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川を渡る方法①

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ようやく森が途切れた。今、ルヴァンたちは大きな川の 前に立っていた。川幅は広く、向こう岸の建物が小さく見える。

「泳いで渡ろうぜ」

そう言い出したのはもちろんイーライだ。 しかし、とても犬が泳いで渡れる川幅ではない。

「途中でおぼれるぞ」

川に入るつもりなのか、土手を降りて行くイーライをノーランが引っ張って止めた。

「あそこ、渡れそうだよ」

ルヴァンは川沿いの少し離れたところに橋を見つけた。 

「行ってみよう!」

「大丈夫なのかよ」

橋に着くとノーランはボロボロの橋を見て顔をしかめ た。橋はかなり老朽化が進んでいて、川床に立つ柱もいくつか折れていた。

「さっさと渡ってしまおうぜ」

イーライが橋に足をかけ、そのまま数歩進んだ。 そのとき、橋がぐらりとゆれだ。

「戻れ」

ラッシャーが吠えた。

イーライはきょとんとした顔で崩れはじめた足もとを 見た。イーライが立っているところがひび割れ、 橋全体が水しぶきをあげて川の中に崩れ落ちた 。

「イーライ!」
 
 川に落ちたイーライは、橋の残骸の中をもがくように泳いでいた。 ラッシャーが川に飛びこみ、力強く水をかいてイーライに近づく。そして、その尻尾をくわえて岸に向かって泳ぎはじめた。

「尻尾はやめろよお」

イーライは後ろ向きに引っ張られながら文句を言った。 ラッシャーは岸に着くと重そうに体をひっぱりあげで土手にあがった。
 土手の手前でラッシャーに離され、川から上がれずにもがいている イーライを土手で待っていたノーランが引っ張りあげた。

「全く。向こう見ずにもほどがある」

ノーランがうなる。

「すまん。けどオレはお前たちが何があっても助けてくれると信じていたぜ」

ぶるぶると水を張ね散らかしながら、イーライか胸をそらす。
イーライを救出し、本来この場で一番胸を張っていい
はずのラッシャーはイーライが飛ばした水しぶきを被り、首をすくめて小さくなっていた。

「ありがとよ」

イーライがひとしきり水をきるとラッシャーの肩を尻尾でバシバシたたいた。

「僕はお前の救出係になった覚えはない」

「おう、これからもオレの救出係、頼んだぜ」

 イーライが尻尾を振る。

「聞き違えも大概にしておけ」

ノーランがあきれる。

「それにしても、渡れなくなってしまったよ」

ラッシャーが崩れた橋の残骸が浮いている 川をながめた。

「川にそって進んでいくとかじゃあだめなのか」

ノーランがルヴァンを見る。 

「でも、僕の偽物の影は川の向こうに行きたいみたいだよ」 

ルヴァンは川の水面でゆらめいている偽物の影を示した。

 「お前なあ」

そうは言うものの、ノーランはすでにルヴァンに偽物の影を追うことをやめさせるのはあきらめていた。
  
「見て、橋の一部が浮いてるよ!あれに乗ったら渡れるよ」

ルヴァンは水面に浮いている橋の床板の一部 を見つけ、まだ浮いている他の残骸をつたってその板まで移動した。

「これで渡ろう!」
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