GO TO THE FRONTIER

鼓太朗

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第九章 カルバン帝国(カルバ王子編①)

サヤコフ小路の宿屋

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巻き紙を開くと、突如紙の上に小さなライモンダが浮かび上がった。
「レオン。この手紙を読んでいる頃、あなたはもうバル大陸に着いているでしょうから次の指示を出しますね。まず入国のための入国手形は二枚目を門番に見せなさい。心配しなくても合法的なものだから安心なさい。流浪の冒険者で町に会いたい人がいるという体にしておきました。まぁあながち間違いではないから。街に入ったらサヤコフ小路と言う場所に向かいなさい。サヤコフ小路に入って少しいくと『月夜亭』という宿屋があります。そこの女主人に会いなさい。名前はクルエラ。彼女があなたたちの力になってくれるでしょう。場所は三枚目の地図、魔法がかかっているので目的地とあなたの場所がわかるはず。古い地図だから少し内部は変わっているかもしれないけれどあなたたちなら大丈夫でしょう。ジャトゥーリはかなり裕福な街ではあるけれどサヤコフ小路はその街で唯一と言ってもいいくらいのスラム街。変なやつらに絡まれないようにだけは気を付けなさい。強奪・傷害・人身売買。違法薬物や盗賊団の斡旋なんかは日常茶飯事な地域だから。この後のことはクルエラに伝えてあります。健闘を祈ります」
長々と話すと一方的に話を切り上げてライモンダは消えてしまった。
レオンは手紙の二枚目を確認する。
大判の印が捺された物々しい通行手形がある。
「これで街には入れるわけね?」
アンナはまじまじと二枚目の通行手形を見た。
仰々しくレオンたちの名前が書いてあって最後にライモンダのサインがされていた。
「ライモンダ先生っていったい何者なんだろうな?」
ハイデンがため息混じりに言うが、レオンも同感だった。
そして三枚目にはかなり細かいジャトゥーリの地図が書かれてあった。
「手書き? のわりにはかなり正確だな」
ダンがレオンの頭越しに覗き込む。
「これ、魔法を使って書かれてるから、決してライモンダ先生の手書きではないわね。でもこの地図、かなり正確で細かいわね。今居るのがここ。そして行き先は…」
アンナが指で地図をなぞると、光の粉が弾けて地図上に線が走った。
「?!地図に道ができた!」
この要り組んでいる道をいくとライモンダの言うサヤコフ小路に着くのだろう。
レオンは手紙を元通りに丁寧に巻くと街の入り口へと向かって歩き始めた。

少しあるいたところに立派の門があった。
門の入り口には多数の兵隊たちが。
そのうちの一人に声をかけると、門兵はいぶかしみながらもレオンたちを街の中にいざなった。
あまりにすんなりと通過した第一関門に一同拍子抜けする。
レオンは晴れてカルバン帝国の帝都、ジャトゥーリに潜入したのだった。

*****

街に入ると賑やかな商店街。
街の入り口で馬小屋を見つけ、ペガを預けると街の中を進む。
もちろんライモンダからもらった地図を頼りに迷い無く進むレオンたち。
道行く人から見てもただの旅人にしか見えないだろう。
地図を頼りに進むと街の雰囲気が徐々に変わり始めた。
入り口から表通りは華やかな大都会。
商店が並び、子どもたちが駆け回っている。
そんな華やかな部分とは対照的に一本裏通りに入るとそこには物々しい武装をした男たちのたむろするエリアだった。
物陰では怪しげな白い粉を売り買いする老婆と若者を見かけたり、刃物を持った男が若い女を追いかけ回したり…。
「…スラムだな…」
ダンは唖然として呟くがそれはここにいる全員の総意だった。
地図通り進むにつれて怪しい雰囲気はどんどん色濃くなる。
さすがに切りつけられそうになっている少女を見つけたときは割って入って戦闘になったが、レオンたちの敵ではなかったのでアッサリと片をつけ、進んでいく。
道端に転がる血だらけの死体を見たときはさすがに驚いたが、襲い来るチンピラレベルの猛者を倒しながらレオンは地図通り歩を進めた。
そして入り組んだ小道の先にお目当ての宿屋はひっそりとたたずんでいた。
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