【完結】魔力・魔法が無いと家族に虐げられてきた俺は殺して殺して強くなります

村開拓編

16

「えー…どうも皆さん。クライス家の次男、キョウ・クライスです。今日よりこの村を乗っ取r…任される事になったので、よろしくお願いします」

 ダイラン元村長の紹介もあり、俺自身も軽く挨拶したのだが。

『…』

 静寂。ただただ無言。皆まだ今の状況についてこれないのだろう。そりゃそうだ。ずっと苦しめられてきた悩みの種があっという間に解決して、その上村長がいきなり見ず知らずの少年に代わるんだ。

「あ…あのぉ…」

村人の群衆の中、一人の若い男性が手を挙げた。

「はい、質問ですか?どうぞ」
「はい。その…今の、というより前の?村長であるダイランさんは…一体どうなるの…でしょうか」

 この男性の質問はダイランのこれからの立ち位置に関する質問だった。今の質問を聞いた群衆の反応を見ると、全員の村人がそれを気にしていたのか、隣の人同士で顔を合わせたり、俺を見てコソコソと何か話す者もいた。大方、俺が実は黒幕でした。なんて事を考えているのかもしれない。

「うむ…もちろんワシは老後をゆっくりー」
「ダイランさんには副村長として就いてもらう」
「…なんと!?」

 隣にいるダイランが言い切る前に俺は宣言した。

「あの、キョウ殿。ワシはもう歳ですし、必要な人材では無ー」
「いいや、ダイランさん。アンタは必要不可欠な人間だ」

 まだ信用を何一つ勝ち取れていない者が一人で村を支配したとして、村人は着いてきてくれない。形だけの服従になり、村人達の不安や嫌悪の念は消えること無く募るばかり。
 けれどダイランなら、最も長く村のために貢献し、ずっと村人達のそばに寄り添ってくれていたダイランならば、きっと村人達も少なからず安心してくれるはずだ。

「ダイランさん、お願いできるかな?」
「…わかりました。精一杯努めさせていただきます」
「ありがとう」

 その途端、群衆から拍手喝采が湧いた。

「ダイランさんもいるなら安心ね」
「キョウく～ん、って呼んでも良いですかー?盗賊達を倒してくれてありがとー!」
「よく分かんねぇが、よろしくな!坊主!」
「ちょちょ!?坊主は失礼だってアンタ!子供と言ってもクライス家の方なのよ!?」

 群衆から先ほどまで感じていた嫌悪の念はすっかり無くなり、ダイランパワーによって俺の村長就任は温かく迎えられたのであった。

「はーい!はいはいはーっい!」

 群衆の中、今度は若い女の子が手を挙げた。

「はい、どうぞ」
「はい!キョウさんは村長になって一発目に何をしたいですか?」

 なるほど、村長としての初仕事で何をするかを聞いている訳だ。今の質問に対しても群衆は再びざわめき、期待の眼差しで俺を見つめ出した。
 今何をするか、これから何をするか。方針は既に決めている。
 その一発目を群衆に向かって高らかに宣言する。

「はい…俺、村長辞めます!」