきり殴った。
身体が転がり、赤い染みが地面を汚した。

立ち上がろうとして腕に力を入れるが、すぐに力が抜けて地面に倒れた。

それを見ていた騎士団長は、後ろにいる部下と小声でなにかを話していた。
俺の方に向いて、ローブを掴んで目を合わせる。

「話す気になったか」と言われても、痛みから逃げ出したくて気絶している俺は返事が出来ない。
鼻で笑われて、地面に落とされて牢獄の扉が閉まる音がした。

数人の足音が遠ざかっていくのが聞こえて、周りが静かになった。

ゆっくりと目を開けて、周りがいない事を確認してから起き上がる。

背中がズキッと痛くなり、ゆっくり鉄格子に触れる。

動かしても反応はない、鍵が掛かってるのは当然か。
どうやって抜け出そうか、どこか外れる鉄格子があるかもしれない。

ドラマとかでは都合よくあったりするが、現実はそう甘くはない。
押して引いてねじってもびくともしない。

誰か脱走した痕跡があるかもしれないと壁に触れてみる。
何にもない、もし傷があって壁を壊そうとしたら地下牢が生き埋めになるからやめた方がいいよな。

他は何もない、寝るための敷物すらない…唯一助かったのはトイレがあるくらいか?
絶対にこんなところでトイレなんてしたくないけど…

脱走は牢獄を開けた時くらいか、でもそうなると騎士団長がいる時くらいだ。
簡単に逃げ出す事は出来ない、それに今の俺は鎖で両腕を塞がれている。
一瞬の隙で逃げれても、すぐに捕まるだろう。

どうしたらいいんだ、まずは鎖をどうにかしないといけない。

さっきと同じように引っ張ってねじって試してみる。
腕が疲れて、少し休憩した。

横になると、なにかが上から降ってきた。
冷たいものが頬に当たり、腕でゴシゴシと拭うと水滴が付いた。
雨漏りでもしてるのか?ついてないな…

その場所から少し離れて寝転がり直した。

ふと天井を見つめて、腕を拘束している鎖を見た。

雨漏りしているって事は、何処かに亀裂が入ってるって事だよな。
少しの衝撃で崩れるのかもしれない、上手く鎖を当てて壊せないかな。

人が来るのと、生き埋めになる危険も当然ある。
でも、それしか方法が思い付かない。

きっと神様が水滴のヒントを与えてくれたんだって思った。
鎖は壁に繋がっているわけじゃなく、大きな鉄球に繋がっている。
こんな鉄球が頭から落ちてきたら確実に死ぬ。

気を付けながら鉄球を掴んで、持ち上げようとした。

「いっつ!!」

さっきまで暴力を受けていて、体力がなくなっている俺にはびくともしなかった。
普通に囚人が持ち運べる重さだったら、牢獄に使えないよな。

俺の作戦はこれで終わった…わけではなかった。

俺が持ち運べないなら、持ち運べるものでやればいいんだ。

幸いな事に、牢獄の中は自由に歩き回る事が出来る。

俺の視線の先には便器があった。

「ごめんなさい」と一言謝って、便器を思いっきり蹴飛ばした。
揺れるだけで壊れそうにないが、何度も何度も蹴り上げた。
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