【完結】てんかん患者の嗚咽

ルナ

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【1】搬送中の惰眠(ひととき)

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「…うぅ、ん?」

 ルナが目を覚ました場所、ソコはさっきまでアニメを見まくっていた自宅ではなく、小刻みにゴトンゴトンと動く小さな部屋だった。ちょっと周りを見渡してみると、折りたたまれた担架。壁に設置されているよく分からない機械や装置。窓の奥に見えるのは夜の街並み、チカチカと光る様々な色をしたネオンを吊るしたビルや店。こんな時間だと言うのに、まだあくせく働く一般車両の大人たちも窓から見えた。
 そして、自分が今寝台のような物の上で横たわっている状態というのも把握した。薄い布をかけられた状態の上からシートベルトのようなバンドが二本、胸と足の辺りで止められていた。軽く拘束されているようで落ち着かなかった。

「あ、目を覚ましました」
「おーい。大丈夫か?ルナ」

 声が聞こえた方に顔を向けると、目に映ったのは二人の男性。先に口を開いたのはミント色の作業服のようなモノを身に纏う男性、その後に声をかけてきた男性はルナが小さな時からずっと見てきた、見慣れた顔の実の父親であった。

「…ここは?」

 目を覚ましたばかりの定まらない視線のまま、ルナはガラガラな声で二人に尋ねる。

「救急車の中だよ。お前夜中に急に暴れだして、声かけても返事しなかったからマズいと思って救急車を呼んだんだ」
「?」

 父親が何を言っているのか今すぐには理解できなかった。何せそんな記憶も身に覚えも全く無いので、イマイチ信用にかけたからである。

「とりあえずこのまま一回病院に行って、ちょっと見てもらおう」
「…あ、おん」

 自分が知らない間に自分の知らない自分が勝手に自分を演じているようで、なんだか薄気味悪かった。病院に着くまでにまだもう少し時間がかかるだろう。その間、今の現状と自身の体について頭の整理をしておこう。
 そう思ったのだが、やけに瞼が重い。もしかしたら原因はアレか、それともコッチかと思考を巡らせているうちに段々と視界がハッキリしなくなり、気づけば既にルナの意識は睡魔に狩られていた。
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