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EZ−02というロボット①
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砂ぼこりが落ち着くとルヴァンは崩れた建物に近寄った。
「ねぇ、気づいた?偽物の影がいないんだ」
ルヴァンが、イーライ、ラッシャー、ノーランを振り返る。
「そうか。ようやく厄介払いできたな」
ノーランが冷めた口調で言う。
「偽物の影は多分、まだイーゼットゼロツーがいた建物の中にいるんだよ」
「でも、もうあの建物には戻らんぞ。あのイーゼットとかいうやつが俺たちに機械兵をけしかけたんだからな」
「そんなこと言わないで、もし偽物の影が動いてなかったら、あの犬型のもとに連れて行きたかったんだって思う」
「そして俺たちは死にかけた」
「だから行こう」
ルヴァンが崩れていない方の建物に向かって歩きはじめる。
「わかったよ」
ルヴァンは先程通った渡り廊下の下、一階部分の割れた窓から中に入れることに気づいた。
ルヴァンは飛び上がって窓から建物の中に入った。
「入れないぞ」
イーライが窓に前足をかけ、後ろ足をもぞもぞ動かした。
「ぴょんって飛んで入ったらいいんだよ」
ルヴァンが役に立たないアドバイスをした。
「こうか?」
イーライが前足を窓にかけたまま後ろ足で不器用にぴょんぴょん跳ねた。
その様子を傍観していたノーランはちらりとラッシャーを見やった。ラッシャーはイーライを見ないフリをしていたが、ノーランと目が合うと仕方なくイーライをくわえて吊り上げ、窓の向こうに落とした。
「やったぜ!」
建物の中は迷路だった。
「まぁ、こうなるだろうな」
ノーランが建物の中に入ってきてあたりを見回す。
「また迷路を通らなければならない」
とラッシャー。
「大丈夫」
ルヴァンは先程と同じ方法で迷路を進み、あっという間にドーム状の部屋への入り口にたどり着いた。観音開きの扉は開きっぱなしだった。中にはぽつんと犬型がたたずんでいた。そのすぐ近くに偽物の影もいた。
EZ-02の瞳らしきものがルヴァンたちの姿をとらえた。沈黙が両者の間に流れる。
「機械兵は?」
抑揚に乏しい声がEZ-02から発せられる。
「始末してきたよ」
ルヴァンがにこにこ顔で不穏な言葉を口にする。
「……始末……」
「そうだ。オレ様たちを少しは見直したか」
イーライが鼻を高くかかげた。
「……お前の態度が気に入らない」
何を言っても声音ひとつ変わらないのが不気味だった。
「なんで?」
イーライがきょとんとした顔でノーランを見る。
「今までにお前に出会ってきた大多数の犬たちが思っていたことを代弁してくれているだけだ」
ノーランが応じた。
「僕たち、知られざる手を探して、その影を追ってここまでたどりついたんだ。知られざる手のこと、何か知らないかな」
イーライがこれ以上おかしなことを言い出さないうちに、ルヴァンは犬型に聞いた。
「知られざる手とは何ぞ?」
「この建物を作った生物だよ」
「それは人間のことか?」
人間、ルヴァンはその言葉の響きを頭の中で反芻した。そういえば、このイーゼットゼロツーも自分は人間によって作られたと言っていた。
「人間はもういないんだよね。でも僕はこの建物を作った生き物がどんなものだったのか知りたいんだ。君なら、知っているかな」
「人間は私を作った。人間は非常に知能が高く、同時に非情な動物だった」
EZ-02が淡々と答えた。もう攻撃する気はないらしい。
「どんな姿だったの?」
ルヴァンはわくわくしながら聞いた。
「時の迷宮ではそれを見ることができる」
「ねぇ、気づいた?偽物の影がいないんだ」
ルヴァンが、イーライ、ラッシャー、ノーランを振り返る。
「そうか。ようやく厄介払いできたな」
ノーランが冷めた口調で言う。
「偽物の影は多分、まだイーゼットゼロツーがいた建物の中にいるんだよ」
「でも、もうあの建物には戻らんぞ。あのイーゼットとかいうやつが俺たちに機械兵をけしかけたんだからな」
「そんなこと言わないで、もし偽物の影が動いてなかったら、あの犬型のもとに連れて行きたかったんだって思う」
「そして俺たちは死にかけた」
「だから行こう」
ルヴァンが崩れていない方の建物に向かって歩きはじめる。
「わかったよ」
ルヴァンは先程通った渡り廊下の下、一階部分の割れた窓から中に入れることに気づいた。
ルヴァンは飛び上がって窓から建物の中に入った。
「入れないぞ」
イーライが窓に前足をかけ、後ろ足をもぞもぞ動かした。
「ぴょんって飛んで入ったらいいんだよ」
ルヴァンが役に立たないアドバイスをした。
「こうか?」
イーライが前足を窓にかけたまま後ろ足で不器用にぴょんぴょん跳ねた。
その様子を傍観していたノーランはちらりとラッシャーを見やった。ラッシャーはイーライを見ないフリをしていたが、ノーランと目が合うと仕方なくイーライをくわえて吊り上げ、窓の向こうに落とした。
「やったぜ!」
建物の中は迷路だった。
「まぁ、こうなるだろうな」
ノーランが建物の中に入ってきてあたりを見回す。
「また迷路を通らなければならない」
とラッシャー。
「大丈夫」
ルヴァンは先程と同じ方法で迷路を進み、あっという間にドーム状の部屋への入り口にたどり着いた。観音開きの扉は開きっぱなしだった。中にはぽつんと犬型がたたずんでいた。そのすぐ近くに偽物の影もいた。
EZ-02の瞳らしきものがルヴァンたちの姿をとらえた。沈黙が両者の間に流れる。
「機械兵は?」
抑揚に乏しい声がEZ-02から発せられる。
「始末してきたよ」
ルヴァンがにこにこ顔で不穏な言葉を口にする。
「……始末……」
「そうだ。オレ様たちを少しは見直したか」
イーライが鼻を高くかかげた。
「……お前の態度が気に入らない」
何を言っても声音ひとつ変わらないのが不気味だった。
「なんで?」
イーライがきょとんとした顔でノーランを見る。
「今までにお前に出会ってきた大多数の犬たちが思っていたことを代弁してくれているだけだ」
ノーランが応じた。
「僕たち、知られざる手を探して、その影を追ってここまでたどりついたんだ。知られざる手のこと、何か知らないかな」
イーライがこれ以上おかしなことを言い出さないうちに、ルヴァンは犬型に聞いた。
「知られざる手とは何ぞ?」
「この建物を作った生物だよ」
「それは人間のことか?」
人間、ルヴァンはその言葉の響きを頭の中で反芻した。そういえば、このイーゼットゼロツーも自分は人間によって作られたと言っていた。
「人間はもういないんだよね。でも僕はこの建物を作った生き物がどんなものだったのか知りたいんだ。君なら、知っているかな」
「人間は私を作った。人間は非常に知能が高く、同時に非情な動物だった」
EZ-02が淡々と答えた。もう攻撃する気はないらしい。
「どんな姿だったの?」
ルヴァンはわくわくしながら聞いた。
「時の迷宮ではそれを見ることができる」
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