32 / 68
思考を読む迷路②
しおりを挟む
「何をした?」
ノーランがイーライを振り返る。
「オレは何もしてないぞ」
イーライがしらばっくれる。
「何もしていないのに壁が急に動くことなんてあるか?」
ノーランが新たに現れた壁を見つめる。
「閉じこめられたか」
ラッシャーが皆の懸念を口にする。皆といってもただ一匹をのぞいて。
「閉じこめられてなんかいないぞ。まだ道はある」
どこまでも前向きなイーライが二つの通路を示す。
「影はどこへ行きやがった」
ノーランがあたりをなめるように見回した。
「どっか行っちゃったね」
ルヴァンが堂々と言った。
「あの偽物……」
ノーランが顔に怒りをにじませる。
「これで分かっただろう。あの影は俺たちに試練しか与えない。〈知られざる手〉の手がかりがつかめる場所に案内してくれているという根拠はどこにもない。いいかげんに得体の知れないものを信用するのはやめろ」
ノーランは一息にまくしたてた。ルヴァンはじっと通路の向こうを見ていたが、ノーランに向き直った。
「影も僕の一部なんだ。自分を信用できなくて、他の者を信用することなんてできない。だから僕はこの旅をあの影に託そうと思った自分を信じるよ」
ノーランはなんとも言えない顔でルヴァンをながめた。
「この前と同じ方法で進んで行こう」
ルヴァンがイーライに声をかける。
イーライは通路の前に移動して声を張り上げた
「おーい!」「偽物!」
イーライの声が通路に響く。二つの通路に響くイーライの声を聞き分けるために耳をそばだてていたルヴァンは、困ったように目を後ろに向けた。
「響き方が同じだ」
「両方とも行き止まりなんじゃないか」
ノーランが投げやりな口調で言う。
「とりあえずこっちに行こうぜ」
イーライが右側の通路を選んだ。
「それがいいね」
賛成するルヴァン。
「いや、どこがいいんだよ。両方とも行き止まりなんだろ?」
ノーランがツッコむ。
「そんなに悲観的にならないで。両方とも行き止まりじゃないって可能性もあるから」
ノーランは疑わしげに降りてきた壁を見た。
「そうだそうだ!行き止まりだなんて決めつけるのは良くないぞ!」
とイーライ。
「君たち二匹は本当に前向きだよな」
ラッシャーが遠くを見つめる。
「そうさ、いつも前向き、それがオレたちの取り柄だ」
イーライがえっへんと胸を張る。
「え、僕の取り柄それだけ……?」
ルヴァンが本気でショックを受けた顔をした。
「そんなことはない。お前は運動神経がいいし、 頭も良い。どんなとき でも状況を冷静に分析一」
「ーーもういい。どっちの通路でもいいからさっさと行くぞ」
ノーランが永遠とルヴァンをたたえはじめた イーライを遮った。
通路は天井まで壁が続いているわけではない。
後ろ足で立ち上がった犬三頭分の高さだった 迷路は入り組んでいて、向こうの方には階段が見えた。
「上に行ったら出られるのかもな」
イーライが通くに見える階段を見上げながら言った。
「そうだね」
しかし今回の迷路ではこの前のように通路に響く音の違いを聞きわけるという手は使えなかった。 何度か分岐点に差しかかるたびに、その手を使ってみたのだが、イーライの声の響き方に差異はな かった。
「ここ、さっきも通ったよ」
不意にルヴァンは足を止めた。一行は行き止まりにあった。
ノーランがイーライを振り返る。
「オレは何もしてないぞ」
イーライがしらばっくれる。
「何もしていないのに壁が急に動くことなんてあるか?」
ノーランが新たに現れた壁を見つめる。
「閉じこめられたか」
ラッシャーが皆の懸念を口にする。皆といってもただ一匹をのぞいて。
「閉じこめられてなんかいないぞ。まだ道はある」
どこまでも前向きなイーライが二つの通路を示す。
「影はどこへ行きやがった」
ノーランがあたりをなめるように見回した。
「どっか行っちゃったね」
ルヴァンが堂々と言った。
「あの偽物……」
ノーランが顔に怒りをにじませる。
「これで分かっただろう。あの影は俺たちに試練しか与えない。〈知られざる手〉の手がかりがつかめる場所に案内してくれているという根拠はどこにもない。いいかげんに得体の知れないものを信用するのはやめろ」
ノーランは一息にまくしたてた。ルヴァンはじっと通路の向こうを見ていたが、ノーランに向き直った。
「影も僕の一部なんだ。自分を信用できなくて、他の者を信用することなんてできない。だから僕はこの旅をあの影に託そうと思った自分を信じるよ」
ノーランはなんとも言えない顔でルヴァンをながめた。
「この前と同じ方法で進んで行こう」
ルヴァンがイーライに声をかける。
イーライは通路の前に移動して声を張り上げた
「おーい!」「偽物!」
イーライの声が通路に響く。二つの通路に響くイーライの声を聞き分けるために耳をそばだてていたルヴァンは、困ったように目を後ろに向けた。
「響き方が同じだ」
「両方とも行き止まりなんじゃないか」
ノーランが投げやりな口調で言う。
「とりあえずこっちに行こうぜ」
イーライが右側の通路を選んだ。
「それがいいね」
賛成するルヴァン。
「いや、どこがいいんだよ。両方とも行き止まりなんだろ?」
ノーランがツッコむ。
「そんなに悲観的にならないで。両方とも行き止まりじゃないって可能性もあるから」
ノーランは疑わしげに降りてきた壁を見た。
「そうだそうだ!行き止まりだなんて決めつけるのは良くないぞ!」
とイーライ。
「君たち二匹は本当に前向きだよな」
ラッシャーが遠くを見つめる。
「そうさ、いつも前向き、それがオレたちの取り柄だ」
イーライがえっへんと胸を張る。
「え、僕の取り柄それだけ……?」
ルヴァンが本気でショックを受けた顔をした。
「そんなことはない。お前は運動神経がいいし、 頭も良い。どんなとき でも状況を冷静に分析一」
「ーーもういい。どっちの通路でもいいからさっさと行くぞ」
ノーランが永遠とルヴァンをたたえはじめた イーライを遮った。
通路は天井まで壁が続いているわけではない。
後ろ足で立ち上がった犬三頭分の高さだった 迷路は入り組んでいて、向こうの方には階段が見えた。
「上に行ったら出られるのかもな」
イーライが通くに見える階段を見上げながら言った。
「そうだね」
しかし今回の迷路ではこの前のように通路に響く音の違いを聞きわけるという手は使えなかった。 何度か分岐点に差しかかるたびに、その手を使ってみたのだが、イーライの声の響き方に差異はな かった。
「ここ、さっきも通ったよ」
不意にルヴァンは足を止めた。一行は行き止まりにあった。
10
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
【完結】星が満ちる時
黄永るり
児童書・童話
星観島(ほしみじま)に暮らす15歳の少女ウェランダは、家族と共に月桃という植物を育てていた。
ある日、島の風習によって商業の国・トバルク公国の商人養成学校へ留学することになった。
そこで出会った同い年の少女ルナ、年下の少年アクートとともに大商人になることを目指していく。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
僕とシロ
マネキネコ
ファンタジー
【完結済】僕とシロの異世界物語。
ボクはシロ。この世界の女神に誘われてフェンリルへと転生した犬のシロ。前回、ボクはやり遂げた。ご主人様を最後まで守り抜いたんだ。「ありがとう シロ。楽しかったよ。またどこかで……」ご主人様はそう言って旅立たっていかれた。その後はあっちこっちと旅して回ったけど、人と交われば恐れられたり うまく利用されたりと、もうコリゴリだった。そんなある日、聞こえてきたんだ、懐かしい感覚だった。ああ、ドキドキが止まらない。ワクワクしてどうにかなっちゃう。ホントにご主人様なの。『――シロおいで!』うん、待ってて今いくから……
……異世界で再び出会った僕とシロ。楽しい冒険の始まりである………
ルビーの帰る場所[完結]
シンシン
児童書・童話
1話がとても短いです。
ちょっとした時間や暇つぶしにお読みください^_^
内容:
ただ、帰りたい。
しかし、どこに帰ればいいのかわからない少女の「ルビー」は1つの所に留まる。
そして、迷いや悩みをどうしていったのだろうか。
天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される
雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。
スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。
※誤字報告、感想などありがとうございます!
書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました!
電子書籍も出ました。
文庫版が2024年7月5日に発売されました!
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!
魔法の絵描き
灰塔アニヤ
児童書・童話
絵を描く事が、大好きな少年がいた。
彼が病気の祖母に描いてあげた絵を、手術中に御守りにしていた事で、難しいとされた祖母の手術は見事成功する。「彼の描く絵は願いを叶える力があるのではないか」と街中では噂になり、たくさんの人々が少年に絵を描いて貰おうと集まる。が、ある人物の依頼を機に少年の生活は一変する…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる