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思考を読む迷路②

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「何をした?」

ノーランがイーライを振り返る。

「オレは何もしてないぞ」

イーライがしらばっくれる。

「何もしていないのに壁が急に動くことなんてあるか?」

ノーランが新たに現れた壁を見つめる。

「閉じこめられたか」

ラッシャーが皆の懸念を口にする。皆といってもただ一匹をのぞいて。

「閉じこめられてなんかいないぞ。まだ道はある」

どこまでも前向きなイーライが二つの通路を示す。

「影はどこへ行きやがった」

ノーランがあたりをなめるように見回した。

「どっか行っちゃったね」

ルヴァンが堂々と言った。

「あの偽物……」

ノーランが顔に怒りをにじませる。

「これで分かっただろう。あの影は俺たちに試練しか与えない。〈知られざる手〉の手がかりがつかめる場所に案内してくれているという根拠はどこにもない。いいかげんに得体の知れないものを信用するのはやめろ」

ノーランは一息にまくしたてた。ルヴァンはじっと通路の向こうを見ていたが、ノーランに向き直った。

「影も僕の一部なんだ。自分を信用できなくて、他の者を信用することなんてできない。だから僕はこの旅をあの影に託そうと思った自分を信じるよ」

ノーランはなんとも言えない顔でルヴァンをながめた。

「この前と同じ方法で進んで行こう」

 ルヴァンがイーライに声をかける。

 イーライは通路の前に移動して声を張り上げた

「おーい!」「偽物!」

イーライの声が通路に響く。二つの通路に響くイーライの声を聞き分けるために耳をそばだてていたルヴァンは、困ったように目を後ろに向けた。

「響き方が同じだ」

「両方とも行き止まりなんじゃないか」

ノーランが投げやりな口調で言う。

「とりあえずこっちに行こうぜ」

イーライが右側の通路を選んだ。

「それがいいね」

賛成するルヴァン。

「いや、どこがいいんだよ。両方とも行き止まりなんだろ?」

ノーランがツッコむ。

「そんなに悲観的にならないで。両方とも行き止まりじゃないって可能性もあるから」

ノーランは疑わしげに降りてきた壁を見た。

「そうだそうだ!行き止まりだなんて決めつけるのは良くないぞ!」

とイーライ。

「君たち二匹は本当に前向きだよな」

ラッシャーが遠くを見つめる。

「そうさ、いつも前向き、それがオレたちの取り柄だ」

イーライがえっへんと胸を張る。

「え、僕の取り柄それだけ……?」

ルヴァンが本気でショックを受けた顔をした。

「そんなことはない。お前は運動神経がいいし、 頭も良い。どんなとき でも状況を冷静に分析一」

「ーーもういい。どっちの通路でもいいからさっさと行くぞ」

ノーランが永遠とルヴァンをたたえはじめた イーライを遮った。
通路は天井まで壁が続いているわけではない。

後ろ足で立ち上がった犬三頭分の高さだった 迷路は入り組んでいて、向こうの方には階段が見えた。 

「上に行ったら出られるのかもな」

イーライが通くに見える階段を見上げながら言った。

「そうだね」

しかし今回の迷路ではこの前のように通路に響く音の違いを聞きわけるという手は使えなかった。 何度か分岐点に差しかかるたびに、その手を使ってみたのだが、イーライの声の響き方に差異はな かった。

「ここ、さっきも通ったよ」

不意にルヴァンは足を止めた。一行は行き止まりにあった。

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