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空中散歩?①

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偽物の影は薄暗い廊下を進んで行き、そして突き当たりの壁の向こうに消えた。
 
「どこへ行きやがったんだ」 
 
イーライが壁に向かって吠える。

「偽物の影が行ったってことは、通り抜けられるはずだよ。ほら、ここだけ壁の色が違う」
 
ルヴァンは四角く壁の色が変わっている部分を示した。

「これがドアだよ」ルヴァンはそう言って立ち上がり、ドアを押してみたが開かなかった。「おかしいな」

「代わってみろ」
 
イーライがルヴァンと代わって肩でドアをぐいっと押した。ドアが少し開く。

ラッシャーが加わるとさらにドアが開いた。

「さっきのバタバタ開閉するドアに差し込んだ棒があればいいんだけど」
 
少し開いたドアを見つめながらルヴァンは言った。

「ほら、お前が通れるくらいは開いてるから行け」

イーライが促す。

ルヴァンは首を横に振った。
「僕だけ通っても仕方ないよ。イーライとラッシャーが押さえてないと開かないんだったら、君たちはドアの向こう側に行くことはできない」

「そういえばそうだな」

 イーライが少しがっかりした顔をする。

「全員で開けるぞ」

座って見ていたノーランが立ち上がり、イーライとラッシャーに加わった。

ルヴァンが扉に手をかけた。

「みんなで押そう」

「おう」

「せーの」
 
ルヴァンのかけ声に合わせて四頭がドアを押すと、ゆっくりとドアが開いた。
彼らはすばやくドアから体を離してドアが閉まる前に部屋の中に飛び込んだ。
偽物の影は部屋の中央にいた。
ルヴァンは偽物の影に近づこうとして異変に気づいた。突然、体が軽くなり、ふわりと浮いたのだ。

「なんだなんだ?!」

見ると、イーライも足をバタバタさせながら浮いていた。ノーランとラッシャーはあっけにとられた様子で壁際に張りついて浮いているルヴァンとイーライを見ている。

「何か起こっている?」

「分からんけど、なんかすごい!オレ、浮いてるぞ!」

イーライが浮遊しながら叫んだ。

「お前らが浮かれているのはいつものことだろ」 

ノーランがしらけた目で、はしゃいでいるルヴァンとイーライを見た。

「すごいすごい」

浮遊しながら、ルヴァンは前足で空気をかいてイーライに近づいてその背中をつかまえた。しかし体が予測不能な動きをするため、すぐに離れてしまった。

「浮かれているのはいいんだが、偽物の影が部屋を出て行ったぞ」

偽物の影が浮遊する部屋から出ていったことにも全く気づかず、はしゃいでいるルヴァンとイーライに向かってノーランが言った。

「え、本当?!」



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