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エピローグ
【最終回】お兄ちゃん
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五年後
日桜高校 成人式兼同窓会
「それでは、乾杯!」
『乾杯~!』
幹事の音頭に合わせて、周りの皆も各々のグラスを交わした。
今日は日桜高校の卒業生達による成人式兼同窓会。元同級生だけによる集まり…なはずなのだが。
「何でお前がいるんだ」
「別にいいじゃないですか」
「日桜の生徒じゃないだろ」
「私と亮太の仲なのですから、関係無いのです!」
俺の隣の席には何故か篠原亜美が座っていた。一体どこから嗅ぎつけたのか、この店に着いた時に気づいたら背後にいたのだ。
「ウィース!なんだなんだ?亮太の彼女かぁ?ヒューヒュー!」
「はい!亮太の彼女なのです!」
早速酔いが回った同級生の男子生徒が絡んできた。ウザ絡み初体験です。亜美は同級生からの冗談混じりの質問に元気よく挙手して答えた。
いつもなら真っ先にツッコミを入れる俺だが…
「おいおい本当かよ!亮太~?」
「ん…まぁ、うん」
「え…ガチ?」
まさかの展開に同級生、そしてついでに周りで聞き耳を立てていた他の同級生も数人驚きの表情を見せる。なんだか失礼な気がしたが、気にしない事にした。
そう、俺と亜美はあの事件が終息した後、連絡先を交換(無理やりされた)をしてちょくちょくプライベートで会っていたのだ。そこには心美もいたけれど、二人きりで会っていた事もしばしば…。
そしてつい先日、俺は告白された。彼女いない歴=年齢の普段の俺なら即答していたのだが、とある状況によってだいぶ頭を悩ませ、返答を渋っていた。けれど後々の話し合いの結果、俺は亜美の告白を受ける事にしたのだ。
それからは夜遅くになるまで、同級生とその中にすっかり溶け込んだ亜美と共に楽しい時間を過ごした。
☆●◇■△▼*▽▲□◆○★
深夜。楽しい同窓会も終わりを迎え、幹事の解散の宣言で皆居酒屋を出た。続々と各々が別れの言葉を交わし、四方八方の帰路に散って行く。
そんな中ただ一人、微動だにしない夜の闇に佇むシルエットを見つけた。
「む~、やっと出て来た」
頬を膨らませてあからさまに不機嫌な女の子が一人。
「お前…まさかずっと店の前で待ってたのか?」
「お~!我が愛しの妹よ!ただいまなのです~!」
すっかり酔って顔を赤くした亜美が目の前の美少女に勢いよく抱きついた。
「全く…まだお家じゃないよ、お姉ちゃん。ごめんね。せっかくの昔のお友達との時間にお姉ちゃんが水差しちゃって」
「別に気にしてないよ。こうなりそうな気はしてたし、なんだかんだ皆とすぐに打ち解けて普通に楽しめたし」
「そう、なら良かった」
出た居酒屋の前で俺達を待っていたのは、あれから五年経ち、歳不相応に凛々しく成長した心美であった。
「うぃ~恋々美~大好きなのです~ちゅ~♡」
「はいはい。全く、成人してから毎回こんなに呑んで…大学のレポートは終わったの?」
「んにゃ~?あんなの出された日のうちに全部終わらせたのです~」
「さすが知能指数お化け」
凛々しくなったのはこの姉のせい(おかげ)なのだと確信した。
ずっとふにゃふにゃしていた亜美だったが、急に我に返り「それにしても…」と話を切り出した。
「恋々美~、本当に良かったのです?私が亮太と付き合ってしまって。あなたも亮太が好きだったのでしょう?」
そう、これが俺が亜美からの告白の応えを渋った理由。亜美から告白された日、その後同じ日に心美からも告白されたのだ。そして俺を巡ってギスギスした姉妹喧嘩が起こる…なんて事は無く、三人で普通に話し合った結果、心美が手を引いて今に至る。
「うん…。あれからの二人を見てたら…ね。お姉ちゃんとの方がお似合いだもん。でもその代わり…」
心美は少し照れたような様子で俯いてモジモジとしている。可愛い。やがてモジモジするのをやめて顔を上げ、俺の目を見て彼女は言う。
「ずっと…私の傍にもいてね」
心美が義理ではあるが本当に妹になる。あの日から周りにつき続けた嘘がまさか本当になる日が来ようとは。
恋々美はあの時と何ら変わらない笑顔を向けて言う。
「お兄ちゃん!」
☆●◇■△▼キャラその後▽▲□◆○★
佐神 亮太
高校卒業後、とある中小企業に就職し、高校時代から住んでいるアパートに亜美、心美と共に住んでいる。現在は三人で暮らせる一軒家を買うために貯蓄中。
笹橋 将
高校卒業後、大手家電メーカーに就職。毎日のように「仕事が辛い」だの「上司がウザイ」だのメッセージで亮太にだる絡みしてくる仲。月一くらいの頻度で飲みに行っている。
篠原 亜美
鍛え上げられた頭脳を駆使して超有名大学に一発合格を果たす。自分達のような新たな被害者が出ないよう「正義の学者」を目指して勉強中。
篠原 恋々美
無事市立の小学校に通い卒業。亜美に勉強を教わり中学受験に合格。飛び抜けた身体能力も成長すると共に制御できるようになり、今では陸上部のエースだそうだ。
月神 優
事件から二年後「特殊捜査部隊の隊長に任命された」と月神からメッセージが届いた。「おめでとうございます」と返したのだが、あれから三年。未だに送ったメッセージは既読にならない。
日桜高校 成人式兼同窓会
「それでは、乾杯!」
『乾杯~!』
幹事の音頭に合わせて、周りの皆も各々のグラスを交わした。
今日は日桜高校の卒業生達による成人式兼同窓会。元同級生だけによる集まり…なはずなのだが。
「何でお前がいるんだ」
「別にいいじゃないですか」
「日桜の生徒じゃないだろ」
「私と亮太の仲なのですから、関係無いのです!」
俺の隣の席には何故か篠原亜美が座っていた。一体どこから嗅ぎつけたのか、この店に着いた時に気づいたら背後にいたのだ。
「ウィース!なんだなんだ?亮太の彼女かぁ?ヒューヒュー!」
「はい!亮太の彼女なのです!」
早速酔いが回った同級生の男子生徒が絡んできた。ウザ絡み初体験です。亜美は同級生からの冗談混じりの質問に元気よく挙手して答えた。
いつもなら真っ先にツッコミを入れる俺だが…
「おいおい本当かよ!亮太~?」
「ん…まぁ、うん」
「え…ガチ?」
まさかの展開に同級生、そしてついでに周りで聞き耳を立てていた他の同級生も数人驚きの表情を見せる。なんだか失礼な気がしたが、気にしない事にした。
そう、俺と亜美はあの事件が終息した後、連絡先を交換(無理やりされた)をしてちょくちょくプライベートで会っていたのだ。そこには心美もいたけれど、二人きりで会っていた事もしばしば…。
そしてつい先日、俺は告白された。彼女いない歴=年齢の普段の俺なら即答していたのだが、とある状況によってだいぶ頭を悩ませ、返答を渋っていた。けれど後々の話し合いの結果、俺は亜美の告白を受ける事にしたのだ。
それからは夜遅くになるまで、同級生とその中にすっかり溶け込んだ亜美と共に楽しい時間を過ごした。
☆●◇■△▼*▽▲□◆○★
深夜。楽しい同窓会も終わりを迎え、幹事の解散の宣言で皆居酒屋を出た。続々と各々が別れの言葉を交わし、四方八方の帰路に散って行く。
そんな中ただ一人、微動だにしない夜の闇に佇むシルエットを見つけた。
「む~、やっと出て来た」
頬を膨らませてあからさまに不機嫌な女の子が一人。
「お前…まさかずっと店の前で待ってたのか?」
「お~!我が愛しの妹よ!ただいまなのです~!」
すっかり酔って顔を赤くした亜美が目の前の美少女に勢いよく抱きついた。
「全く…まだお家じゃないよ、お姉ちゃん。ごめんね。せっかくの昔のお友達との時間にお姉ちゃんが水差しちゃって」
「別に気にしてないよ。こうなりそうな気はしてたし、なんだかんだ皆とすぐに打ち解けて普通に楽しめたし」
「そう、なら良かった」
出た居酒屋の前で俺達を待っていたのは、あれから五年経ち、歳不相応に凛々しく成長した心美であった。
「うぃ~恋々美~大好きなのです~ちゅ~♡」
「はいはい。全く、成人してから毎回こんなに呑んで…大学のレポートは終わったの?」
「んにゃ~?あんなの出された日のうちに全部終わらせたのです~」
「さすが知能指数お化け」
凛々しくなったのはこの姉のせい(おかげ)なのだと確信した。
ずっとふにゃふにゃしていた亜美だったが、急に我に返り「それにしても…」と話を切り出した。
「恋々美~、本当に良かったのです?私が亮太と付き合ってしまって。あなたも亮太が好きだったのでしょう?」
そう、これが俺が亜美からの告白の応えを渋った理由。亜美から告白された日、その後同じ日に心美からも告白されたのだ。そして俺を巡ってギスギスした姉妹喧嘩が起こる…なんて事は無く、三人で普通に話し合った結果、心美が手を引いて今に至る。
「うん…。あれからの二人を見てたら…ね。お姉ちゃんとの方がお似合いだもん。でもその代わり…」
心美は少し照れたような様子で俯いてモジモジとしている。可愛い。やがてモジモジするのをやめて顔を上げ、俺の目を見て彼女は言う。
「ずっと…私の傍にもいてね」
心美が義理ではあるが本当に妹になる。あの日から周りにつき続けた嘘がまさか本当になる日が来ようとは。
恋々美はあの時と何ら変わらない笑顔を向けて言う。
「お兄ちゃん!」
☆●◇■△▼キャラその後▽▲□◆○★
佐神 亮太
高校卒業後、とある中小企業に就職し、高校時代から住んでいるアパートに亜美、心美と共に住んでいる。現在は三人で暮らせる一軒家を買うために貯蓄中。
笹橋 将
高校卒業後、大手家電メーカーに就職。毎日のように「仕事が辛い」だの「上司がウザイ」だのメッセージで亮太にだる絡みしてくる仲。月一くらいの頻度で飲みに行っている。
篠原 亜美
鍛え上げられた頭脳を駆使して超有名大学に一発合格を果たす。自分達のような新たな被害者が出ないよう「正義の学者」を目指して勉強中。
篠原 恋々美
無事市立の小学校に通い卒業。亜美に勉強を教わり中学受験に合格。飛び抜けた身体能力も成長すると共に制御できるようになり、今では陸上部のエースだそうだ。
月神 優
事件から二年後「特殊捜査部隊の隊長に任命された」と月神からメッセージが届いた。「おめでとうございます」と返したのだが、あれから三年。未だに送ったメッセージは既読にならない。
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