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奇妙な音の正体①

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 「イーライが帰ってきたよ!」

 夜を明かした建物の中から動かずに外をながめていたルヴァンがうれしそうな声を上げた。
 その声に寝ていたラッシャーが物憂げな顔をする。

「カエルパーティーか」

「何も持ってないみたいだよ」

 ルヴァンがそうつけ足すと、とたんにラッシャーは立ち上がり、 窓に首をつっこんで外を見た。

「本当か?」

 その直後、ラッシャーは窓から建物の中につっこんできたイーライに突き飛ばされ、後ろ向きに倒れた。 続いてイーライが雨にぬれた体を振って盛大に水をはね散らかした。
 その雨水を、ルヴァンは華麗なステップを踏みながら後退してかわした。一方ラッシャーは雨水を頭からかぶり、あわてて立ち上がってイーライから距離を置いた。

「こうならないために、今日は一日外に出なかったのに」

「大丈夫だ。オレの半分くらいしか濡れてない」

 イーライがラッシャーをちらりと見た。

「全然大丈夫じゃない」

「それよりもルヴァン、狩りの最中に妙な集団を見かけてな。そいつらはどうやら率いてくれる犬がいなくなって、それで変な音がするようになってそれでーー」 

 イーライは先ほど出会った犬の群れについてルヴァンに説明した。全く筋道にたっていない説明だった。
 
 「リーダーが亡くなった上に、住んでいたところから不気味な音がするようになって情緒不安定になってるってことだね」

イーライのまとまりのない説明を開き終えると、ルヴァンは要約して言った。

「そう。オレが言いたかったのはそういうことだ」

「音の原因を見つけ出したら、その犬たちの不安も取り除かれて、心の整理もついて、次のリーダーを決めやすくなるんじゃないかな。そうしたら、僕たちの住処から出て、もともと住んでいたところに戻ってくれそうだね」

とルヴァン。

「まったく面倒なやつらがやって来たものだな。で、そいつらは今どこにいるんだ?」

建物の奥から、ノーランが出てきた。

「ええと、どこだったか。あ、そうだ。崩れかけた建物のすぐそばだ」

「このあたりの建物は全部崩れかけてるだろ」

ノーランがするどく言った。

実際、人間がいなくなってから長い年月が経ったこの町の建物のほとんどが崩れかけ、すでに崩れているものもあった。

「窓ガラスが割れてるやつだよ」

イーライが役に立たない補足情報を出した。

「この建物の窓ガラスも割れてるよ」

ルヴァンが先程イーライが飛びこんできた窓を見た。

「地面から傾いてたぞ」

「この建物も傾いてるよ」

「そういや、ツタが絡んでたな」

「あそこの建物、何か分かんないくらい緑に覆われてるね」

「とにかくでかいやつだよ。こう見上げるくらい」

「いや俺たちが見上げなくてもいいサイズの建物なんかあるのかよ」

ノーランがしびれをきらす。
 
「もういい、口で言ってないでお前がさっさと案内しろ。どうせお前ももう一回行くんだ」

「どこにいるのか聞いたのはあんただったはずだ」

とイーライ。

「そういうことは覚えてるんだなぁ」

ラッシャーがなぜかしみじみとした口調で言った。
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