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悪夢でありたい
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顔をなにかで突っつかれて、眉を寄せてまた眠ろうとした。
もう一度突っつかれて、さすがにしつこいと目を開けた。
せっかく思い出に浸っていたのに、なんで起こそうとするんだよ。
「誰だ……ぁ」
「やっと起きたか、良いご身分だな…異界人」
俺の視界いっぱいに見えるのは、黒いフードを被った骸骨だった。
俺はなにか悪い事をしたのだろうか、そうじゃないならなんで地獄にいるんだ?
死神のような骸骨は、喋る度にカタカタと音が聞こえる。
真っ赤に光る目のようなものからは、何の感情も分からない。
呆然とする俺の顔を覗き込んでいて、離れていった。
立ち上がる事も忘れて、ずっと横になっているとまた突っつかれた。
どうやら、骨で出来た杖でずっと突っついていたようだ。
誰の骨か分からずに、びっくりして飛び起きて骸骨から離れた。
「異界人とは、全員特別な能力があると聞いたが…弱そうな奴を召喚してしまったか」
「お、俺…なんで地獄なんかにいるんですか!?何もしてないと……思う、けど…」
無意識になにかしているなら気付いてないのかもと自信がなくなる。
骸骨は怯える俺を見て、カタカタと笑っているのがさらに怖い。
「お前はこれから人間達を恐怖の地獄に誘う魔王になるのだ」
何を言っているのか、真面目に分からないんだけど。
魔王になるのだってなんだよ、少女漫画の次はファンタジー漫画だって言いたいのか?
そこで、一つの可能性を思い付いた。
これは夢だったのか、目の前の骸骨も車に轢かれたのも…
もう一度寝ればきっといつも通り俺の部屋で目覚める筈だ。
ここであった事は全て忘れよう、俺には関係ないんだから。
冷たい床に横たわり、目蓋をきつく瞑り眠りについた。
この冷たい感触も、きっと現実でも自室の床に寝転がっているだけだ。
早く、こんなわけの分からない悪夢から脱出したい。
「ねぇ、人間って本当?」
「美味そう、今夜の晩ごはんにしちゃダメ?」
「こらこら、食べるのはまた後に取っておきなさい」
耳元で不穏な会話が聞こえるが、目蓋を開けなかった。
開けたら、俺の希望が何もかも崩れ去るような気がした。
俺の不安なんて知らない声の主達は話を進めていく。
どうやって調理するのか、腕はあまり肉がなさそうだからスープのだしにすると腕を触っている。
触られている感触は、人間のそれではなく毛むくじゃらのなにかだった。
寝ているフリを続けられないほど、腕に鳥肌が立った。
思いっきり振り払い、床を転がるようにして声の主達から離れる。
壁に当たり、背中をくっつけながら身体を起こす。
俺の前には無数のなにかがいて、俺をジッと見ていた。
腕を触っていたのは、雪男のような全身毛むくじゃらの猿のような生き物だった。
他にも頭に角が生えていたり、触覚が生えていたり人とは違うなにかがいた。
その真ん中には二度と会いたくなかった骸骨がいた。
「突然寝たと思ったら、騒がしい異界人だな」
「これは夢、全部幻覚幻聴、夢夢夢」
「聞いていないのか、これ」
骨の杖で頭を軽く殴られて、割れてしまいそうなほど痛かった。
加減をしていなかったのか、されるほど親しくはないが殴られる覚えもない。
俺が魔王とかなにかの間違いだよな、そういうのはもっと適任者がいる筈だ。
ファンタジー漫画でも、俺の場合は主役達に一度も声掛けられる事なく通りすぎる通行人だ。
そもそも魔物が魔王になるんじゃないのか?俺は普通の人間だ。
自分でそう言って、不安になり手のひらを見つめた。
良かった、皮膚が緑になったわけではなさそうだ。
念のため、触覚や角を確認するために自分の頭を触る。
「俺は見た目通りただの人間だ、魔王にはならない!」
「まだお前は魔王ではない、魔王候補の一人でしかない」
骸骨がそう言って、後ろを振り返るから俺も骸骨の視線の先を見つめた。
そこにいたのは魔物達で、涎をポタポタ床に落としていて顔が青ざめる。
魔王候補って、まさかこの魔物達も候補者って事か?
魔王になりたいなら譲るから、早くこの悪夢を覚まさせてくれ。
逃げ腰になる俺を骨の杖で俺の肩を引き止めていた。
軽く押さえられているようなのに、全く身体が動かない。
骸骨はカタカタと骨を鳴らして笑っていて、他の魔物達も笑っている。
その恐ろしい合唱は、洞窟のような場所ではよく響いた。
「何処に逃げるんだ?お前が死にそうなところを助けてやったのに」
「助けた?いや全部夢だから」
「なら元の世界に帰るか?帰った瞬間お前はここで起こった事をなかった事になって死体になるだけだがな」
ケタケタと笑う骸骨は、俺の頭に振れようとした。
もしかして、本当に帰してくれるのか?でも、素直に帰すなら死体になるのも本当って事になるけど…
どちらが本当なのか、試す好奇心も勇気も俺にはなかった。
自分の頭を守るように両手で抱えると、骸骨は手を止めた。
「魔王候補になる気になったか」と、骸骨の悪魔の囁きが聞こえる。
逆に考えればいいんだ、魔王候補は沢山いるなら俺がならなくても仕方ないの一言で終わる。
そうなれば自由になれる、もしかしたら死なずに帰れる方法もあるかもしれないから探したい。
魔王候補って何をするのか分からないが、何もしなければいい。
クラスでも空気と同化する事は得意だったんだ、大丈夫だ。
「俺、魔王候補になります!魔王になれなくても許して下さいね」
「大丈夫だ、召喚された異界人は不思議な力が使えると聞いているそのためにお前を呼んだんだ」
「ち、力?そんなものないけど…」
「……」
「……」
俺と骸骨の間に気まずい雰囲気が流れて、空気が凍った。
不思議な力は主役じゃないと持っていないと思う。
俺のような背景モブはせいぜい目立たないようにひっそりと暮らすだけだ。
ひりつく空気に耐えきれなくて、ヘラヘラと笑って誤魔化した。
骸骨と魔物達に足を太い縄で縛られて引きずられた。
俺の声が全く届いていないのか、そのまま縄は吊るされていき俺は逆さつりになった。
下にはぐつぐつと煮えたぎっている大窯があった。
恐怖で顔を歪ませる俺を見て、魔物達は喜んでいた。
もう一度突っつかれて、さすがにしつこいと目を開けた。
せっかく思い出に浸っていたのに、なんで起こそうとするんだよ。
「誰だ……ぁ」
「やっと起きたか、良いご身分だな…異界人」
俺の視界いっぱいに見えるのは、黒いフードを被った骸骨だった。
俺はなにか悪い事をしたのだろうか、そうじゃないならなんで地獄にいるんだ?
死神のような骸骨は、喋る度にカタカタと音が聞こえる。
真っ赤に光る目のようなものからは、何の感情も分からない。
呆然とする俺の顔を覗き込んでいて、離れていった。
立ち上がる事も忘れて、ずっと横になっているとまた突っつかれた。
どうやら、骨で出来た杖でずっと突っついていたようだ。
誰の骨か分からずに、びっくりして飛び起きて骸骨から離れた。
「異界人とは、全員特別な能力があると聞いたが…弱そうな奴を召喚してしまったか」
「お、俺…なんで地獄なんかにいるんですか!?何もしてないと……思う、けど…」
無意識になにかしているなら気付いてないのかもと自信がなくなる。
骸骨は怯える俺を見て、カタカタと笑っているのがさらに怖い。
「お前はこれから人間達を恐怖の地獄に誘う魔王になるのだ」
何を言っているのか、真面目に分からないんだけど。
魔王になるのだってなんだよ、少女漫画の次はファンタジー漫画だって言いたいのか?
そこで、一つの可能性を思い付いた。
これは夢だったのか、目の前の骸骨も車に轢かれたのも…
もう一度寝ればきっといつも通り俺の部屋で目覚める筈だ。
ここであった事は全て忘れよう、俺には関係ないんだから。
冷たい床に横たわり、目蓋をきつく瞑り眠りについた。
この冷たい感触も、きっと現実でも自室の床に寝転がっているだけだ。
早く、こんなわけの分からない悪夢から脱出したい。
「ねぇ、人間って本当?」
「美味そう、今夜の晩ごはんにしちゃダメ?」
「こらこら、食べるのはまた後に取っておきなさい」
耳元で不穏な会話が聞こえるが、目蓋を開けなかった。
開けたら、俺の希望が何もかも崩れ去るような気がした。
俺の不安なんて知らない声の主達は話を進めていく。
どうやって調理するのか、腕はあまり肉がなさそうだからスープのだしにすると腕を触っている。
触られている感触は、人間のそれではなく毛むくじゃらのなにかだった。
寝ているフリを続けられないほど、腕に鳥肌が立った。
思いっきり振り払い、床を転がるようにして声の主達から離れる。
壁に当たり、背中をくっつけながら身体を起こす。
俺の前には無数のなにかがいて、俺をジッと見ていた。
腕を触っていたのは、雪男のような全身毛むくじゃらの猿のような生き物だった。
他にも頭に角が生えていたり、触覚が生えていたり人とは違うなにかがいた。
その真ん中には二度と会いたくなかった骸骨がいた。
「突然寝たと思ったら、騒がしい異界人だな」
「これは夢、全部幻覚幻聴、夢夢夢」
「聞いていないのか、これ」
骨の杖で頭を軽く殴られて、割れてしまいそうなほど痛かった。
加減をしていなかったのか、されるほど親しくはないが殴られる覚えもない。
俺が魔王とかなにかの間違いだよな、そういうのはもっと適任者がいる筈だ。
ファンタジー漫画でも、俺の場合は主役達に一度も声掛けられる事なく通りすぎる通行人だ。
そもそも魔物が魔王になるんじゃないのか?俺は普通の人間だ。
自分でそう言って、不安になり手のひらを見つめた。
良かった、皮膚が緑になったわけではなさそうだ。
念のため、触覚や角を確認するために自分の頭を触る。
「俺は見た目通りただの人間だ、魔王にはならない!」
「まだお前は魔王ではない、魔王候補の一人でしかない」
骸骨がそう言って、後ろを振り返るから俺も骸骨の視線の先を見つめた。
そこにいたのは魔物達で、涎をポタポタ床に落としていて顔が青ざめる。
魔王候補って、まさかこの魔物達も候補者って事か?
魔王になりたいなら譲るから、早くこの悪夢を覚まさせてくれ。
逃げ腰になる俺を骨の杖で俺の肩を引き止めていた。
軽く押さえられているようなのに、全く身体が動かない。
骸骨はカタカタと骨を鳴らして笑っていて、他の魔物達も笑っている。
その恐ろしい合唱は、洞窟のような場所ではよく響いた。
「何処に逃げるんだ?お前が死にそうなところを助けてやったのに」
「助けた?いや全部夢だから」
「なら元の世界に帰るか?帰った瞬間お前はここで起こった事をなかった事になって死体になるだけだがな」
ケタケタと笑う骸骨は、俺の頭に振れようとした。
もしかして、本当に帰してくれるのか?でも、素直に帰すなら死体になるのも本当って事になるけど…
どちらが本当なのか、試す好奇心も勇気も俺にはなかった。
自分の頭を守るように両手で抱えると、骸骨は手を止めた。
「魔王候補になる気になったか」と、骸骨の悪魔の囁きが聞こえる。
逆に考えればいいんだ、魔王候補は沢山いるなら俺がならなくても仕方ないの一言で終わる。
そうなれば自由になれる、もしかしたら死なずに帰れる方法もあるかもしれないから探したい。
魔王候補って何をするのか分からないが、何もしなければいい。
クラスでも空気と同化する事は得意だったんだ、大丈夫だ。
「俺、魔王候補になります!魔王になれなくても許して下さいね」
「大丈夫だ、召喚された異界人は不思議な力が使えると聞いているそのためにお前を呼んだんだ」
「ち、力?そんなものないけど…」
「……」
「……」
俺と骸骨の間に気まずい雰囲気が流れて、空気が凍った。
不思議な力は主役じゃないと持っていないと思う。
俺のような背景モブはせいぜい目立たないようにひっそりと暮らすだけだ。
ひりつく空気に耐えきれなくて、ヘラヘラと笑って誤魔化した。
骸骨と魔物達に足を太い縄で縛られて引きずられた。
俺の声が全く届いていないのか、そのまま縄は吊るされていき俺は逆さつりになった。
下にはぐつぐつと煮えたぎっている大窯があった。
恐怖で顔を歪ませる俺を見て、魔物達は喜んでいた。
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