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イーライの苦手なもの①

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四頭はまだ森をを抜けられずにいた。 次の日は昼すぎから雨が降り出した。

「雲ってても偽物の影ははっきりしてるんたな」

雨でも全く気にしないイーライが、ルヴァンに話しかけた。

「うん、そうだね」

雨でずぶぬれのルヴァンは口数が激減していた。 そのためイーライは朝からずっと一匹で話していた。
こんな調子で。

「やっぱあの影は特別なんだろうな」

「そうさ、オレが名付けてやったんだからな」

「やっぱりオレのネーミングセンスは完璧だ」 

「ところでこの森はどこまで続くんだろうな」

 ルヴァンの返しがいまいちなので会話は成り立たない。 そのため一つの話題がすぐにつきてしまう。 それでもイーライは次から次へと話のネタを生み出しながら会話していた。ほぼ一匹で。 

 雨が強くなってきた。ルヴァンはとぼとぼ歩いていたが、 ついに足を止めた。

「〈知られざる手〉の手がかり、ちっとも見つからないね」

 雨のせいでルヴァンはかなりアンニュイになっていた。 いつもはハイテンションの声も暗い。

「まだ旅をはじめたばかりじゃないか」

イーライがのんきに言う。

「でもけっこう経ってるよ。ずっと森の中を歩いているだけだし。〈知られざる手〉を探すなんて不可能なのかも」 

「不可能?お前に不可能なことなんてあるわけない
だろ。諦らめんなって。オレが最初に〈知られざる手〉 の手がかり、見つけてやるからよ」

イーライが意気込む。

「......できれば僕が最初に見つけたいんだけど」

 ルヴァンが小声で言ったが雨の音でかき消されて 聞こえなかったのか、イーライは明後日の方向に顔を向けていた。

「僕の夢は大きすぎるのかもしれないよ。住処に帰っ た方が良いかな」

雨のせいかルヴァンはどこまでも弱気になっていた。 

「そんなことはない。夢は大きい方がいい」

ラッシャーが静かに言う。

「そのとおり!たまには言いこと言うじゃないか」

 イーライが雨音に負けじと声を張り上げ、ラッシャーを尻尾でバシバシたたく。

「夢はでかく持て。でなきゃそこのノーランみたいに夢のないやつになっちまうぞ」

その言葉にノーランがイーライをにらむ。

「俺にも夢がなかったわけじゃないんだかな」 

イーライが少し驚いた顔をしてみせた。
 そのとき。
バリバリッガラガラガッシャーン
 雷鳴があたりを切り裂き、四頭はとっさに身を伏せた。

「どととどどこかかかかくれられるばば場所をさ探そう」
 
 先ほどまでの勢いはすっかりなくなってしまったイーライはつっかかりながらなんとか言った。
ピカッと空が光るたびにびくびくしている。 イーライは雷が大の苦手だった。
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